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残暑お見舞い二十三


溶け出した氷が動き出す

水色カランをひねって夏の温度

安くて美味いスーパーの桃包囲網


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 月 日(金)

喉の痛みで起きる。
一晩中冷房をつけて乾燥しているのか、コロナだからかわからない。両方かもしれない。
頭はすっきりしていて、もう熱が出る様子はなさそう。

朝ごはんにビタミンCのマルチゼリーを食べて、TVerで「こっち向いてよ向井くん」2話と「ツギクル芸人グランプリ2023」を観た。
昨日は寝過ぎて寝れなくて困っていたけれど、今は薬の副作用で眠くなる。気づいたらツギクルの中盤くらいで寝ていた。現在具合が悪いひとになっているので、大量の時間を睡眠に使ってしまってもこれがわたしの仕事なのだからと堂々と眠りまくる。

次に起きるともう15時過ぎだった。りんごのすりおろしを作った。茶色くて全然おいしそうじゃなかった。
そのあとお茶を淹れたら全然味がしなかった。
この熱い液体がお茶だとなんとなくの雰囲気でわかるが、香りや味ではわからない。いよいよこの時が来たかと思う。

夜ごはんには豆腐とキャベツとしめじの入った味噌汁を作り、納豆ごはんと一緒に食べた。
せっかく具をいろいろと入れたのに味噌汁も味がしなくて悲しかった。納豆は味がした。
どうやら強い味はわかるらしいが、薄い味は感じない。お茶も味噌汁も大好きなのに…。これいつまで続くんだろう。

夕ごはんを食べながらツギクルの続きを観た。
決勝にも進出したナイチンゲールダンスがすごく面白くて、ちゃんと続きを観て良かった〜と思った。ツンツクツン万博のピッツァマンもめちゃめちゃ面白かった。

お風呂に入ってすっきり。
せっかく時間があるから『黄色い家』を読もうと布団に入ったが、薬のせいですぐに眠ってしまった。


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 月 日(水)

今日になって急にくしゃみと鼻水がたくさん出るようになった。もうダメ。
特に何もせずにテレビや読書をして過ごした。

夕方に母がお見舞いに来てくれた。
銀座でNiziUのポップアップがあったらしく、その帰りに遊びに来てくれた。
もう発症から5日以上は経っているけれど、部屋には上がってもらわないほうがいいということになり、二人でキッチンの廊下に座って1時間くらい喋った。その状況がなんか面白かった。

お医者さんやスーパーの店員さん以外の人と話すこと自体が久しぶりだったのでかなり嬉しかった。わたしにしっぽがあったら振りたかったよ。キウイとアイスとジュース、お菓子やお惣菜などを買ってきてくれた。心ほっこり。

Twitterで『なぞの転校生』をYouTubeで全話配信していることを知る。大好きなドラマをこのタイミングで観られるなんて、引きこもりで良かった。2話まで観た。


今日で引きこもり生活7日目だった。
自分の人生をルーティンワークで回し続けないといけないストレスから一時的に解放されたおかげで、コロナになる前に抱えていた人生に対する不安定な気持ちがなくなった。
いっぱい寝ているのでクマも薄くなったし、風呂上がりに顔を見たら肌がつやつやとしていて、健康できれいに見えた。
やっぱり睡眠不足とストレスは人生の敵。今までよく走り続けてきたと思う。



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塩素くちびる西瓜の喉ごし

有料ビニール袋に透ける夏の果肉

まっさらなまぶたにさした初めてのラメ

奥底から変な折り目の保健通信


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 月 日(火)

コロナで11連休したおかげで寝不足が解消され、ストレスもなくなり、罹患する前と今では肌のハリツヤが全然違う。今日は職場に復帰してから2日目だったからまだ肌はきれい。でもなんか冴えない。

夕食後に余った生クリームを使ってスコーンを作ってみた。部屋中がいいにおいになった。
そのあと桃を食べようと思って剥いてみたけれど、硬すぎて種を取るところまでたどりつけなかった。もう包丁を入れてしまったし、もう一度熟成を試みるということができない。つまり取り返しがつかない。

