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春を告げる沈丁花

夏のクチナシ、秋の金木犀と一緒に三大香木といわれる沈丁花。
今年も駅から家までの帰り道に咲き始めた。この香りがすると春だと感じる。そして、その香りと一緒に何年か前の春を思い出す。

沈丁花は、当時私がよく使っていたバス停の近くにある自転車屋さんのビルの間にひっそりと植えてあった。

新卒で会社に入ってすぐの頃、母から「仕事以外にも楽しみを持つといいよ」といわれ始めたフラワーアレンジメントが趣味になり、その花が沈丁花という名前だと知った。

フラワーアレンジメントが趣味になったことで、何かが大きく変わったわけではないけれど、仕事でささくれ立っていた気持ちがなんとなく潤った。

大学から仙台に住みはじめ、卒業して仙台にある会社に就職してからもしばらく同じマンションに住んでいた。私の地元からすると仙台は都会だったけど、冬は車道に雪が積もり、タイヤにチェーンがまかれたバスがシャンシャンと音を鳴らして走る。

雪の中、いつも足は感覚がないくらい冷たくて
長い冬が嫌いだった。

春に近づくにつれて道路の雪がなくなって、沈丁花の蕾がふくらんでいくのを楽しみに待っていた。
そして、沈丁花はその長い冬が終わることを知らせるように咲いた。


今年もまたあの沈丁花は咲いているのかな。
今でも、香りとともにあの頃を懐かしく感じる。



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