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Webメディアの編集者は原稿のココを見ている!論理構成、語句の誤り、統計ソース…お仕事について紹介します

ライターとして書きつつ、編集者として原稿を見つつ、メディアを運営しつつの夏野です。最近は自分がもうひとり欲しいです。朝起きたらふたつに分かれていたりしないかな。プラナリアみたいに。でも、そうなっても、結局2人分仕事を受けちゃって、状況は変わらない気がします。好きなことで生きていく毎日、今のところ楽しいぜ。

さて、今日は割とまじめに、「Webメディアの編集者ってどこを見てるの?」って話をしようと思います。編集者さんはもちろん、取材記事を書きたいなと思っているライターさんにも参考になるかなと思います。

ちなみに、なんで急にこんな話をし始めたのかは最後に話します。衝撃のラストに刮目してください。

(2021/10/15追記 応募者さま多数により、いったん募集を締め切りました)


(注意)これは「夏野がお世話になっている媒体さま」の話です

毎度の前置きですが、これはあくまでも夏野がお世話になっている媒体さまを中心としたお話です。もちろん、汎用性の高いトピックもありますが、媒体さまによっては「ウチはこのあたりは気にしない」「これが入っていないなんて、モグリの編集者か!?」とかあると思います。そのあたりは各媒体さまの方針次第ですので、それぞれの状況に合わせてご判断ください。

【全体の雰囲気編】

媒体のトンマナに合致しているか

原稿をいただいて、まずチェックするのがここです。媒体によって、求めるトーンはさまざま。軽妙な語り口の原稿がウケる媒体もあれば、データに基づいて淡々と分析する記事の方がありがたい、という媒体もあります。いわゆる、媒体のカラーですね。

夏野の場合、認識のズレを起こさないよう、発注時にはかなり丁寧にディレクションさせていただきます。ただ、大昔には、認識合わせがうまく行かず、「サタデーナイトフィーバーしちゃいました?」な原稿が送られてくることもありました。いや、個人的には好きなんですけど、これはちょっと載せづらいですね……という。

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トンマナが大きくずれていると、校正以前に“書き直し”になってしまい、ライターさんにも大きな不利益をもたらします。編集者側は、トンマナを事前にしっかり伝える。ライター側は、フィーバーしない。お互いに平日のテンションでやっていきましょう。

タイトル/見出しはキャッチーか

次に見るのはここです。インタビュー記事は、純粋に“情報を得るため”に読まれるSEOコラムとは違い、面白くないと読んでもらえません。多くの方に手に取ってもらうためには、パッケージ(=タイトル/見出し)も工夫したいところです。

たとえば、以下の記事。パッと見て、面白そうですか?(※架空の事例です。)

たこ焼きがおいしいのはなぜ?〇〇さんにインタビューしました

〇〇さんのたこ焼きへのこだわり
〇〇さんがたこ焼き屋を始めた理由
〇〇さんの今後の展望
ライターによる感想

ではこれを、こんな風に変えたらどうでしょう。

「年間1億個たこ焼きを焼く男」に聞く、これからのたこ焼き屋が面白いワケ

定価1万円!?衝撃の「諭吉たこ焼き」が人気な理由
インド放浪で得た「これからはたこ焼きだ」の直感
「いずれは低価格路線も…」気弱にさせた“ある出来事”
たこ焼きって、宇宙なのかもしれない

最初に挙げた例よりも、「読んでみようかな」度が上がったはずです。上がっていなかったら、夏野の力不足です。アドバイスをください。

このあたり、上手なライターさんは上手なのですが、SEOに慣れている方だと、「キーワードを盛り込まなきゃ」と配慮してくださって、結果的に上のパターンに寄ってしまう場合があります。そうしたときには、編集者側から「このくらい攻めたタイトルにしましょ!」って提案しましょう。

