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妄想オタクは死神に語る 1

『ハーレム×ゲーム』

日は暮れて、外は夕焼けに染まっていた。

車掌:次は××駅〜、××駅〜

〇〇:んあっ…やべ…着くじゃん……

電車内に響くアナウンスにより、寝不足気味の少年は閉じていた目を開く。

些か寝心地の悪い電車のシートから立ち上がり、定期券の入った財布を鞄から取り出した。

〇〇:ふぁ〜、ねむ……

欠伸をしながら降りる学校帰りの電車。

そこで十分に寝たはずだったが、彼の睡眠欲はそんな数十分程度の睡眠では満たされなかった。

〇〇:もうこんな時間か…

改札を抜け、ホームから出て、さきほどまで乗車していた車両が最寄り駅から遠ざかるのを踏切前で待つ。

時計の針は、16時4分を指していた。

自宅から徒歩6分。最寄駅からかなり家の近い〇〇は、駅までは徒歩で移動していた。

そんな歩く最中でも、彼は頭を巡らせる。

〇〇:筒井さんと賀喜さんと遠藤さんと20時からランク戦…て事は2時間寝て…風呂30分…飯30分…

〇〇:1時間余るじゃん!ラッキー!

〇〇:そうと決まれば〜、帰るのみっ!

と、今後の予定を推測し、計画を立て、時間の余裕さに気づいた〇〇は急ぎ足で自宅へと向かった。

そして、彼が住む、自宅のある住宅街へと足を踏み入れた瞬間、ある光景が目に入る。

〇〇:またいる…あの男の人…

彼が住む、自宅の斜め前。知り合いの家の前には、白いデザインの軽自動車が停車していた。

そしてその自動車の運転席には若い男性が誰かを待つように乗り込んでいた。

〇〇:あの家って…美波姉…梅澤さんの……

〇〇:まぁ、梅澤さんも…もう23歳だったっけ?まぁ、それくらいだし、彼氏の1人や2人…別にいるだろ

何か心の片隅にモヤがかかったが、〇〇は、「気のせいだ」と片付け、その場を後にした。

〇〇:睡眠っ!睡眠ッ!す〜い〜み〜ん〜♪

学校と呼ばれる今日1日の1番面倒くさい行事が終わった事に〇〇は喜びを隠しきれなかった。

……

〇〇:いただきま〜す!!

午後18時12分。予定よりもかなり早くお風呂と仮眠を済ませた〇〇は、夜にするゲームのため、早急に夜ご飯を食べる事にした。

〇〇:待って…うまっ!俺の手料理うまっ!

両親の都合により、2年間も一人で暮らしている〇〇の手料理は、それなりに美味しいらしい。

〇〇:この料理スキルは…確実にモテるな俺!

自画自賛するほどに、彼の料理は完璧だったらしい。

〇〇:ごちそうさまでした〜っと…

満腹になった〇〇はご飯を食べ終えると言うタスクをこなした勢いのまま後ろに倒れ、時計を確認した。

約束の時間までおよそ1時間半以上も時間を持て余していた。

〇〇:ん〜、まだ18時27分……予定の時間まで残り1時間半以上ある…どうしよっかなぁ…

〇〇:アニメ…ん〜、いや、昨日は何も更新されてないしな…時間までイベント周回すっか!

いつも通りの手慣れた動きで机の上にある食器を片付け終えると、〇〇は総合4回は見たアニメを垂れ流しにしスマートフォンを片手にソファにもたれた。

〇〇:コラボ明後日終わりじゃん!早めにイベント終わらせなきゃ!!

そう言って、彼はまた趣味に没入する。

高校生になった黒川〇〇の人生は"それなり"に上手くいっている。

彼の通う高校は県内でも5本指には入る中堅高、休み時間を共に過ごす友達もいれば、夜中にゲームをする男女グループすら出来た。

きっと彼の人生は"順調"や"幸せ"と名付けられても良いものだと思うが、人によっては"普通"や"平凡"と言われるほど"それなり"に上手くいってるのだった。

……

〇〇:やばっ、ダウンした!筒井さんそこの建物の影にイモリいるから気をつけて!

あやめ:まじ?!とりあえずさくちゃんは〇〇くんの救助頼んだよ!

さくら:おっけいだよっ!!

遥香:あやめちゃん、とりあえずグレネード投げるから出てきた所ヘッショお願い!

あやめ:オーケー…

携帯電話越しに聞こえてくる女の子達の声に〇〇は圧倒されていた。

〇〇:すげぇ…

目の前に広がっていたのはプロレベルの試合だった。

つい1ヶ月前、席替えで隣になった筒井あやめに進められて当ゲームを始めた〇〇だったが、やはりルーキーはアマチュアには追いつけなかった。

あやめ:ナイス!かっきー!

