見出し画像

妄想オタクは死神に語る 7

『来訪者×ギャンブル』

沙耶香:さぁ!黒川くん!尋常に……勝負!!

勝負の掛け声と共にコントローラーを手に持ち、〇〇に向ってコントローラーを手渡した。

〇〇:君の得意ゲームなら尋常じゃないよ?

沙耶香:さぁ!早くキャラを選びたまえ!そして私に負けて部室を明け渡したまえ!

〇〇:話聞いてんの?!俺部長じゃないからそんな権限…

沙耶香:いざ!!勝負!!

〇〇:ゲーム好きな人って本当話聞かない…

……

〇〇:お疲れ様で〜す

放課後、長かった1週間の終わりを迎える金曜日の夕方午後16時頃、慣れた手つきで〇〇は4日前に入部した二次元研究会の部室の鍵を開け、入室した。

〇〇:まだ真佑さん来てないな…

大量の漫画が収容された本棚と机と椅子とゲームの並べられた部屋を見渡した。

〇〇:先にPUEXの練習でも……

〇〇:んっ、あれ……?

いつも通り真佑が来るまでの間、個人練習をしようとした瞬間、〇〇の目に1冊の漫画が目に入る。

〇〇:なんか……おかしくない?

そう言って〇〇は、自身の視界に映り込んだ漫画のある本棚まで歩み寄った。

〇〇:たしか「Mr.スコーン」って26巻が最終巻で完結してたような……

自身の抱いた疑問に答え合わせをするように〇〇は、自然と「Mr.スコーン」と表記された漫画の27巻に手を伸ばした。

〇〇:なんか……おかしい……

〇〇:なんで、28巻が…それにタイトルも……

次第に頭を悩ませる議題に対し、あと少しで何かの答えが出そうになる瞬間、部室の扉は開いた。

??:たのもー!!

??:そこにいる君!君は今から私とこの部室をかけて勝負してもらう!いいね?!

勢いよく登場した少女は、その勢いのまま、理解し難い事を言っていた。

〇〇:え……な、何だろ、この人急に……

??:私の名前は掛橋沙耶香!次期ゲーム部の部長になる人だよ!!

そう名乗る少女は、天真爛漫さと笑顔が似合う、スーパー童顔ガールだった。

〇〇:掛橋さん……ってあの2組の掛橋さん?

沙耶香:お!君と同じく2年の掛橋!まさか私の噂があるのかね?どの掛橋?あの掛橋さんってなに?!

〇〇:数学の授業中に久保先にswiiU没収された…過去に前例が無いゲーマーの……

沙耶香:そんなのはどうでもいい!

そう言って、沙耶香は目の前にあった椅子を持ち上げ、1つの机に椅子が2つ付くようにセッティングした。

沙耶香:私の目的はさっき話した通り、ゲーム対決で君に勝った後、この部室と君を頂く……それが狙いさ!

〇〇:え?俺も??

沙耶香:そりゃそうだよ。この学校は部員が3人いないと部活動が成り立たない…だから君はそのために必要な1人の人材なのさ!

〇〇:いやいや、それならここの部室と人じゃなく、自分達で部室と人を見つけて作れば…

沙耶香:いい!めんどくさいの嫌い!ゲームしたい!!

やはりゲームを好む人間は話を聞かない。さくら達とゲームをする中でそう痛感していた〇〇は真佑と沙耶香に出会い、確信へと変わっていた。

〇〇:(おそらくこの子、生徒会にゲーム部の発足の申請をしたけど、部室と人数の件で断られたんだろな)

〇〇:(それで程よく、ウチの部に来たってわけか…)

自称350のIQを持つ〇〇の脳みそは少ないヒントで高速処理し、結論づけた。

〇〇:(やってやる……ボコボコにしてやる!)

〇〇:いいよ、その勝負……乗った!!

沙耶香:ふふふっ、いいねその胆力、気に入った

沙耶香:さぁ!勝負だ!!

……

そこから2人の勝負は2時間に渡り繰り広げられていた。

沙耶香:へ〜、〇〇って1人暮らしなんだ

自身が選択した赤い帽子の髭を生やしたオーバーオールのおじさんを操作しながら、沙耶香は話しかける。

〇〇:両親が海外主張中……だから……ね……

ピンクの球体のようなキャラを扱いながら、〇〇も途切れ途切れに沙耶香の問い掛けに返答する。

沙耶香:いいな〜、じゃあいつゲームしてても何も言われないじゃん!羨ましっ……

〇〇:さぁちゃんの家はうるさいの?そう言うの…

今日出会ったばかりの〇〇と沙耶香は、ゲームをする中でかなり仲良くなっていた。

勝敗の結果を述べると、勝ったのは〇〇だった。

普段から自宅で1人、当格闘ゲー昔のオンライン戦に潜っていた〇〇は、残機を2つ残した状態で沙耶香に敗北の引導を渡していた。

その現実を受け入れられない沙耶香は〇〇に胸を借りると言う名目で特訓を受けていた。

そしてその間、2人の間には自然と会話が生まれていた。

沙耶香:噂で聞いたんだけど、〇〇って結構モテたりするんでしょ?

