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#80 社会問題としての小論文教育⑨

 今日は小論文を書くときに求められる「言葉のあり方」についてお話しします。ただし、今回お話しするのは適切な言葉遣いや正しい日本語文法という意味ではありません。勿論、文章を執筆する上で、技術としてこれらが大事であることは言うまでもありません。しかし、小論文は技術が高ければ評価されるものではありません。むしろ、ある意味でその逆であることのほうが大事かもしれません。
 
 不思議なことです。高等学校までの学校教育で出される問いには原則として答えがあります。しかし、小論文ではその逆に原則として答えがありません。だから、小論文で求められる「言葉のあり方」も通常の教育のものとは異なります。その特殊性について今日はお話しします。

(1)「答える」言葉ではなく「応える」言葉が大事。

 借り物の知識や安易なきれいごと。誰にでも言えるような無難な内容。そういったものを論じても小論文では評価されません。おそらくそれらは文体や表現、言い回し等から十中八九採点者に見抜かれます。
 
 大切なことは、課題内容と「対話」するような書き方や、課題内容に「応答」するような書き方です。課題内容に内在する問題意識について、共に「悩む」その様子がわかるような書き方が大切です。すなわち、問題を他人事とせず、「自己の問題」として共有し、分析し、問い返した内容を、自分の言葉で言語化すること。その志向性が大切です。

(2)自分で身に付けた知識と自分で考えた具体例。

 小論文では様々な制約があることから、内容上不足な点があるのは致し方ないことです。しかし、だからこそ自分なりに考えた「別視点」「別角度」からの話が大切になります。自分で苦労・苦悩して身に付けた知識や知性から発信される「具体例」が評価の対象となりやすい。勿論、出題者が意図している方向性や課題(文)が求めている内容とずれてしまうような「別の話」は良くありません。課題内容に内在する問題意識を共有していないとみなされ、読解力・思考力の欠如とみなされてしまうでしょう。

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 以上が小論文を書くときに求められる「言葉のあり方」です。「対話」「別角度」「具体例」の3点がポイントです。けれども、これら3点は実はビジネスや現実の労働社会においても大切です。
 
 人の話を傾聴し、それに対して自身の意見を述べる。一般論や常識的な視点から話をするのではなく、新たな視点や新規性を模索する。そして具体的に述べる。こう書けば、ビジネスシーンでの話のようにも見えます。と言うよりも、要するに、小論文は人との関係性や働く時の本質論と同じ志向で書かれるべきなのです。ひいてはそれが現代の高校生に求められている「知のあり方」 と言っても良いでしょう。
 
 皆様、いかがだったでしょうか。次回は小論文を構成する上での「思考の枠組み」についてお話しします。簡単な言い方をすると、それは小論文の構成に関する「考え方」についてのお話です。ご興味ございましたら、是非お読み下さい。では、また!

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