さくら:よしっ!ラストワンやったよ!!

遥香:きた!チャンピオン!!

〇〇:おー!やったー!!

訳のわからぬままゲームは進み、気がつくと〇〇のテレビ画面には「CHAMPION」と表示されていた。

〇〇:やった!すごいよ!遠藤さんに筒井さんに賀喜さん!俺達1位だよ!!

あやめ:あはは、〇〇くん後半ずっとダウンしてただけだけどね?笑

賀喜:むしろ〇〇くんのせいで位置バレしたよね笑

〇〇:か、勝ったから良いじゃんか!!

何もせぬままゲームに勝利した事に喜びを隠しきれない〇〇とは反対に勝利に貢献した2人はさほどはしゃいでいるようではなかった。

さくら:ね!ほんとだよ!まずは勝ちを喜ぼう!ねね!〇〇くん!ほら!いぇーい!

携帯画面に映るさくらは、遠隔であるはずなのに手を差し出しハイタッチを求める。

〇〇:だよね!流石遠藤さん!いえーい!

さくら:いーえいっ!!

〇〇:ほら!筒井さんと賀喜さんも!いえーい!

画面越しに〇〇は無邪気にハイタッチを求める。

そんな無邪気な少年の笑顔に負け、少し照れながらも2人は画面の奥にいる〇〇とハイタッチを交わす。

あやめ:い、いぇーい//

遥香:まぁ、ここは喜ぶべきだね、いぇーい!笑

〇〇:ふふ、よーし!次もチャンピオン目指すぞー!!

未だ自身の推し武器すらも見つからない初心者のはずの彼はリーダーのように取り仕切る。

さくら:だね!よっしゃー!もう一戦!!

あやめ:まだやる気なんだね笑

遥香:また三人でキャリーしてあげよっか笑

……

〇〇:あー、今日も楽しかったぁ〜

夜の街、コンビニで買った袋を片手に〇〇は呟いた。

あの後、彼らのチャンピオンを目指す戦いは2時間を超えた頃、さくらの眠気の限界に合わせお開きとなった。

〇〇:やっぱりあの3人ほんとゲーム上手いなぁ…

数時間前に行っていたゲームを振り返り、〇〇は彼女達のことを口ずさむ。

〇〇:それに比べ俺は…回復アイテムと弾の荷物持ち…

〇〇:初心者にふさわしい役目だな笑

自身の置かれた立場を再認識し、あまりの自身の腕前の無さに笑ってしまっていた。

〇〇:そんな俺には……上達祈願を込め!今日はチョコミントでも食べます!

そう言って、コンビニからの帰り道、数分前にコンビニで買った棒状のアイスを取り出した。

〇〇:チョコミントとか久々だなぁ

黒野〇〇の小言もしくは独り言は癖のような物だった。

そんな1人小言を言いながら、自身の家を目指し、〇〇は歩く。

月明かりに照らされた闇の中を歩く。

街灯に照らされた自動販売機の横をすり抜け、大きな駐車場を携えた住宅街に入る。

そして自宅の玄関に辿り着き、ドアを開けようとドアノブに手をかけた時、ある事を思い出した。

〇〇:梅澤さん家……流石にこの時間は……

興味本位に駆られ、ドアノブから手を離し、自宅前の道路に飛び出し斜め前の家を見た。

〇〇:……まぁ、そりゃいる訳ないか!

お目当ての白の車の姿はなかった。

〇〇:そりゃあれから何時間も経つしな……

〇〇:いや……まさか……!

〇〇:夜の逃避行?!ドライブデート?!流石美波ねっ…梅澤さんだ……

勝手な憶測で勝手な結論に至った。

〇〇:さ、幼馴染の恋路も見送ったし、俺は帰ろ〜っと…

??:ドライブデートなんかしてないよ?私

〇〇:へ……?て、うわっ!!び、びっくりした!!

自宅に戻ろうと振り返った時、声がした。その声に視線を送ると、そこには彼女がいた。

〇〇:え、う、梅澤さん?!

美波:よっ!久しぶりだね、〇〇くん!

〇〇:な、なんで背後に?!

久しぶりに話す幼馴染に戸惑いを隠せず、〇〇は困ったような表情でのけぞるように一歩後ろに下がった。

美波:あはは、相変わらずびっくりしいだね笑

そう言って美波はしたたかに笑う。

美波:まぁ、話したいことは色々あるけど、君に頼みがあって来たんだ

〇〇:……頼み?

美波:ねぇ、〇〇くん

美波:私と一緒に同居しない?

〇〇:……へ?

…to be continued

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