夏乃 リョウ

小説を書いています。 Twitter : @natsunoryou

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【短編小説】また雨が降ったら

わが心を打ち明ける友を持たない人々は、己れと己れの心とを食う人食い鬼である。 ——フランシス・ベーコン「随筆集」 * * *  雨音がパチパチと木霊(こだま)する中、賽銭箱の置かれた階段に腰をかけて本を読んでいた。二百段ないくらいの石段をのぼった先に佇(たたず)むこぢんまりとした神社は、自分だけの世界を作るのにはもってこいの場所だ。帰ったところで家には誰もいないし、ここじゃなくても良いのかもしれないが、僕はこの場所を気に入っている。 「空木(うつぎ)君だよね? ここで何

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    • 【ショートショート】ここにいないあなたへ

       俺は近いうちに自殺をすることにしていた。  家族はもういないし、恋人がいるわけでもない。つい先日仕事も失ってしまい、これから先の未来が見えなくなってしまったのだ。  そんなとき、とある噂を耳にした。 「過去に繋がる公衆電話があるらしいよ」  時間を潰そうと入ったカフェにいた女子高生たちが話をしていた。  詳細を聞く限り、手順を踏むことで過去の人物と五分間だけ会話することが出来るが、一度しか繋ぐことが出来ないという制限が存在しているという。  嘘か真か分からない。けれど、

      • 【ショートショート】四月のさよなら

         四月一日。  外に広がる景色は温かみを帯びている。固く閉ざされていた桜の蕾は力を抜いて、八割ほど花を開いて世界を彩る。  僕が窓を開けると、色のない病室に桜の花びらが風に運ばれて飛んできた。 「もっと近くで見たいな」と彼女は言う。 「明日になったら、一緒に見に行こう。今日は調子が良さそうだし」と僕は答える。  幼馴染の彼女が入院してから、ちょうど半年が経った。病状は一向に良くならず、その病は時間だけを貪り食っていく。ただ、今日の彼女の調子はとても良さそうだった。このまま回復

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      【短編小説】また雨が降ったら

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