私の好きな季節

私は夏生まれです。夏ど真ん中です。そして夏が好きです。

もちろんどの季節も好きですが、一等思い入れがあるのはやはり夏だと思います。誕生月が特別なのは当たり前です。でもそれ以上にやはり、子供にとって特別なのは「夏休み」だと思います。私はその特別感を大人になっても捨てられなかった、大人のなり損ないという訳です。

夏ってなにか起こりそうな気がしませんか?

ミーハーの私ですので、理由は簡単。デジモンやポケモンのせいです。小学生の頃はMDで夏休みファンクラブやピカピカまっさいチュウなどを無限リピートしたものです。

「ピカピカ魔法を解かないで、いつまでも」

この歌詞がずっと心の中にあります。夏休みの終わりがけになると、本当にこう思ったものです。少しずつ短くなる日ののぼる時間が恨めしくて、涼しくて過ごしやすくなる気候が虚しかった。

毎日小学校に通うのが当たり前の子供にとって、ひと月丸々のお休みなんて特別に決まっています。いつもと違うって凄くドキドキワクワクします。

私は平凡な子供でしたし、インドア派でした。比較的裕福とは言い難い子供でしたので、夏に出かけるといっても行先は父の釣り、近くのショッピングモール、市民プール、近所の公園、祖父母の家くらいなものです。

旅行なんて大学までは学校行事か日帰りでしか行ったことがありませんでした。

私は中学の修学旅行まで、自分の都道府県のある地方から出たことがありませんでした。

そんな私ですが、非常に安上がりな子供でした。夏のワクワクの空気だけで、妄想だけで十分に楽しかったのです。

扇風機の音、風鈴の音、蝉の声、ラムネの瓶、古びた畳のい草の匂い。大きなガラス窓からいっぱいに入ってくる日差し、引きっぱなしの布団。青い空、大きな雲。木の葉と空のコントラストがキツくて、照明をぶちまけたように鮮やかな木漏れ日。球場の近くを通った時の金属音、地面から立ちのぼる熱気。

カフェのご飯と言うよりもカフェの雰囲気を味わうためにカフェに行く時がありますよね。ああいう気持ちです。夏の空気が好きでした。

お祭りも好きです。いつも街にはない遊び場が沢山あって目移りします。金魚なんか好きでもないのに掬ったりして、直ぐに飽きるお面や、特別美味しくないベビーカステラ。浴衣を着る口実が欲しかったのかもしれないし、夜中に騒ぐという、ホントなら怒られる行為が楽しかったのかも。

私は昔から綿あめやりんご飴は食べさせて貰えませんでしたから、それにとても憧れがありました。大学で一人暮らしをした時初めて大きなりんご飴を買って、綺麗だなぁと思う傍らで「これはどうやって食べるのだ」と友達と試行錯誤しました。

でも本当に特別だったのは、夏にポケモンやコナンの映画があったことかもしれません。映画館で私はポケモンたちを感じるのです。映画を見る度に、どうしてポケモンがこの世に居ないんだろうと思いました。家にあるピカチュウのぬいぐるみを抱きしめて、この子が動き出したらどうしようとドキドキしていました。

ポケモンがいたら、自分がポケモンだったら。そんなふうに妄想して、ごっこ遊びをしたりしました。ポケモンごっこは私が幼稚園の頃の、1番お気に入りの遊びです。

私の子供時代、夏にほんとうに特別なことは何もありませんでした。私はポケモントレーナーではないし、選ばれし子供でもありませんでしたから。

でもそうやって、言葉にすらできない沢山の特別を詰め合わせたパックが「夏休み」でした。

人生最後の夏休みが終わったとき、とても寂しく思いました。きっと次からは私が子供たちに夏休みをあげる側になってしまうのだな、と。

もう私は子供じゃない、という明確な線引きをされた気持ちでした。

それでも私はやっぱり夏はワクワクするし、この世界のどこかで「特別な何か」が起こっているのではないかと思います。

そう感じている気持ちこそが特別なのかもしれませんね。

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