どうしようもなくなって包丁ですべての皮を剥いてから丸齧りするという暴挙に出た。
キッチンで果汁のしたたらない、においの弱くて硬い桃をごりごりと食べる。ひとくち齧ってからとても虚しくなりすぐにやめた。

ちゃんとおいしく食べたかったな、桃。
桃すらちゃんと剥けない自分に悲しくなる。仕方ないのでコンポートにする。あーあ。

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 月 日(木)

今朝は一昨日の夜に煮た桃のコンポートを食べた。水っぽくて全然おいしくなかった。
夜、それを紅茶にしずめてピーチティーを作ってみたけれど、それもおいしくなくて3分の1ほど残した。

「初恋、ざらり」の4話を観た。
恋愛ドラマや漫画で胸キュン的な感情を抱くことはあまりないのだけど(そもそも観ないかも)、初恋、ざらりは胸キュン的シーンの奥に葛藤や苦しみが透けているため観ていて叫びそうになっちゃう、、あまりにもつらい場面が多いけれど有紗も岡村さんもお話自体も愛おしいので目が離せない。
「かがやけ!ミラクルボーイズ」の真空ジェシカ回で爆笑して(ガクの2024年から来た未来人・銀河川未来一という設定が特に好きだった)、大好きなタイムマシーン3号のYouTubeを観てから「初恋、ざらり」。情緒がバグりそう。

23時に消灯しようとしたのに今日も全然守れなかった。

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あの曲を聴き損ねる

不器用がゆるされる集まり

小さい文字は読んであげる


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 月 日(日)

朝起きてコーヒーショートケーキを作った。

生クリームにインスタントコーヒーが入っているので、いつもより砂糖多めに入れてみたら甘すぎたかも。新しい口金を買ったから楽しみにしてたけど、キッチンが暑くて生クリームが少しでろんとしてしまった感があり悔しかった。


でもおいしかったです


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 月 日(月)

お昼休みに「エロ自由律俳句」の最新回を読んだ。なんとゲストが東直子さん。

エロ自由律俳句はやっぱり素晴らしい。
漫画やビデオなどには行為やその過程などが描かれているけれど、自由律俳句にはその中から切り取ったエロが記録されているため個人的かつ刹那的ゆえの濃密さがある。読んでいて照れちゃう。
東さんの句「全体重のせてください」に、たまらなくときめいた。

食後にコーヒー生クリームを浮かべた紅茶を飲んだ。生クリームおいしい。コーヒーゼリーの味。

お風呂で『ぬいぐるみとしゃべる人はやささしい』のお話を読み切った。
映画では白城のモノローグで終わるところにあまりしっくりときていなかったけれど、小説は主人公は七森でも三人称小説だったから麦戸ちゃんと白城の気持ちも書かれていて理解が深まった。原作も同じように白城のモノローグで終わるけど、わたしはそのラスト一文が大好き。

さっき洗ったオシャレ着を風呂場に干しながら浴槽でぬるめのお湯に浸かっていた。洗濯物のいいにおいとやわらかいぬるま湯が気持ちよくて、自分も洗濯物になって洗われているような気持ちを味わう。

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知らない打ち水の湿気に覆われている

眩しそうに日避ける老婆の手

二重跳びに似た音が鳴く台風前夜

妄想ではちゃんとしている



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 月 日(土)

今日は都市伝説展ときいちごに行く。

おととい買ったジャージ風のパンツと花柄のサーマルキャミソールを着た。これまた買ったばかりのバブーシュカもかぶってみたけど、なんか昔みたいに「わたしのファッションだもん!」みたいな気概がない。表面的に社会に溶け込み失ったもの。

北千住は遠かった。
駅から出てルミネのいろんなお菓子やごはんがあるにぎやかなフロアを抜ける。
北千住はまったく馴染みのない街だ。わたしの知らないところで、暮らし働く人がこんなにもいるのだなと街の人通りを横目にしみじみと思う。

