あの日、車の窓をあけはなって髪の毛を風になびかせていた、夜逃げでハイになってきらきらと笑っているママは綺麗だった。美しいものをたくさん集めて、ポケットに入れて、こぼれるほど意地汚くぱんぱんに詰め込んで死んでいきたいと私は思っていた。それだけがこの不自由な人類にゆるされた尊厳。

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