〇〇:え……うそ!そんな噂あんの?!モテないのに?

2人はゲームのコントローラーの動作の精度を落とすことなく操作し、会話を続ける。

沙耶香:聞いた話だと、さくちゃん、賀喜ちゃん、あやめちゃんと言う3大マドンナを落としたかと思えば、1年のマドンナ菅原咲月ちゃんも落としたとかなんとか…

〇〇:いや、仲良いだけだよ

〇〇:それに咲月に関しては幼馴染なだけ……多分……

沙耶香:え、何?多分って!アンタ……まさか咲月ちゃんの気持ちに気付いてるのに知らんぷりしてんの?!

〇〇:ち、ちがうよ!ただ……確信が……持てないんだよ

沙耶香:出た……これだから草食系は……

〇〇:誰が草食系だ!!

そう言って、2人は部の存続を賭けたギャンブルを行っていたはずなのだが、いつの間にか放課後に集まってゲームをする感じになっていた。

沙耶香:じゃあ次負けた方夜ご飯奢りね?

〇〇:待て待て!俺は夜ご飯に行くとも言ってないし、金は賭けない主義なの!

沙耶香:あー、怖いから逃げるんだ笑

わかりやすい挑発だった。しかしその手が〇〇にとって1番効力のある一手なのだった。

〇〇:はぁ?びびってないし!いいよ!やってやる!!

沙耶香:いいね!本気だしちゃお〜っと!

〇〇:ひひっ、ねじ伏せてやる!!

沙耶香:じゃあ……いざ!勝負〜!

……

沙耶香:〇〇は肝心な所で弱いね〜

右手にはステーキ、左手にはパフェを持ちながら、沙耶香は満足そうに言った。

〇〇:くっそ〜、何で2機も自滅したんだよ〜…

何とか部の乗っ取り計画は阻止できたものの、夜ご飯を賭けた対決に負けた〇〇は、乏しい財布の中身をはたく覚悟を決め、沙耶香とご飯に来ていた。

沙耶香:復帰が弱いんだよ?君はね?

〇〇:なにぃ?!もう家でやりまくってやる!!

沙耶香:私もやりまくるから差は埋まらないも〜ん!

〇〇:バカ言え!最初は俺が勝ったんだからミスなしなら俺の方がうまいに決まってるじゃん!

沙耶香:最後に勝った者が真の勝者なんだよ?

沙耶香:残念だったね!笑

勝者のカウンターからの、豪快なステーキとご飯の同時食いを沙耶香は魅せる。

〇〇:くぬぬっ、悔しいぃ〜

沙耶香:ねぇ、〇〇…

〇〇:なに?

2人の会話に全くのぎこちなさが消えた今、沙耶香は幼い笑顔を浮かべた。

沙耶香:また〇〇に会いに部室行っていい?

沙耶香:もちろん、〇〇と部室を貰いにね?

〇〇:はは、いいよ。次も絶対に負けないからちゃんと練習してきなよ?

沙耶香:ひひ!次は勝つよーだ!

こうして、〇〇にまた、新たなゲーム友達ができた。

……

??:あれって……沙耶香ちゃんと…黒川君…?

お会計を済ませた〇〇と沙耶香が退店すると同時に、バイトの休憩を終えた少女が店内に姿を現した。

??:なんで2人がこんな所に…?

沙耶香と〇〇と同学年である少女は、2人の関係性に疑問を抱きはじめていた。

??:何でこんな平日に2人で夜ご飯……まさか…付き合ってるの…?!

平日の夜20時半、そして学校終わりに会う2人、そんな一握りの情報でも彼女のように2人が付き合っていると推測するには十分な状況だった。

??:2人クラス違うよね…?
 
??:それに黒川くんって、あやめちゃんや賀喜ちゃんと三角関係って噂されてなかったっけ?

普段から噂や他人の恋愛事情などを好む少女は思考を続ける。

??:あー!もう!気になるー!!

そう言って、少女は悔しそうに地団駄を踏んだ。

店長:与田ちゃん?何悶えてんの?まさか好きな子でも来てたの?

祐希:っ!?

あまりにも突然の問いかけに祐希は動揺した。

祐希:いやいや…それだけはないな!笑

祐希:それに彼を好きなのは……

祐希:よし!決めた!明日黒川くんに問い詰めて真相を追求してやる!

バイトとは全く関係のない事にやる気を覚え、祐希は1人燃えていた。

祐希:絶対にこの事件、私が!!

…to be continued

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?