※もちろん、タイトル/見出しは盛りすぎず、誠実に。いわゆる「釣りタイトル」は美しくないし、支持もされません。

配慮を欠いた表現になっていないか

昨今では、かなり強く求められている能力かもな、と思います。

ただし、配慮の方向は2つあって、1つは、言わずもがな読者への配慮。もう1つは、クライアント様への配慮です。

読者への配慮では、差別的な表現が盛り込まれていないか、攻撃的な内容になっていないか、といったことを見ます。

たとえば、夏野は体脂肪率が28%ある、いわゆる「隠れ肥満」の体です。そんな夏野がインタビューを受けたとして、「筋肉がなくて脂肪が多い軟弱ウンコ野郎なので……」と発言し、それがそのまま原稿になっていたら、ちょっとまずいですよね。インタビュー中はラフな表現が出ることもありますが、そのまま記事に書いてしまうのはちょっと問題です。

そこで、「筋肉に自信がなく、脂肪量が比較的多いので……」などに直すわけです。(ただし、やりすぎると迂言が増えてくどい記事になるため、注意は必要です。)

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(もっと強い女になりてえ)

それから、もう一方向が、クライアント様への配慮。たとえば、プロテインに特化したメディアのインタビュー記事だとしましょう。実は、夏野は体質的にどうしてもホエイプロテインが飲めないのですが、これを「ホエイはダメなのでソイ一択ですね!アハハ」とか書かれてしまうとまずいです。

なぜなら、この書き方だと、「ホエイは(体質的に)ダメなので……」の意味が、「ホエイは(品質が)ダメなので……」に見えてしまうからです。とくに、ホエイプロテインの会社さんから広告の固定費をもらっていた場合、めちゃんこまずいですね。

そこで、「ホエイは体質的に飲めないため、ソイを飲んでいます。」のように直します。ちょっと高度なテクニックですが、意外とやってしまう(不必要なヘイト表現をしてしまう)ライターさんは多いので、知っておくと良いかもしれません。

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(クライアント様にしっかり配慮できるようになりたい。あと、マッチョにもなりたい)

(+α)できれば、過去記事にリンクする

最後はプラスアルファで、できれば過去の関連記事へのリンクを挿入しよう!というやつです。さっきのプロテインの例だと、「美味しいソイプロテインはこれだ!」みたいな記事を直後に挿入する、みたいなやつですね。(SEO的にも、内部リンクを挿入することでサイト内を回遊してもらえると、サイト全体の評価が上がるらしいです。知らんけど。)

ただ、これは、有償の記事広告だとやらないことも多いです。なぜなら、せっかく読みにきてくださった方が最後まで読まず、他のページに逃げちゃうともったいないからです。その意味で「プラスアルファ」としました。

【文章/修辞技巧編】

上記で「全体の雰囲気」や「構造」について見ましたので、次は、文章表現や修辞技巧について見てみましょう。

論理構成はしっかりしているか

「いきなり何?」ですが、論文って、めちゃくちゃ構成がバッチリ決められています。具体的には、こういう構成です。

要約
この論文で何を主張するのかを要約して伝える。「この論文では〇〇をやった。その結果〇〇と分かった。これはつまり〇〇という意味であろう。」みたいなことを書く。

序論
なんでそのテーマを選んだのかを説明する。

先行研究
そのテーマについて、過去に行われている研究を紹介し、わかっていること/残されている課題を整理する。
その上で、この論文ではどのへんをカバーするのかを提示する。

データ採集と分析の手法
目的を達成するために、どのようにデータを採集したか、集めたデータをどう分析したかを説明する。

分析+結果
分析結果を簡潔に示し、どのようなことが読み取れたかを示す。

全体を踏まえた考察
先行研究+今回の研究を踏まえ、新たに何が明らかになったのか(なっていないのか)を述べる。

参考文献
参考にした文献とデータを示す。

細かなフォーマットは分野によって異なりますが、基本的なところは共通しているはずです。んでもって、それぞれのルールが超細かい。参考文献はとくに、「ここは半角スペース入れる。ここは大文字にする。ここは斜体にする。」とか超決まっている。違反することは許されない。超厳しい。

じゃあ、なんでそうなっているのかっていうと、どんな人が読んでも正しく読み取れるように書く必要があるからですね。フォーマットが整っていると、読む側の負担が少なくて済みます。これがもしも、ある人は参考文献リストが欠損していて、ある人は「分析」だけ異様に詳しいけど他は5文字!……なんて状況だったらどうなるでしょう。読む側としては、相当疲れるはずです。

