旅先で友達とメイクポーチを覗き見しあう、あの時間が恋しい
他人の化粧品というものに、ここ数年触れていない。
家族のスキンケアを借りたことはあっても、友人がどんな化粧品を使っているのか、目で見て知る機会がめっきり減ってしまった。
「皆で会いたいね。温泉卓球とかやりたい」
画面越しに「分かる」と頷き合う私たちは、もう10年の付き合いになる。
高校で3年間同じクラスだった女7人が、10年経った今でも月に一回は飲み会を開き、年に一度は旅行に行くという。こんなに仲の良い同級生というのも稀な関係ではないだろうか。
それぞれ、ファッションの傾向も趣味もバラバラ。だからこそ、久しぶりに会うといい刺激を貰えるのだ。
彼女たちと2泊3日の旅行に行くと、それぞれのスキンケアや身支度のいろはをシェアしあうことができる。これが楽しくて仕方ない。
フェイスパックだったり、流行カラーのポイントメイクアイテムだったり、気にはなっていたけれど自分では選び取らなかったものを、気軽に試す絶好の機会だ。
晴れの日のフリマみたいに気分が上がる。
他人のメイクポーチと身支度を見るのは、どうしてあんなにもドキドキするのだろう。
普段意識して見ることのない、友人たちの艶っぽい部分を知る。それぞれの人生を、それぞれに謳歌している感じが伝わってくる。
キャリーバックに詰め込まれたヘアアイロンや、メイクポーチのマスカラからにじみ出てくるのだ。
みんなそれぞれに、人生を楽しんでいる。
職場を新しくしたり、キャリアアップしたり。住む場所も環境も、すべてが違っていても、10年前の友情は変わらない。
検索力を駆使した情報収集よりも、ずっとずっと、美容が身近で楽しくなる。それが、女7人温泉旅なのだ。
テーブルを共有しあいながら、7人分のメイクポーチが広げられた光景は圧巻である。
部屋の四隅にある電源コード周りには、必ず誰かのヘアアイロンが温められていて、「前髪巻きたい、ちょっと貸りてもいい?」と必ず誰かが訊ねる。
観光地の思い出と同じくらい、大部屋で過ごす時間もたまらなく好きだ。最後に全員で旅行をしたのは、もう何年前だろうか。
今日までの間、コロナ禍を経て、私自身はヘアスタイルも化粧品もまるっきり変化した。
みんなはどうだろう。
ライフスタイルや生活習慣、心身の変化に伴って、メイクポーチの中身もアップデートされただろうか。
この春、友人に会う歓びと、美しくありたいという素朴な願いを叶えるために、今年こそ、女7人の温泉旅行に行きたくて我慢ならないのである。
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