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随想録

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「知らない」ということは、世界でもっとも美しいものかもしれない。記憶を辿る、前置きのプロローグ。ファンタジー小説や映画のような、日常に隠れた断片を探そう。
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2021年4月の記事一覧

わかりやすさ、を、おもうこと

わかりやすさ、を、おもうこと

「田舎のねずみと都会のねずみ」というおとぎ話をふと思い出す。

" 田舎に住んでいる一匹のネズミが、御馳走を振る舞おうと仲の良い町のネズミを招待する。二匹は土くれだった畑へ行き、麦やトウモロコシ、大根を引っこ抜いて食べていたのだが、都会のネズミは田舎の暮らしが退屈だと言い、都会へ誘う。「珍しいものが腹一杯食べられるよ。」と。

田舎のネズミは二つ返事で都会へと向かった。パンやチーズ、肉といった見た

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忘却、という美しいこと

忘却、という美しいこと

詳細の記載は避けるけれども、長年PTSDと一緒に暮らしている、とおもう。たぶん。

「オープンでいる。嘘をつかない。」

という姿勢を心掛けているものの、

誰にも言いたくないことが心の中にはたくさんある。

許せない、とおもうようなことは、

すでにほとんどなくなっていて、

嵐のように訪れる記憶と感情の再生に黙って耐える、

という日常をほどほど怠惰にやり過ごしている。

記憶というものが、

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