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#74 社会問題としての小論文教育③

 今日は学校現場において求めらる「小論文の指導」のイメージについて、少しお話しします。小論文の指導は、本来であれば小論文の書き方と書く内容についての指導を指します。しかし、現代、多くの学校現場で求められるのは「志望理由書の指導」です。
 
 当然ながら「小論文」と「志望理由書」は異なるものです。サッカーとバスケットボールくらい違います。しかし、学校の先生の多くは不思議にも「小論文の指導」と「志望理由書の指導」とは似たようなものとイメージしている人が多いです。
 
 同じ文章執筆に関する指導だからなのか、同じ感覚で指導内容を捉えている人が多いです。これは不思議なイメージです。なぜなら、同じ球技であっても、サッカー部とバスケットボール部とを混同させる人はいないからです。しかし、小論文と志望理由書の指導は混同されがちです。
 
 そこで今日は「小論文と志望理由書の違い」についてお話しします。似て非なるものであることを説明します。これもまた学校現場を想像しながらお読みください。そうすると「小論文の指導」と「志望理由書の指導」とはそれぞれ別のものでありながら、それぞれが大切なものであることがご理解頂けると思います。

(1)執筆状況の違い。

 小論文は「直前まで課題内容(執筆テーマ)が不明瞭」な状況下で、かつ「時間制限」がある中で書くものです。その場で「即興」で、書き直しが不可能な状況下で書き進められます。それに対して志望理由書は「事前に課題内容(執筆テーマ)が明瞭」な状況下で「時間をかけて」書くものです。何度も書き直し、磨き上げることができます。

(2)アドバイザー・サポーターの有無。

 小論文はたった「1人」で書くものであるのに対し、志望理由書は「様々な人間(教員・保護者・友人など)」に相談し、手伝ってもらいながら書くものです。

(3)執筆内容の方向性の違い。

 小論文では基本的に高校教育外の、もしくは高校教育を越えた知識・知性・感性が問われます。だから書かれる内容は往々にして自分の「外」すなわち「社会」に関連したものです。一方で、志望理由書では「過去・現在・未来の自己」が問われます。だから具体的に言うと、書かれるべき内容は、①高校での活動実績(自己PRを含む) ②志望動機 ③入学後の学習計画 ④将来の夢などです。

[まとめ]

 まとめると、小論文は自己の「外」に存立している「社会」について論じるものであるのに対し、志望理由書は自己の「内」から出発し、最終的には「自己と社会」との関係について論じるものです。それゆえに志望理由書は作文の体裁を取りながらも、内容面には小論文の性質(社会的要素)が組み込まれています。
 
 ただし、これはあくまでも基本的な形式であり、実際は小論文においても志望理由書においても、出題者(大学)によってそれぞれ多種多様な形態をとります。例えば、近年では志望理由書とともにレポートを課す大学や、面接の際にプレゼンテーションを求める大学が増えています。(これらは研究ノート④でお話しする学術論文と同様の認識を持つと良いでしょう。)

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 皆様、いかがだったでしょうか。以上が「小論文」と「志望理由書」との違いです。これらは言われればわかるけど、言われなければあまり意識しないような点ではないかと思います。そして往々にして現代の学校現場ではこの2つが混合されがちです。「作文」と「小論文」との違い同様、書けばいいというわけではありません。大切なのはどのような意識でもって執筆に臨むか、ということです。
 
 次回は「小論文」という言葉の「小」という文字が秘めている具体的な意味内容を解説ます。いわば「論文」と「小論文」の違いについてのお話です。ご興味ございましたら、是非お読み下さい。では、また!

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