そして、ライターの原稿も、ある程度はこの流れに沿うときれいに構成できると思っています。つまり、

リード文
この記事ではどのようなトピックを扱い、どのような点が面白いのか書く。

インタビューイーの紹介
インタビューイーはどのような背景を持つ人物で、どのような仕事をしており、なぜ本企画のインタビュー対象になったのか。

インタビューイーの過去の話
なぜインタビューイーが現在の仕事に就くことになったのか、なぜそのこだわりを持っているのか。過去の話にフォーカスする。

インタビューイーの現在の話
そこから、現在はどうなっているのか。類似の事例と比較してどのような点がユニークなのかを書く。

インタビューイーの未来の話
上記を踏まえ、今後はどのように活躍していかれたいかを伺う。
かつ、ライターとして感じたことをまとめる。

のような感じで。

もちろん、インタビュー記事は論文ではないので、あえて形式を崩すこともあります。たとえば、いきなりキャッチーな写真+エピソードを見せて読者の注意を惹きつけたうえで、過去の話に移る……のように。けれどもそれは応用編であって、基本的には上記の流れで構成した方が間違いがないと思います(諸説あります)。

逆に言うと、このあたりがごちゃっとしていると「この話、なんで出てきたの?」「この話は、いつの話なの?」と混乱しがちなので、編集者としては、勇気を持って「ここのパート、うしろに移動させましょうか」などと提案することがあります。

今のところ、ライターさんから「読みづらくなったぞ!どうしてくれる」と言われたことはないので、多分成功していると思います。

文法は誤っていないか

最近では、「ら抜き言葉」「『づ』と『ず』の混同」があまりうるさく言われなくなりました。駅貼りの広告ですら「見れる!」と書いてあると、「今、まさに言語の変化を目の当たりにしているなあ」と感慨深くなります。言語は生き物だから、自然と形も変わっていくもの。そのうち「続く」が「つずく」って書かれるようになるのかもしれません。

が!現状、メディアとしては見逃すわけにはいかないので、普通に直します。ら抜き、さ入れ、れ足す、など、など。ライターさんご自身も無自覚なことがあるので、必要であれば「申し訳ないんですけど……」と共有させてもらいます。いつか言葉のスタンダードが変わったら、逆に「おめーの言葉、古臭えよ!」って指摘してください。改めますので。

語句を聞き間違えていないか

専門性の高い話で起こりがちなミスです。たとえば夏野が早口で「今はラットプルダウンに凝っていて広背筋を動かすためにもダイナミックストレッチを長めにとっていてくゎせdrftgyふじこlp;@:「」と話したとしましょう。ライターさんご自身が筋トレに詳しくないと、「ラットプルダウン」「広背筋」「ダイナミックストレッチ」あたりはピンと来ませんよね。

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(これはベンチプレスの画像です。いらすとやさん、筋トレ関連のイラストが充実している……)

その結果、原稿を見ると、「ラゾプダウン」「広範囲の筋肉」「ダイナミックにストレッチする」のように書かれていることがあるんです。そういった場合には、原稿からもとの語句を読み取って復旧しなければいけません。気づけなかった場合、インタビューイーのファクトチェック段階で修正要望をいただくこととなってしまい、先方に「このライターと編集者、何も知らないな」と思われてしまいます。

全知全能でない以上、ある程度は仕方ないのですが、「仕方ねーだろ!」と開き直りたくはないもの。できる限りの手を尽くしましょう。

冗長な表現、同じ表現の繰り返しになっていないか

自分もライターなので分かりますが、ライターって、自分の書いた原稿を読みすぎて、何が何だか分からなくなってくるんですよね。その結果、意図せずして冗長な(くどい)表現になっていたり、文頭/文末が同じ表現の繰り返しになっていたりします。

たとえば、夏野はたとえ話をよくするので、原稿には「たとえば、」が死ぬほど出てきます。ある程度は目をつぶってもらいたいのですが、たとえば3文連続で「たとえば、」から始まっていたらちょっとアレじゃないですか。(気付きましたか?文頭の「たとえば」が連続しています。)

