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#79 社会問題としての小論文教育⑧

 今日は小論文を書く時の大事な「姿勢」についてお話しします。「姿勢」と書くと具体性が伴わない内容に見えます。確かに、今日お話しする内容は抽象的です。具体性はあまりありません。しかし、小論文の本質論です。本質だからこそ抽象化することでしか語れません。
 
 小論文は従来の日本の教育から鑑みると特殊なジャンルと言えます。ですので、その本質も特殊な形になります。その複雑性についてお話しします。これをお読みいただくことで、現在の高校生が向き合っている「知のあり方」について知ってもらえると幸いです。

(1)「書く」こと以上に「考える」ことが大事。

 小論文を執筆するうえで注意すべきは「うまく」書くこと、「正しく」書くことではありません。言い換えれば、書くことに比重を置き過ぎてはいけません。「読む・考える・書く」の全ての営みを大切にする必要があります。読むことと考えることは書くことと同程度、もしくはそれ以上に大切な営みです。「うまく」とも考えが浅いものは評価されにくい。しかし、その逆にうまくなくとも「深く」考え抜かれたものは評価されます。それが小論文の独自の評価ポイントです。いわば、小綺麗な文章よりも丹念に追究された内容のほうが評価されます。耳障りの良い言葉よりも、粗削りでも物事の深刻さが垣間見える文章のほうが評価されます。それが小論文における本質論です。

(2)「考える」というよりも「悩む」ことが大事。

 小論文において「書く」という行為は、的確に読み、深く考えた結果と過程を言語化・可視化することです。「深く考える」とは、すなわち「悩む」ことです。うまくいかない過程から逃げずに、立ち向かう心的状況のことです。小論文を書くというのは、そのような「知的格闘の痕跡」を残すことである。うまく正しく書くこと、いわば「勝利の道」を示すこととは違います。「未完成」であっても、「説得力が不足」していても構わない(それは小論文では当然のこと)。その代わり、課題内容に内在する問題を軽く考えず、重く受け止め、ねばり強く深く考えた「痕跡」が見えること。それが小論文において大切な姿勢であり、「小論文独自の説得力」となります。

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 以上が小論文において最も大事なことです。皆様、いかがだったでしょうか。直前まで課題内容が不明瞭で、かつ時間制限と字数制限がある中で書かなければならない小論文。完璧さなど求められないことが前提の試験。だからこそ、小論文には独特な説得力が求められる。それが現代の高校生に求められている「知のあり方」です。
 
 次回は小論文を書くときに求められる「言葉のあり方」についてお話しします。言葉のあり方と言ってしまうと、適切な言葉遣いや正しい日本語文法と思われてしまうかもしれません。が、残念ながらそのような内容ではありません。今回の記事同様、小論文の特殊性と小論文の本質論に関わる内容をお話しします。ご興味ございましたら、是非お読み下さい。では、また!

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