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『シン・ニホン』を読んで、私たちは何をするか?

今このタイミングで『シン・ニホン』という素晴らしい本に出会えたことに感謝しています。私の今の想いを、ここに綴っておきます。

3つの多角的な視点で、「日本」を見る

『シン・ニホン』を読んで、私たち一人ひとりが未来を作る人なのだと気がついた。「日本」を多角的に捉えることができた。この多角的視点のお陰で、一言で言うと、日本に危機感と希望を持った。私は日本に住んでいながら、自分の周りの範囲しか関心が向いていなかった、視点がいかに狭く、その数も少なかったかを痛感した。

この多角的視点には、3つある。

1. 歴史をさかのぼる視点、海外からの視点
2. 客観、主観の両方の視点
3. マクロ、ミクロの両方の視点

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「川を上り、海を渡る」という言葉があるが、1つ目の歴史をさかのぼる視点と、海外からの視点が大切である。

歴史の視点では、日本にとっての直近15年は「一人負けを続けた15年」と表現されている。GDPの成長では世界的にアップトレンドのなか、日本だけが伸ばせていない状態。ほぼ全ての産業で、生産性が低いままで、やるべきことをやっていない。日本の生産性がここまで低い認識がなかったので、衝撃のデータの連続だった。

たしかに15年前に海外に行くと、「日本と言えば、トヨタだよね、ソニーだよね」と外国人から声をかけられたものだが、近年では外国人から企業名や製品名、サービス名を語られることはほぼ無くなってしまった。

海外からの視点では、日本は「AI x データ時代」の新しいマーケットに全く参入できておらず、一人負けをしてしまっている事実を突きつけられた。30年前と現在の企業価値世界ランキングの比較データをよく目にすることはあったが、それ以外のデータを見ても一人負けをしている。

ただ歴史的に見ると、日本は第2、第3の波に乗ることができる国である。出口産業もある。伸びしろが大きい。夢を描き、人づくり、リソース配分の見直しを含めて、やることをやれば、日本はもう一度立ち上がれる。

2つ目に、客観、主観の両方の視点を持つこと。特に客観的なデータを、単に公開されているデータそのままではなく、著者の安宅さんご自身で深く分析されたデータが多数公開されているのが圧巻である。

たとえば、日本が科学技術分野で圧倒的に遅れている実態が描かれている。理系人材の不足、AI関連の論文数の少なさ、そして大学はグローバルでのプレゼンスも低く、学費も高い。日本の若者は十分なお金が無いと大学の進学や、博士号の取得が難しいという実態だ。

国家予算の分析では、科学技術予算と若者への投資が、圧倒的に少ないことが浮き彫りとなっている。高齢化が進む日本で、未来を創るために若者への投資に、どのようにリソース配分をしていくかが課題だ。

このような客観的なデータの分析に留まらない。浮き彫りになった課題に対し提言が主観的にまとめられている。人づくりの観点では、未来を創る「AI x データ」人材を育てるために、リテラシー層、専門家層、リーダー層の3層で考えること。

その育成のためのポイントや、国語力・数学力の再構築、初等/中等教育の刷新と合わせて、技術・エンジニア層、ミドルマネジメントの再育成まで具体策を書かれている。
リソース配分では、若者に投資する国に変わるために、国家予算の3%程度を基金にする案が提言されている。

3つ目に、マクロとミクロの両方の視点を行き来することの大切さも知った。自分が所属するコミュニティとして考えると、「地球」から「家族」まである。国家レベルや地球レベルの課題は、ミクロな視点で自分の生活に落とし込むのは難しい。

本書では現在の日本の予算配分を、家庭で置き換え、祖父母は贅沢な食事を食べているのに、子供はメザシさえも与えられていないという喩えは、衝撃だった。何とかしないといけないと、強烈な危機感が芽生えた。この事実には全国民が目を向けるべきだと思う。

このように多角的な視点を得て本書を読み進めると、日本に対する「絶望」が「希望」に変わった。日本が様々視点から語られることで、「伸びしろ」をクリアにイメージできたからだ。客観的にファクトを知って絶望に浸るのではなく、危機感と同時に、希望を持つこと。これが、まず第一歩だと思う。

私たち一人ひとりが、今すぐアクションを仕掛けることで、未来はより良くなる。このように希望を持つと、たとえ自分が置かれている環境が変わらなくても、一気に世界が明るく見える。それまで白黒だったものが、一気にカラフルになるような感覚だ。

でも、どうしても自分の身近なことしか「自分ごと」として考えられない感覚は残る。これら3つの視点に加えて、自分と違う領域の人や、違う考え方を持っている人との接点、つながりを持つことで、自分の視点をその分多くできるのではないだろうか。

この本も、自分が大学の教員だったら? 自分が高校生だったら? と、色んな視点で読み直すと、また違う発想が生まれる。これまで自分が見れていなかった角度から、日本を見ること、そして自分でアクションを仕掛けていくことで、その視点はさらに広くなり、希望も大きくなるに違いない。

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まとめ:
・歴史をさかのぼる、海外からの視点を持つ
・客観的、主観的な視点を持つ
・マクロ、ミクロの視点を持つ
自分の視点を増やす、広げる意味で、
・自分と違う領域の人、違う考え方を持っている人とのつながりを持つ
・とにかく自分でアクションを仕掛ける

