見出し画像

オリーブの実

オリーブというものは、日本人にはあまり馴染みがないものだと思う。

私が初めて食べたのは、おそらく幼い頃だと思うが、覚えていない。
私の中に初めてオリーブについての記憶が現れるのは、高校生のときのことだ。
礼法室の畳の上で、砂糖づけになったオリーブを食べた。
それは、茶道部の顧問だった先生が持ってきたもので、どういう成り行きだったかは忘れたが、食べてみようと言われたのであった。

先生と私たちで1つずつ口に入れたが、はっきり言ってまずかった。
しかし、こういうとき「まずいね」と言えないのが日本人である。目配せしながら、先生は「うん、砂糖づけになったオリーブだね」と言って、仕事があるからと職員室に戻っていった。

私は、このとき以来、オリーブを警戒している。

嫌いなわけではないが、どうもオリーブを見ると、いや、オリーブと聞くと、脳裏にあのざりざりした砂糖が絡みついたオリーブの味が蘇ってしまい、勝手に眉間にシワがよる。

大人になって付き合った恋人は、どうもこのオリーブが好きなようであった。
お洒落なスペイン料理のお店で、最初にオーダーを取りに来たお兄さんに、とりあえずワインとオリーブと言われて仰天した。苦手なものある?と聞かれたけれど、いま、あなたが頼んだオリーブですとは言えず、たべた。

酢漬けのオリーブは別に不味くはないが、やはりざりざりを思い出してしまい、ずっと一緒に浸かっていたピクルスを食べていた。

私はその後、ピクルスが好きな女として、生きている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?