都市伝説展はマルイの6階だった。
入口から人が並んでいて、中もたくさんの人でにぎわっていて展示を見るのもひと苦労だった。
子供の頃から人並み程度に都市伝説や怖い話は好きだったので、年代順にあらゆる不思議を追って見られるのが興味深かった。
特にわたしは10年代にオカルト板まとめや洒落怖などをよく読んでいたので、ネット系の展示で当時のわくわくが蘇ってきた。怖い話を聞いたり映像をみたりすると、もっと欲しくなって後ほどネットで怖いものを積極的に調べる「追い怖」をよくするのだけど、展示中からすでに追い怖をしたくてうずうずした。まずは「きさらぎ駅」を読み直したい。

展示の最後は呪物のコーナーで、都市ボーイズの動画で観ていた猫の置物やルクテープを実際に見られてうれし怖かった。楽しみにしていた猫は不気味だったけれど見ているうちに恐怖は薄まり、なんだか愛らしく思えてきた。

事故物件の文章を読んだ後、次のコーナーに行こうと振り向いたら、目がでかすぎるMOMOがいてめちゃめちゃびっくりした。それが一番怖かった。

高円寺に移動して、きいちごへ。
可愛い服を着たの女の子たちの行列ができていて、わたしもそこに並ぶ。揃いも揃ってみんなラブリーな服装で、自分もその一部となって通行人にじろじろと見られるのが恥ずかしかった。
1時間くらい並んで中に入ったけれど、欲しいと思っていた白いショルダーバッグはなくて結局何も買わずに出てしまった。まあ金曜日にたくさん買ったからいいか。

吉祥寺でケーキを買った。
多奈加亭(キラリナ店)で買ってみた。こんなにも吉祥寺で過ごしてきたのに多奈加亭ははじめて。いちごのショートケーキとレモンケーキを買った。
今日はなにかとレモンに縁のある日かもしれない。朝はレモンミルクを飲み、出先ではレモン味のサイダーを飲み、アトレでレモンの匂いのハンドソープを買ったのだった。

帰宅してから肉じゃがを作り、いちごのショートケーキを食べた。生クリームはほろほろするくらいやわらかめでミルキーな甘み。
この時期、スーパーにいちごは売ってないからすごく久々に口に入れた。かたさ、あまさとすっぱさ。
やっぱり冬の方が甘みがあるのかな。そんな気がしたけれどひさしぶりのショートケーキは特別で、ありがたかった。

ひとりで遊んだだけなのに仕事くらいつかれてしまい、久々に床で眠った。
明日は朝にレモンのケーキ食べよう。


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ともだちが撮ってくれた 眠っているすずめ



 月 日(火)

明日から夏休みなので、旅に出るつもりででかいリュックで出勤。
仕事が終わったらこのまま旅に出るのだと話すと、ボスが早く帰っていいよと気を遣ってくれた。しかし自分がどんくさいせいで職場を出るのがいつもとあまり変わらない時間になった。

品川駅で塚田農場と漁師とコラボした鮭弁当を買って、静岡くらいで食べた。食べるのが遅いし周りでごはんを食べている人があまりいなかったから、みんなが外遊びに行っている時間まで残って一人でお弁当を食べていた幼稚園時代を思い出した。いまは先生に見張られていないから自分のペースでゆっくり食べる。から揚げがおいしかった。

そして新幹線のなかでこの残暑見舞いを書きながら夏を振り返る。

髪が伸びた。
感染症に罹った。
ケーキばかり食べていた。
桃はあんまり食べなかった。
アイスもあんまり食べなかった。
みんな夏夏言うけど、てきとうに過ごした。

そういった過ごし方に後悔はないのだけれど、夏の句をうまく作れなかったことだけ心残りだ。あたりまえだけど、作らないと下手になる。

実は夏の間、毎日しっかりめの日記を書いていてそこから7月下旬から8月あたりの日記をいくつか選んでここに載せたのだが、我ながら地味なエピソードばかりの日記だと思った。テレビやラジオ、ドラマや本のことばかり書いてあった。おおむね日常すぎる夏を過ごしたなと思う。

すずめ園2023年の夏の仕上がりはこのようになりました。いまは新しい季節への期待でいっぱいです。

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自由律俳句