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写真エッセイ

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たゆたうようにつらつらと
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#モノクロ

アモルファスとガラスとミスリルと

ガラスは固体か液体か 私はガラスを写すのが大好きです。  なにかのなにかでガラスは液体だと聞いた気がするのですが、先日アモルファスだという文書を目にしました。アモルファスという言葉をはじめて聞いたのは高校時代のことでした。  イギリスの文献学者 John Ronald Reuel Tolkien の小説「指輪物語(The Lord of the Rings)」の中で、ミスリルと呼ばれる架空の金属が登場します。  学生時代遊んでいたボードゲーム中に、こんな会話がありました。

あの夏の日、もう二度と冬はこないと

思いましたが、やはり冬はくるのですね  きょうはとっても寒いです。  今年の夏はとてもあつい夏でしたから、もう二度と冬は来ないのかもしれないと思っていたのですが、やはり地球は回っているということなのですね。  そして冬が楽しみになりました。  そして春が楽しみになりました。

やさしくされると切なくなる

冷たくされると泣きたくなる天気のはなし  冬ですね。  先日、ちらちらちらりと今年の初雪が通り過ぎていきました。  気温は0.2℃。氷点下まで下がらなかったですし、積もるということもありませんでした。初氷をまだ見ていない気がするので、今回の初雪は上空の冷たい雲からのギフトだったのかもしれません。  雪は美しいのですが、寒いとなんだか泣けてきてしまいます。  子どものころ、冷たい夕暮れ、一度だけ泣きながら下校したことがあります。地吹雪吹き荒ぶ時などは、歩道など逆に危険

残滓のさらにカケラ、それをすくう「ポイ」

縁日の金魚すくいに、濡れたポイ  むかしむかし、私がまだ子どもの頃のことです。  春彼岸のお墓参りの日には、お祭りでもないのにお寺の門前に屋台が数軒並んでいました。流石に食べ物屋さんはありませんでしたが、子ども相手におもちゃ屋さんと金魚すくい屋さんが居たことを覚えています。  私はいままで一匹も金魚を掬えたことがありません(いつもおまけで一匹もらえます)。その時に使う、金魚を掬うための和紙製の道具を「ポイ」と呼ぶそうです。  ポイは最初に水に浸すのがコツだよ、と友人は言

去りゆく秋にはホムラの風を

短すぎる秋が通り過ぎようとしています  熱風を帯びた夏でした。  今年をいつか振り返ることがあるとしたならば、あるいはこのように思い出すのかもしれません。  でも今現在の私は、短すぎる秋への感傷です。  年々、春と秋が短くなり、夏と冬が永遠となる、なんてことにはなりませんように。  夏と秋の擦過痕が冬を呼ぶように、もう山頂は雪化粧です。それでも少しだけ、童謡の世界のような秋に浸ることができました。  涼しい風なのに、紅葉はまるで炎のよう。去りゆく秋に、残火のようなホムラ

線路沿いにはウインクを

線路と交差する坂道を 私の町に、鉄道駅はありません。  ですので小学生までは、駅とはバス停のことでした。  線路や踏切は、子どもが歩いて行けない距離にあります。それでも私にとって鉄道という言葉は、不思議と懐かしさを伴う音色でした。  ある日の雨の夜のことです。  しとしと落ちる水の音に混じって、ガタンゴトンと列車の駆け抜ける音が聞こえてきました。あんなに遠いと思っていた線路から届いてくる静かな音。それを寝物語として聞いた記憶が、懐かしさを醸し出していたのです。  ある夏