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乳がんって遺伝するの?知っておきたい遺伝性乳がん卵巣がん症候群:HBOC

乳がん基礎講座③


こんにちは。

10月はピンクリボン月間ということで、前回、前々回と、今や日本人女性の9人に1人が乳がんになる時代、乳がんは他人事ではないこと、ブレストアウェアネスを習慣化し、定期的に乳がん検診を受けることが、自分や大切の人のために重要であることをお話してきました。

今回は少し違う話題を。
遺伝する乳がんがあることをご存じでしょうか?

これまでも、乳がんの家族歴がある(血縁者に乳がん患者がいる)ということが乳がんのリスクになることは知られていました。
前回、前々回の記事の中でも乳がんの家族歴がある方は特に要注意とお伝えしました。

昨今、遺伝子解析の技術が進む中、いろいろな病気が遺伝子の異常によっておこることが分かってきており、乳がんに関わっている遺伝子の異常に関しても分かってきました。

とはいっても、乳がんの中で遺伝と関連するものは7~10%といわれています。決して多くはないですね。今はまだわかっていない遺伝子もたくさんある、というほうが正確でしょうか…

本日はそんな中、すでに遺伝子異常と関連が分かっている乳がんについてお話をしたいと思います。

遺伝性の乳がんの中で最も多いのは、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome, HBOC)です。

HBOCは、主にBRCA1およびBRCA2遺伝子の変異によって引き起こされる遺伝性疾患で、乳がん卵巣がんのリスクが著しく増加します。この症候群に関連するがんには、男性乳がん前立腺がん膵臓がんなども含まれます。BRCA1/2の遺伝子変異を持つ女性は、生涯で乳がんを発症するリスクが60-80%、卵巣がんのリスクが20-40%に達すると報告されています。

正確には「がんを遺伝する」わけではなく、「がんになりやすい体質を遺伝する」ということで、同じ遺伝子異常があるからと言って、必ず同じがんになるわけではなく、生涯、がんを発症しない方もいます。

少し前の話になりますが、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが予防的な両側乳房の切除、両側卵巣卵管摘出を施行したことでも話題になりました。
アンジェリーナさんはBRCA1遺伝子変異があり、将来、乳がんや卵巣がんになるリスクを減らすために、まだ、がんにはなっていない乳房や卵巣を切除したんです。
まだ病気になっていないところを手術でとってしまうって、、、
倫理的にもいろいろな意見が出てくる問題ではありますよね。


HBOCの特徴

・乳がんと卵巣がんの両方を発症しやすい
・若くして乳がんを発症しやすい
・乳がんを複数回発症しやすい(同時に両方の乳房 /  片方に複数)
・トリプルネガティブ乳がん(ホルモン剤や分子標的薬の治療が効かないタイプの乳がん)
・男性で乳がんを発症しやすい
・家系内に乳がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がんになった人がいる
                           など

家族歴でHBOCが疑われ、血液検査による遺伝子検査で診断確定となります。

乳がんの診断がついた方では、HBOCと診断がついた場合、治療方針が変わる可能性がある* ので、一定の条件を満たせば遺伝子検査を保険診療で受けることができます。

(*HBOCの診断がついた場合には、将来のさらなる乳がんの発症の可能性を考え、乳房部分切除より乳房切除術が薦められたり、同時に反対側の乳房の予防切除を行う選択肢の検討も必要だったりします。)

診断がついた場合の注意点

  1. 定期的な検診:乳がんの早期発見を目指して、25歳から乳がん専門施設での定期検査が推奨されます。卵巣がんについても、超音波検査や腫瘍マーカー検査が推奨されます。(ただし、乳がんに比べ、卵巣がんは検診の方法が確立されておらず、見つけるのが難しいがんであり、妊娠・出産の意思がなくなった段階で予防切除が薦められます。)

  2. 予防的手術:リスク軽減のために予防的乳房切除や卵巣・卵管摘出術が行われることがあり、乳がんや卵巣がんの発症リスクを大幅に減少させます。

  3. 心理的支援:診断がつくことはメリットだけではなく、がんのリスクを認識することによる不安や心理的負担が大きくなります。そのため、検査をする前の段階から専門のカウンセラーによる遺伝カウンセリングが行われ、診断がついた後もサポートが行われます。


乳がんと関連する他の遺伝子

BRCA1/2以外にも、PALB2、TP53、 PTENなどの遺伝子に異常があると乳がんのリスクと関連することが報告されています。また現段階ではまだまだわかっていないことも多く、これから明らかになってくる遺伝子も多いと考えられます。


まとめ

今回は遺伝する乳がんで最も多い、HBOCについて解説してきました。
遺伝子の情報は個人の問題だけではなく、家計内で共有しているものですので、家族で情報を共有し、またそれぞれに個別カウンセリングを受けながら、対応を一緒に考えることも必要です。

また、乳がんと診断された場合、HBOCの診断がつくか、つかないかで治療方針が変わる可能性があります。乳がんの診断がついて直後は、考えなければいけないことが多く、後回しにしがちな問題ではありますが、HBOCについてしっかり理解し、必要時には遺伝子検査をうけることが、後悔しない治療を選択するためにも必要だと考えます。
検査を受けたいなど興味があるときにはまずは主治医の先生に相談してみてくださいね。


もっと詳しく知りたい方は、こちらのサイトもご参照ください!

日本HBOCコンソーシアム
遺伝性乳がん卵巣がんを知ろう!ガイドブック
https://johboc.jp/guidebook_g2022/


本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

次の記事では乳がんがどんな病気なのか、解説していきたいと思います。またお読みいただけると嬉しいです。

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