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#月島書簡 2


早月くらさんへ

先日はお返事をありがとうございました。「月島書簡」第一回、いろんな人に読んでもらえてうれしかったね。

コミュニケーションの瞬発力の件、よくわかります。あとになって言えばよかった、聞きたかったと思うことたくさんあるよね。逆に、言わなければよかった! と身悶えることも少なくないので、とかくに人の世は住みにくい。
平安時代、和歌は素敵だなあと思うけど、わたしは綺麗な水洗トイレがないと暮らせないタイプなので現代で頑張ろうとおもう。

早月くらに、わたしの短歌について言及していただいて恐悦至極、そしてとてもうれしいです。わたしにとってくらさんの短歌といえばやはり「小説を読み終えるようにかみさはまひとのいのちを閉じるのでしょう」と「想像して、いつか嵐が花野を渡る。暴力にうつくしさはないとあなたは言い切れる?」の印象がものすごく強いのだけど、くらさんのうたの日の投稿歌を読み返していると「これもくらさんだったのか……」とびっくりするくらい、断片的に記憶に残っている歌がたくさんあって、そしてその歌をタップするとしっかりハートを贈っていたりして、面白かったです。「まつげの影の正しさ」とか。

わたしが早月くらを題材に卒論を書くなら(妄想です)、やはりどうしても「ひかり・陰影」「やわらかな命令形」について繰り返し言及してしまうし「これらの特徴は早月くらが写真にも造詣が深いことに由来するのであろう」みたいな作家論と結びつけて書いちゃうんだろうな。

けれど、そういう結びつきって他人から見えるものと自覚できるものとではまた違ってくるだろうし、どちらかの目線でしか見えないものもたくさんあるんだろうね。歌をつくりはじめてすぐのころから変わらない部分と変わった部分も。そういう話もしていきたいですね、とふんわりしたところで一度バトンを渡します。

近況をすこし。きれいな緩衝材(プチプチ)をなんとなく捨てることができずに放置していて、部屋の一部を歩くたびプチプチ音がします。教えてもらった映画を観ました。原作とぜんぜんちがう、と思いながら、ぜんぜんちがうシーンですごく泣きました。あと髪の色をものすごく変えました。またお茶でもしましょう!

よみがえることは再びさよならを言うこと夢の岸で笑って


桐島あおさんへ

急に寒くなってきましたね。風邪などひかれてないですか?夏よりは断然冬派なのですが、もうちょっとやんわり移る感じでお願いしたいところです。(と、ここまではお返事をもらってすぐに書いたので、すでに季節が移りつつあるのを感じます。金木犀も過ぎていきましたね…)

前回のお返事、たくさん思い出す歌を教えてもらえて嬉しかったです。どの歌も丁寧な評をもらったのをよく覚えてますし、「まつげの影の正しさ」はたしか遙禽すみさんに擬態しちゃってたんですよね、エピソードも含めて印象に残っています。深読みキャスがまた聴きたい…!

そしてハイライトはやはり卒論を書いていただくくだり。ありがたや。「やわらかな命令形」については以前あおさんに教えてもらうまで全然意識してなかったので、(自作なのに)興味深いなあという感想がまずありました。まさにひとから言われて気づくパターンです。短歌の中の命令形って主体→相手のはずだけれど、俯瞰すれば作者→読者の要素も少なからずあって、あらためて読むと我ながらなかなか強気に出るなという感じのものも。

「わたしの思う、あなたの代表歌/あなたの歌の特徴」って、自分の理解×相手の作家性がダイレクトに見えておもしろいですね。あおさんといえば「あの子」それから「性愛」は外せないなと思いつつ、これだけ舞台の異なるジャンルなのにあおさんの歌だとちゃんとわかるところに、あおさんの創作の芯が隠されているのかなあと感じます。景は異なるとしても、そこにある感情は通底しているというか…。まだ言い足りていない気がするので、もうすこし考えてみたいなと思っているところです。

そんなこんなでお返事をゆっくり書いている間に、まさかお会いできるタイミングが巡ってくるとは!あたらしい髪色も見られて嬉しかったです。欲張って食べたナポリタンとプリン、おいしかった…

いちばん読み返した本の話、ひとまず家の本棚を眺めながら思いを馳せた結果、『スカイ・クロラ』シリーズ(森博嗣)、『みずうみ』、『王国』シリーズ(よしもとばなな)あたりが有力でした。あと、文章の本ではないのですが、川内倫子さんという写真家のかたの作品が好きでたまに写真集をめくったりします。他にも思い出したらまた追加しますね。あおさんの読み返した本の話もぜひききたいです。
次に会えるのはきっと文フリですね。巡礼に行きます!

そして橋 さよならでなくあたらしい出会いのための手をふりながら



早月くらさんのnote
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