【短編小説】また雨が降ったら
わが心を打ち明ける友を持たない人々は、己れと己れの心とを食う人食い鬼である。
——フランシス・ベーコン「随筆集」
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雨音がパチパチと木霊(こだま)する中、賽銭箱の置かれた階段に腰をかけて本を読んでいた。二百段ないくらいの石段をのぼった先に佇(たたず)むこぢんまりとした神社は、自分だけの世界を作るのにはもってこいの場所だ。帰ったところで家には誰もいないし、ここじゃなくても良いのかもしれないが、僕はこの場所を気に入っている。
「空木(うつぎ)君だよね? ここで何