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#77 社会問題としての小論文教育⑥

 今日は小論文を構成する「観点」(いわば材料みたいなもの)についてお話しします。カレーライスを作る時には、ニンジン・ジャガイモ・タマネギ・肉・カレールー・米といったように様々な材料が必要です。では、小論文に必要な材料とは何でしょうか?
 
 おそらく明確に言語化できる人は少ないと思います。ちなみに受験の小論文には「時間制限」と「字数制限」があります。もしカレーライスを作ったことのない子どもに、時間制限と分量制限を設けてカレーライスを作れ、といったらどうでしょう? ちょっとひどいですよね?
 
 では、小論文ではどうでしょう? 現在多くの高校生が小論文を書きます。材料を明確に理解することで、小論文を書くという行為がいかに大変なのかが理解できるでしょう。読者の皆様も自分が高校生になったつもりで想像しながら読んでみて下さい。現在の高校生が向き合っている「知のあり方」がいかなるものか、少しわかると思います。

(1)基本マニュアル。

 小論文とは客観的な理由や根拠に基づき、論理的に自分の意見や考えを述べる文章のことです。これが市販の教材によく書かれている小論文の定義です。

(2)根本的な困難さ。

 小論文は「直前まで課題内容(執筆テーマ)が不明瞭」な状況下で、かつ「時間制限」「字数制限」がある中で書くものです。しかも「1人」で考え、そして「客観的」に「論理的」に書かなければなりません。これは根本的に困難な行為です。ゆえに小論文は論文としては常に「未完成」な状態にならざるを得ません。

(3)小論文における説得力。

 上記(2)の理由から小論文における「説得力」は十全なものにはなり得ません。正確に言うと、十分な説得力を持たせられる確率は非常に低いと言えます。常に「不足」「不充分」の形をとります。が、それでも評価の際には「説得力」が求められます。だから、小論文には「小論文独自の説得力」が存在します(詳細は研究ノート⑧で説明します)。

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 皆様、いかがだったでしょうか。今日は長くなるため全てを詳しく書くことはしませんが、高評価を得る小論文を書くことがいかに難しいことかはわかって頂けたと思います。「客観的」で「論理的」な根拠や理由を持たせた「説得力」。これが小論文に必要な要素です。ただ、これはある意味では「無理ゲー」(攻略困難なゲームのこと)のようなものです。では、どうしたら良いのか。本当に必要な小論文における「知のあり方」とはどのようなものか。それは研究ノート⑧で詳しく説明します。
 
 次回は小論文が普及した歴史についてお話しします。なぜ、小論文というジャンルが生まれたのか。そしてそれはいつ頃から普及してきたのか。そういったことについてお話しします。ご興味ございましたら、是非お読み下さい。では、また!

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