AI教育サービスの落とし穴
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教育のDX化という言葉をよく耳にする。
DX化とはデジタルを用いて業務を効率化したり、より効果的に成果が出るようにプロセスや風土を改変していくことである。
これを教育の場に当てはめると、教科書の代わりにタブレット端末を使用する、回収したテストを自動で採点する、学習状況をオンラインでリアルタイムにチェックする、といった技術の活用が考えられる。
その中で私が注目しているのは、『atama +』というサービスだ。
このサービスを簡単に説明すると、自分が間違えた問題だけをAIが自動生成し繰り返し出題され、無駄がなく学習できるというサービスだ。
私はいつも生徒に、間違えた問題にはチェックを付けるように伝えているが、それをAIが自動でやってくれるイメージだろうか。また、解説動画も搭載されているようなので、迷ったらそれを見れば理解できるという仕組みだ。
2017年以来始まったこのサービスだが、一体どのくらいの成果が生まれているのだろう。今回はそちらに切り込んでいきたいと思う。
どのくらい成績が上がるのか?
atama +を使うことで、どれだけの成績上昇を見込めるのだろうか?
まずは合格実績を調べようと思い公式サイトを覗いてみると、なんと不思議なことに合格実績は掲載されていなかった。
合格実績は学習塾の良し悪しとあまり関係がないと思っているので参考にするつもりはなかったのだが、学習塾といえば合学実績をこれでもかとバンバンと掲載するイメージがあるので少し意外だった。
一番手っ取り早いのがこちらのサービスを使う前と後の平均偏差値上昇率などの数値だが、当然だがそんなものの記載はない。こうなると、効果を定量的に測るのが難しくなってくる。
また、atama +導入学習塾の一覧が載っていたので、それらの合格実績をatama +導入前後で比較して、合格学校の平均偏差値を出すくらいの気合を入れていたのだが、合格実績を出していない学習塾が多くてこれもできなかった。
仮に出していたとしても、せいぜい1〜2年前までしか掲載されておらず、導入前後で比べるのは困難だった。
デメリットを挙げてみる
定量的に計りたかったが難しそうなので、敢えて私の思うatama +のデメリットを上げてみようかと思う。メリットは公式ホームページに散々書かれているのでそちらを参照してほしい。
デメリット① 値段が高め
atama +の利用料金は
1教科 月額 22,000円
2教科 月額 24,200円
3教科 月額 27,500円
となっている。
少し高いなという印象を受けたがどうだろうか?
もし2教科利用の場合、私の運営している学習塾ならば週4コマは受講できる。
一般的な学習塾でも、週2コマ程度は受講できる金額ではないだろうか。
デメリット② 自立できない子には使いこなすのは難しい
このサービスは使いこなせるのであれば良いサービスだが、全ての子供が自主的に問題に取り組み、分からない箇所は解説動画を見て自分で理解して進めるとは限らない。むしろ、そういった子は稀であろう。
それも考慮されてかatama +には担任サポート制という、子供の学習の進捗を管理する先生も個別に付くのだが、私個人の肌感としてはそれだけだと怠惰な子ややる気のない子だと難しいような印象を受ける。
デメリット③ タブレット類は学力にマイナスの影響を与える
私のブログでも何度か語っているが、パソコンやスマホは学力に大きなマイナスの影響をあたえることが分かっている。
これは学習目的の利用でも同じで、タブレットの使用時間が増えるほど基本的には学力は下がっていく。このデータを踏まえると安易にタブレット学習を進めるのは難しいように私は思う。
実際に試してみた
しかし、実際に試したことがないのに否定するのはいかがなものかと思い、atama +の無料体験をさせてもらえないかと思い連絡を取ってみた。今後私の塾でもそちらのサービスの導入を考えているので、一度私自身体験できないでしょうか?という趣旨のメールを送ってみた。
そうしたら、こちらの返信が返ってきた。
残念ながら、体験はできなかった。
そこで似たようなサービスを提供しているスタディサプリというサービスの無料体験を行ってみることにした。
こちらは誰でも2週間無料体験ができるので、早速申し込んで私自身が体験してみた。そちらの感想を少し語りたい。
1 問題が簡単すぎた
試しに数学の応用問題を選択してみたのだが、問題があまりにも簡単すぎた。問題を転記するのは阻まれるが、例えるなら教科書に載っている応用問題レベルだった。これについてはぜひ改善していただきたい。
2 目が疲れる
私はパソコンで試していたのだが、目の負担が大きかった。オンライン授業では説明を聞いている時間と問題を解いている時間が半々くらいのイメージなのでそこまで影響はないが、画面上で問題文を読んで解き進めるのは、目の負担が大きいように私は感じた。
3 結局は自習と同じ
当たり前だが、こちらのサービスは問題がAIによって自動生成されたり勉強時間が記録されたり解説動画がいつでも見れるといったサービスもあるが、基本的にはただの自習である。今まで自習で問題集に取り組んでいた部分にAIという付加価値がついただけである。
つまり、勉強しない生徒がこのサービスで急激にできるようになることはありえない。恐らくタブレットで宿題を出しても答えを適当に書くか、適当に選択肢を選ぶだけだろう。
そんな生徒のために我々の税金を使ってタブレットを渡すのは、シンプルに私は嫌である。
まとめ
色々とデメリットを書いてきたが、私が一番危惧しているのはタブレット類の液晶は脳に良い影響を与えないという部分である。ただでさえスマートフォンを日常的に使用しているこの時代に、1人り1台タブレットを持つことには慎重にならなければならないように思う。
また、もしこちらのサービスを公教育に導入するのであれば成績上位の生徒だけで十分なように思える。成績下位の生徒はそもそも勉強しないだろうし、成績中位の生徒は学校のワークを何周も解くで十分効果があるように思える。わざわざ我々の税金を使って彼らにこのサービスを与えるメリットは少ないように思える。
もちろんメリットも十分にあるので、試験的にどこかの学校でぜひ導入してもらいたいものである。
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