「〜と思います」も重複しやすいので、「〜です」にするとか、「〜と考えています」に変える。こういう微調整も、第三者である編集者が担います。

【データのファクトチェック編】

画像が著作権法に違反していないか

原稿によっては、ライターさんご自身がフリー素材を入れてくださっている場合があります。それ自体はとても嬉しいことなのですが、たまに著作権的に「んっ?」となる画像が紛れ込んでいることも。とくに、「フリー画像」をうたっているユーザー投稿型サイトでは、しれっと著作権違反の画像がアップロードされていることがあり、ライターさん自身は無自覚のままに、まずい画像を挿入していることがあるのです。

これを防ぐためには、「画像系は編集部で挿入」というルールにするか、「このサイトならOK」と具体的に指示するかがよいのですが、たまに意図せぬ事故が起こることも。ちょっとでも不安を抱いたら「この画像って、どこから持ってきたやつです?」とたずねる危機感を持ちましょう。

統計値のソースはどこか

インタビューイーによっては、統計的な数値を交えて話してくださることがあります。それ自体はとてもありがたいのですが、たまに、ソースをうろ覚えの方もおられます。「なんかねえ、ホエイプロテインのほうがソイプロテインより30%いい、みたいな話がどこかにあったと思うんだよね……どこだったっけな……なんか内閣府とかそういう……31%だったっけ……?」みたいな。(架空の話です。ホエイ/ソイ、どちらもいいプロテインです。)

勘のいいライターさんだと、「ホエイ」「ソイ」「30%」「効果的」「内閣府」みたいなキーワードでggり、「内閣府の『全地球5000兆%マッスル大調査』によると……」みたいに復元して書いてくださるのですが、中には聞いたまま書いてしまう方も。その場合は、編集部側でソースを探し、↑のように復旧する必要があります。数字は非常に強力な説得力を持つからこそ、テキトーなソースで書いてはいけないのです。

※復旧できなかった場合はインタビューイーにたずね、とくにソースがなかった場合はカットしています。そのくらい、数字ってデリケートな存在なんです。

で、なんでこんな話をしたかっていうと

以上で、Webメディアの編集者が見ているポイントをまとめました。「めんどくせー」「チェックポイントが多いよ」と思われたかもしれませんが、メディアで記事を出す以上、どれも欠かせないチェック項目なので、ぜひ意識していただければと思います。

さて。

藪から棒にこんな話をし始めたのには理由があります。それは……

編集者を募集します!

(2021/10/15追記 応募者さま多数により、いったん募集を締め切りました)

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冒頭で述べた通り、ありがたいことに仕事が忙しく、編集のお仕事を少しずつ他の方にお願いできたら……と考えています。

はじめは決まったフォーマットの(チェック項目の少ない)原稿からお任せし、希望に応じて、難易度の高い原稿もお任せできればと思います。

以下の条件をご覧いただき、ご興味のある方はnatsuno.kaoru@natsuno.bizまでご連絡いただければ幸いです。

■契約形態
業務委託(準委任契約)
※再委託不可
ご依頼前にNDA(秘密保持契約)を結んでいただきます。

■契約期間
ひとまず2021年10月〜12月の3ヶ月間。その後は双方の話し合いにより延長可能性あり。

■想定稼働時間
週2時間〜5時間程度を想定。増えそう/減りそうな場合はご相談いたします。
フルリモートで、やりとりはSlackを使用。
稼働曜日/時間帯を固定していただく必要はありませんので、お手すきの時間に手伝っていただければ幸いです。

■時給
1200円〜ご経験に応じて交渉可能。
ご希望の条件をご提示ください。
(他社ではこのくらいの値段で受けています、などの提示も歓迎です)

■備考
お支払いは末日締め、翌月末払いとなります。簡単な日報をスプレッドシートにつけていただき、末日にご請求書を発行していただきます。

大変恐縮なのですが、今回の募集は経験者に限らせていただきます。これまでにご担当されたお仕事の概要を添えた上で、上記のアドレスにご連絡いただければ幸いです。

たくさんの応募をいただけた場合、募集を締め切らせていただきます。ご興味をお持ちいただいた方は、別の機会にぜひよろしくお願いいたします。

プラナリアみたいに分裂できない夏野、普通に忙しくて困っています。皆様のご応募をお待ちしております!

とっても嬉しいです。サン宝石で豪遊します。