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Context Design #1

① Context Designという概念

これまで主にインクルーシブデザイン(プロダクト中心)に向き合ってきた私が、新たな修行先をみつけ(勝手に弟子入り気分)、SFCの卒業生であるTakramの渡邊康太郎さんの元でコンテクストデザインを学んでいます。

インクルーシブデザインという"排除しないプロセスのデザイン"を実践していく中で、私が全く異なる言葉で表現してきた概念や想いを含むものごとを、渡邊さんは私が使ったことない言葉で表現していて。「あ、そんな伝え方もあったんか!」が渡邊さんに初めてお会いした時の印象でした。

コンテクストデザインは弱い文脈の礼賛という側面を持つ。結果的に使い手に委ねられる部分が多々ある。解釈を委ね、使い方を委ねる。使い手に主体性をもってもらいたい。つくることの一部すらも、使い手に委ねる行為と言ってもいい。ただしこれはデザイナー自身のつくる行為を放棄することとは異なる。よいコンテクストデザインには弱い文脈と強い文脈の釣り合いが生じるはずだ。当然、強い文脈は介在する。正確なデザイン無くしては、有効な補助線無くしては弱い文脈は花開かないからだ。弱い文脈の発露が容易になるように、つまり何のためらいもなく自らの解釈を人が抱き交換できるように、デザインはなされるべきだ。(https://note.mu/waternavy/n/nba719b704057)

②私なりのContext Designへの解釈と誤読

これまでの私は、インクルーシブデザインを人に伝える時「エクストリームユーザー(クリティカルユーザー)と共に、時に彼らの生活に入り込んでデザインを進めていき、メインストリームにも広げていける普遍的なデザインをする。」「エクストリームへの理解からメインストリームのイノベーションを可能にするデザイン」このようにある種、分類をし対象を分けて考えていたり、抽象度の高い表現を用いることが多いです。(カタカナが多くてわかりません。が、私の母の最初の返答でしたが)

ただ、ユーザーからすると多くの人の場合、「デザイナーがどのようなエクストリームなニーズを汲み取って、かつ誰がデザインプロセスに参加して作られたもの」といった背景を知らずに多くのものを消費していると思います。勿論それらをみんなに知ってもらう必要はないし、認識せずに日常に溶け込み”すべての人が使いやすいデザイン”が溢れたらそれで十分ですが、ものづくりを進めながら「どこまで、どの人に、どのように伝えたら良いのかなあ」という問いにぶつかっていた私にとって、そもそも伝え方の強弱すらデザイン可能であり、それ自体が持つ広さや深さを常にコントロールしつつメッセージを伝えていくという概念すら新発見でした。同時に、これをすることによって、これまでの取り組みを緩やかに広げられるかもしれないと勝手に確信しました。

インクルーシブデザインという社会彫刻・創作

「外的要因に定められたリミットの中で生活している人が消去法ではない選択ができる社会」を作りたい。そのためにデザイナーになって、インクルーシブデザインを実践し新たな〇〇づくりの文化をつくりたい。これが17歳の私が掲げた志です。(SFCを目指したきっかけでもあります)
脳性麻痺という障害をもつ友人と過ごしてきた人生の中で、日々彼らのように特別なニーズを持つ人が「〇〇なら使える、ここなら唯一行ける」といった消去法や妥協の意思決定をしている毎日に憤りを感じていて、彼らを取り巻く社会側の障害をどうにかしたかったんですね。(ものも、服も、場所も、制度もすべて)これは今も変わらず、どうにかしたいし、このための社会彫刻や創作に自分の人生をゆっくりじっくり費やしたいなと思っています。志は常にアップデートされていくと思いますが、ここ3年は色々言葉を変えつつもこの辺を行ったり来たりしています。

◉これまではこのテーマに基づいて、
・建築(SBCの設計・建築)
・日用品のデザインワークショップ(定期開催)
・服作り(おさがりのデザインや、ファッションショーの開催)
・由比ヶ浜の波打ち際のデザイン
・90歳ヒアリング(エスノグラフィ)
発達ナビ(ポータルサイト)の立ち上げなど
のプロジェクトを実践してきました。今度ちゃんと紹介します。

④これから挑戦したい、コンテクストデザイン的提案

1. 24h Inclusive Design Challenge
2008年にNorwegian Design Councilがインクルーシブデザインという概念の生みの親であるイギリスのRoyal College of Artと共に開催した「24h Inclusive Design Challenge」のようなhack-a-thonに近い空間や熱狂をオフラインで作りたいです。
イギリスや北欧を中心に、既述したようなインクルーシブデザインの取り組みはここ数年で大きく広がっています。これらは政府や大学教育の方針の影響も大きいが、このような思想を最大化させ文化として根付かせていく変遷にこのようなコンペ形式のイベントを一つ大きな影響を及ぼしたと思います。これを実践することは、強い文脈としてこういった背景を持ち、参加したデザイナーの今後のデザイナーとしての活動や、そこで作られたプロトタイプとユーザーの今後の生活から新たなストーリーや解釈が生まれ、弱い文脈としても紡がれていけばなあと思っています。

