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#71 社会問題としての小論文教育⓪

 読者の皆様、はじめまして!「AO教師」名義でnoteに投稿をしている30代の国語教師です。1度教師の職を辞し、予備校にも勤めてきました。小論文の指導をメインストリームに働いてきて早10年……。
 
 今日から「社会問題としての小論文教育」と題して、昔執筆した研究ノートの内容を投稿します。小論文の指導内容と教育環境を巡る問題はもはや「日本社会に広がる解決すべき課題」の1つです。その一端をnoteを介して発信します。
 
 今日から投稿される記事は合計20本。それらは全て2017年の春に執筆した研究ノートの内容です。タイトルは「小論文とは何か? ――その問いを巡る問題性と思索――」というものです。至らぬ点も多いかと存じますが、何かございましたらご指導、ご教示頂けると幸いです。
 
 広く小論文を巡る問題性が世間に知られ、日本の教育が少しでも良くなることを願い、投稿を致します。ご興味ございましたら、お付き合い(お読み)ください。

[はじめに]

 時代の趨勢からか、近年では益々小論文実践の気運が高まっています。2020年の大学入学共通テスト(仮称)の導入、アクティブラーニングや記述指導、ICT教育の推進、コミュニケーション能力や問題解決能力の向上など、様々な教育界の変革と小論文は親和性が高いです。そこから、小論文実践は今や必須の教育科目と目されています。

 しかし、疑問に思うことがあります。小論文とは何なのか。この問いは思いのほか難しいものです。勿論、市販の教材にはどれにもそれなりの答えが書かれています。しかし、果たしてそれで良いのでしょうか。そこに「現実的」な妥当性はあったでしょうか。もしあったとしたら、きっと小論文実践はこれほど困難なものになっていないはずです。現実は違います。おそらく現在(2017年)は大半の学校で、良くも悪くも小論文実践は困難なものとされています。
 
 では、なぜ困難なのでしょうか。事情は様々にあります。が、その理由の1つに「小論文とは何か?」という問いを人々が真摯に受け止めていない実情を挙げることができます。小論文を理解可能な自明なものとし、その問題性を問うていない。それが小論文実践を躓かせている第1の問題であるように感じます。
 
 そのために本稿では、まず小論文を巡る様々な問題とその性質や原因について分析し、整理します。そして「小論文とは何か?」という問いの定義・内実を措定します。それは小論文実践のより良い環境を整備することにつながります。小論文を巡る様々な問題を「解消」することは困難だとしても、認知と理解によってその困難さを「軽減」することはできます。それが本稿の目的としているところです。
 
 次回から投稿する記事20本は以下の通りです。

[題目]

研究ノート① 小論文の難しさとその実践が困難であることの基本的な原因
研究ノート② 小論文と作文の違い
研究ノート③ 小論文と志望理由書の違い
研究ノート④ 小論文と学術論文の違い
研究ノート⑤ 小論文の評価とその方法に関する問題
研究ノート⑥ 小論文を書く上で必要とされている観点とその問題性
研究ノート⑦ 小論文の起源(歴史)と現状
研究ノート⑧ 小論文を書く上で大切な意識(姿勢)
研究ノート⑨ 小論文に必要な要素(材料)
研究ノート⑩ 小論文を構成するための思考の枠組み(イメージ)
研究ノート⑪ 小論文指導を巡る社会問題
       (1)国語科への偏見
研究ノート⑫ 小論文指導を巡る社会問題
       (2)日本語文法と文体学習の軽視
研究ノート⑬ 小論文指導を巡る社会問題
       (3)高校教員おける2つの経験不足
研究ノート⑭ 小論文指導を巡る社会問題
       (4)小論文実践に適さない環境と適している環境
研究ノート⑮ 小論文指導を巡る社会問題
       (5)小論文実践が実現しにくい組織と現実
研究ノート⑯ 小論文指導を巡る社会問題
       (6)学校現場に合わない市販の小論文教材
研究ノート⑰ 小論文指導を巡る社会問題
       (7)市販の小論文教材による功罪
研究ノート⑱ 小論文指導を巡る社会問題
       (8)大人(教員や保護者)による代筆
研究ノート⑲ 小論文の定義・内実
研究ノート⑳ おわりに
 
※以下に論じる「小論文」はコンクール等の提出原稿の小論文、いわば課題レポートのような原稿ではなく、「受験小論文」「小論文入試」の場合のものを指します。また問題の性質上、同様な内容が重複する場合があります。

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