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結婚前日に思うこと。

6月に入って東北は毎日風が気持ちいい。5月は風光るという例えがあるけれど、東北は今まさに風が光ってる。洗濯物はよく乾くし、少し開けた窓から入る風が薄いカーテンをふわりと揺らしている。とても穏やかな真昼。
こんなにゆとりのある時間を過ごしているのは無職だからなのだけど、仕事を辞めた理由はいろいろあって、そのうちのひとつが結婚だ。


明日、入籍する。本当は5月中の予定だったのが、コロナやら書類の準備不足やらで6月になってしまった。6月は残念ながら特に思い入れのある日はない。それなら2年と1ヶ月である6日が覚えやすいかなあと思ったけれど、6月6日はオーメンだしそういうのを気にする母に怒られそうなので直近の大安である5日になった。明日だ。語呂合わせもいまいちピンとこないし、既に忘れそうだ。

ということで今日は31年間慣れ親しんだ名字が最後の日だ。私の名字はかなり珍しく、結構気に入っていたので少しさみしい気がする。気がする、だなんて曖昧な表現だけど、この名字じゃなくなるのはさみしいなあとは思うものの、今現在あまり実感がないから弱気な表現になった。先に結婚していった友人たちの話では、名前が変わることに伴う手続きが面倒らしい。銀行とか、マイナンバーとか。パスポートはちょうど期限が切れるのでいいタイミングだ。前回パスポートを更新する時、結婚で名前が変わることを踏まえて5年用にした。つまり5年をリミットとして婚活をしてきたので、計画がうまくいったというわけだ。この婚活の話についてはまた後で書こうと思う。

パスポート計画を立てたのは26歳くらいだったと思うので、かれこれ5年間、先をゆく友人たちを祝いながら結婚について考えていた。30歳という一つの区切りが見えるようになってからはなおさらだった。仕事が楽しかったし、やりたいことをしている分焦りとか早くしたいとかはそんなになかったけれど、それでも妊娠を望む女性にはどうしてもタイムリミットがある。仕事は好きだし毎日に満足感はあっても、この先どこで誰とどう生きていこうか無限ループだった時期もあった。

それでも、いよいよ明日は入籍の日だ。この私が結婚するとは。周りから結婚の報告を受けるたび、みんなすごい大台に乗ったなと思っていた。結婚は、いつかしたいけど、遥か遠くにあるもののイメージだ。この人だという人と決断して、新しく作っていく。ステージが違いすぎる。そう思っていた。
だから、自分が結婚することになったらどんな気分だろうと果てしなく考えていたけれど、結婚だ、人妻だ、と思っても、今はとても普通の気分だ。ザ・いつもと変わらない。この私が結婚するんだなあと感慨に浸ってみても、心がざわざわしたり、しんみりしたりはあんまりない。不思議だな。わりと夢見る夢子ちゃんタイプだと思っていたのに。
人って変わるんだなあ。変わるには痛みとか傷が必要だから、あれかな、あの出来事かな、みたいなのはあって、もし心が可視化できたら、今までのそういうのがうっすら跡になって残っているかもしれない。中学校の時転んだ膝の傷跡みたいに。



ここまで書いて気づいたが、今じゃん。めちゃくちゃしみじみしている。全然しんみりしている。まあでも、結婚はこれからが始まりであり生活であり日常だから、今この一人の時間くらいはよしだ。
夢は叶ったら夢じゃなくなる的な歌詞があるけど、まさに頭の中でいつかと思い描いていたものが現実になろうとしている。いつかが当たり前になってその上で暮らしていく。新しい始まりであり日常。うまくやっていけるかな。どんな日も積み重ねていけるかな。明日も風、光っているかな。


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