ちなみに現在私が共同代表を勤めている一般社団法人「Slush Tokyo」では、一年に一度姉妹イベントとしてJunction Tokyoという世界中から集まったエンジニア150人がランダムにチームを組み2日間でプロダクトを作り上げるというhack-a-thonイベントを毎年開催しています。育った環境が異なるエンジニアが世界中から集まることで、生まれるプロダクトの背景や問題意識も毎回多種多様です。ここに、実際にエクストリームユーザーを招いたことはなかったので、アップデートとしてその要素を追加することもしてみたいです。

2. おさがりのデザイン
不易流行という言葉が好きです。これは、俳聖・松尾芭蕉が「奥の細道」の旅の中で見出した蕉風俳諧の理念の一つで


俳諧には不易(永遠に変わらぬ本質的な感動)と流行(ときどき新味を求めて移り変わるもの)とがあるが、不易の中に流行を取り入れていくことが不易の本質であり、また、そのようにして流行が永遠性を獲得したものが不易であるから、不易と流行は同一であると考えるのが俳諧の根幹である、とする考え方。(https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E4%B8%8D%E6%98%93%E6%B5%81%E8%A1%8C/)


80歳の祖母がこれまで着ていた服を、20着ほど21歳の私が着ています。
コートもニットもシャツもスカートも、スーツもセットアップもデザイン性も品質もとっても良くて今も綺麗に残っています。これらは、ただ古着屋さんやメルカリで見つけたものや、高級ブランド品、流行のものを身につけているときとは全く異なるものとして、私は認識しているし、身につけているとき単純に謎の高揚感に包まれます。
半年に一回実家に帰省するたびに、タンスは四次元ポケットなのか?というくらいに服を引っ張り出しては「これあの人の結婚式パーティの時は着こなしてたのにねえ〜今じゃ引きずっちゃうわ、背が縮んだんのね」といって私に思い出ごと渡してくれます。
一方で、母は自分のために全くお金を使わないので、安くて流行が変わったら捨ててもいいようなファストファッションばかりを選びます。祖母も想定していなかったと思いますが、「いつか娘や孫に渡す日が来るかもしれない」と思い浮かべながら買い物をしたらきっと彼女の選択も変わるのかなあと、対照的な祖母と母を見てふと思う時があります。

また、6歳と4歳の姉妹がいるお母さんと一緒に服作りをした時、「お姉ちゃんがリウマチのため肩が上がらず、服を切ったり、前明きの服しか着れなく、妹がそれを着たがらないし、おそろいができない。友達の子にもおさがりを中々あげられない」というニーズを持っていました。腕をあげなくても着れるワンピースを作って、姉妹が2人ともおさがりやおそろいできる服作りをしたのですが、お母さんにとっては子供服は1着1着に思い入れがあるので、子供が大きくなっても、巾着やポーチにして使いたいと言っていました。
今では誰もがものづくりができて、それを世界中の人が売買できる時代だからこそ、リプレイスできないストーリーが紐づいているものが年代を問わず大切に受け継がれていくことへのロマンをデザインすることに興味があります。

⑤ [おまけ]私がインスピレーションを受けた人

●1997年:父
父がインテリアデザインや内装のデザインを自営業でやっています。家と事務所が一体化してたので、小さい頃からその仕事風景をいつも見ていました。前の家も、今の家も、祖父母の家も、父がみんなの生活を理解した上で作りました。「こんなのがいい!」を叶えてくれた父の影響は大きいなあと思います。

●2015年:ライラカセムさん
インクルーシブデザインという発想を作ったうちの1人でもあるジュリアカセムさんの娘さんである彼女に高校2年生のときにお会いしました。安倍明恵夫人が開催していたUZUの学校の参加者で、たまたまデザイナー(スピーカー)として来ていた彼女のお弁当を渡しにいったのがきっかけで、私のお話しを聞いてくださり、「インクルーシブデザインっていうのがあるよ。教えたりしたくないからさ、やってみたらいいよとりあえず」と言ってくれたのが彼女です。

●2015年:太刀川英輔さん(NOSIGNER)
色々な人に、当時のモヤモヤをぶつけていく中で、先輩が紹介してくださったデザイナーの太刀川さんです。入試の時も、今でも一番尊敬するデザイナーは?と聞かれたら彼の名前を勝手に答えています。院の授業で進化思考を教えていて、先日も潜ってきました。(↓高校生の時のmessengerでの会話)この記事の表紙にもありますが、私はまだ自分の言葉でデザインを定義できていないので、彼の言葉「デザインは言葉だよ。伝えるつもりで作るといい。相手を考えて。」を咀嚼しつついつも心の中に忘れないように持っています。

長くなるので「もの」シリーズは次回...


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