「共育」共に学び合う社会で、一人ひとりの才能を解き放つ

では、『シン・ニホン』で提唱されている「AI-readyな社会」を創るために、私たちは何をすればいいのだろうか。現状の課題を整理すると、人口が減少しているので、労働量ではGDP(付加価値)は大きく増えない。一方で変化を起こす力は、「AI x データ」によって、大きくなっている。

この状況で、新しい価値を生み出すには、すでにあるものを大量生産するのではなく、0から1を生み出す「創造」や、AからBに「刷新」することが大切になる。そのためには「異人」が必要になると、この本は提唱している。

「異人」とは、人とは異なる道を進む人であり、夢をカタチにする力、妄想力、そして色んな領域や人をつなぐ力がある。

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『シン・ニホン』をもとにイラスト化

「異人」を生み出すためには、「脱マシンな教育」が必要になる。なぜなら、マシン型教育は、「前へならえ」方式で、はめ込み型であり、人と同じことをすることが求められる。

この教育だと、子どもの時に持っていた「妄想力」はどんどん失われ、人と異なることはできなくなってしまう。AI技術の発展により、誰ももができることは、キカイの方が得意になる。

つまり、人がやるべきことは、AIをうまく使い、自分が生み出した妄想を実現させることである。そのためには人が本来持っている力を解き放つことだ。

「教育」というと、どうしても子どもや若者向けと言うイメージを持ってしまう。学校の先生が、生徒に教えるという構図をイメージする。でも、それだけでもない。子どもや若者だけではなく、すべての人が才能を解き放つことで社会はより良くなるし、そのためには学び続けることが大切になる。

そのためには、先生が生徒に教えるという「教育」だけでなく、教える・教わるが循環して、共に学び合う「共育」の考え方を大切にしたい。循環することで、先生の数は格段に増える。

例えば、この本で強調されている「妄想力」は、3歳児が最強だと思われる。言葉を話せる3歳くらいの年齢になると、「なぜ、なぜ」攻撃が始まり、あらゆる妄想が始まる。私の息子は、家のなかを自分の創りたい動物園にしてみたり、道端の水たまりでさえも遊び場にする。子供から大人が学ぶことは多い。

学校で学ぶ「教育」だけじゃない「共育」の概念で、子供、若者、シニアなど世代や性別、人種なども超えて、誰もが学びたいときに、学びたいことを、共に学び合うことができる社会にしていきたい。

日本の未来を創るのは、私たち一人ひとりだ。

この本では「埋もれたままの3つの才能」として女性、若者、シニア層が取り上げられているが、私が特に興味があるのは「女性」そして「母親」だ。
日本にあるジェンダーギャップは、リーダー層に女性が少ないことや男性と女性の賃金格差が大きいことが起因となって、特にシングルマザーの貧困は社会課題となっている。

これらを解決しないと、貧困の再生産が生まれ、子どもの学ぶ機会にも影響し、教育格差につながってしまう。親の意識も、子どもの育ちに大きく影響する。

埋もれたままの才能を解き放つために、まず、それぞれの「違い」を大切にすべきだと思う。日本では、これまで「違い」は良くないものとされる空気があったが、そうではなく「違い」を面白がる空気をどうすれば作れるか、これは引き続き考えていきたいテーマとなった。

まず、私はコミュニティを創って、その中で社会実験を始めた。個人それぞれの「違い」が、学び合いによって、認められ磨かれ、夢がカタチになるような仕組みづくりと活動を継続していきたい。

まとめ:
・共に学び合う「共育」の考え方を大切にする
・人それぞれの「違い」を大切にする
・埋もれたままの才能(女性、母親)の才能を解き放つための仕組みづくり、活動をする

夢を共創しよう

危機感と希望を持つことが第一歩と書いたが、それだけでは未来は創れない。この本では、未来を創るには妄想して、夢を描き、表現し、領域を超えたモノや人をつなぎデザインすることが求められるという。私はこれを「夢を共創する」ことだと思った。

未来を創るには、あらゆる視点を持ち、共に学び合い、パーソナルミッションとも呼べる「自分の夢」を具体化していく。それを表現することで、仲間が増えて、夢が共創されていく。

どんなコミュニティにも、起爆人種、参画人種、応援人種、批判人種、無関心人種の5つがいる。
夢を共創するには、自分がどのコミュニティで、どの人種の役割を担っていくか。何れにしても人としての「チャーム」さが大切になる。

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『シン・ニホン』をもとにイラスト化

日々の行動では、インプット中心な「スポンジ力」より、アウトプット中心な「気づき力」を養うこと。これによって、AIには無くて人が本来持っている「知覚」が鍛えられ、夢は磨かれていく。

アウトプットしていくことで、新しい仲間が見つかったり、周りからのフィードバックを得たりし、夢はますます共創されていく。

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『シン・ニホン』をもとにイラスト化

『シン・ニホン』を読んで、私たち一人ひとりが、未来を創る人間なんだと改めて認識した。この本を読み、どう解釈をして、どう行動するかは、すべて一人ひとりに委ねられている。

最後に、『シン・ニホン』より大好きな言葉を引用して、締めくくりたい。

「どんなことを仕掛けたら未来を変えられるのか。それを考え、仕掛けていくのはとても楽しい。一人ひとりがヒーローになり得る時代なのだ。
僕らは少しでもましになる未来を描き、バトンを次世代に渡していくべきだ。
もうそろそろ、人に未来を聞くのはやめよう。そしてどんな社会を僕らが作り、残すのか、考えて仕掛けていこう。未来は目指し、創るものだ。」

-『シン・ニホン』の「はじめに」より引用

さあ、みんなで、夢の共創をはじめませんか。


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