鬼滅の刃に見る「時間」の感覚。
流行ってますね、鬼滅の刃。
連載していた週刊少年ジャンプでは5月18日発売号にて最終回を迎えたようですが、まだこれから映画の公開を控えていたり周囲の熱狂ぶりを見ていると、まだしばらくブームは続きそうです。
我が家でも友人から借りた単行本を読んだり、Amazonプライムでアニメを見たりで、娘たちがどハマりしておりますが、私は今発売されている20巻までをつい一週間ほど前に初めて読みました。今月娘の誕生日があり、そのプレゼントとして全巻購入したのですが、ほぼほぼ自分が読むために買ったようなものです。
読んで思った感想は、
「展開はやっ!」
ということ。
言ってしまえば、登場人物に感情移入する暇がないし、余韻を感じる時間がない。なんなら1話で半年とか2年とかサラッと過ぎちゃう。
これは鬼滅の刃に限ったことではなく、最近流行ってる漫画、例えば約束のネバーランドなんかも展開早いなぁと思います。
もちろんおもしろいですよ。キャラクターもそれぞれ個性的ですし。登場人物が発する言葉には時折深いものを感じますし、彼らが置かれている境遇には現代社会への問題提起も含んでるように思います。
しかしなんだろう、私がこれまで読んできた漫画のスピード感と比較すると、5巻くらいかかるストーリーが1巻で終わっちゃうんです。
私が長年読んでる漫画に「ONE PEACE」と「アフロ田中シリーズ」があります。
①ONE PEACE の場合
連載が始まったのは23年前の1997年。読み始めた頃は中学生だった私も、大学を卒業し、就職し、結婚し、今では娘3人の母親です。その確実に過ぎていった23年の間、ルフィはずっと仲間と宝を探し続けてます。一体いつまで探すねーーーーん!と突っ込みたいところですが、この23年、何度大笑いし、何度号泣したか分かりません。23年間を彼らと共に歩み、陰ながら見守ってきた私は、もはや乗組員の一人と言っても過言ではありません。
ここまでの思いがあるのは、ストーリーの緻密さはもちろんですが、長い年月をかけて彼らの人生を垣間見ることで、どっぷりと感情移入しているからでしょう。
②アフロ田中シリーズ の場合
連載が始まったのは19年前の2001年。ドラマ化や映画化もされた漫画ですが、このシリーズは「高校アフロ田中」に始まり、「中退アフロ田中」「上京アフロ田中」「さすらいアフロ田中」「しあわせアフロ田中」と各10巻ずつ続いており、現在は「結婚アフロ田中」が連載中です。
タイトルからも分かる通り、「田中」という主人公が高校生の頃から、高校を中退し、上京し、さすらったり幸せを感じたりしながら結婚に至るまでの19年間を私も共に過ごしているのです。もはや彼はバカな友人の一人です。結婚すれば嬉しいし、子どもが生まれればめでたいなぁと心から感じます。
私がこれまで読んできた漫画は、登場人物の過ごしてきた時間や関わった人たちをじっくりと知ることができ、感情移入する時間がたっぷりとありました。それらの感覚と比較すると、近頃話題になる漫画はあっという間のスピードで、私は彼らの仲間にも友人にもなる時間がないように思うのです。
ここで、ゆっくり8秒数えてください。
どう感じましたか?
8秒というのは、インターネットで一度クリックしてから次のページが表示されるまでに、人間が待てる時間の限界とされています。
クリックしても8秒以内に次のページが表示されなければ、イライラしてページを移動してしまう。そんな日常を現代人は過ごしています。
それが当たり前で育ってきた今の子の感覚では、鬼滅の刃や約束のネバーランドのスピード感というのは普通で、むしろそのくらい展開が早くないと飽きてしまうのかもしれません。
鬼滅の刃が爆発的に流行し、読んで感じたのはそんな時代によるスピード感の変化と、「今の子は」と言うくらいには私も年を取ったんだなぁということでした。
余談ですが、鬼滅の刃が流行った要因にアニメの影響は大きいようです。インターネットの有料チャンネルで見ることができますが、1話目の降り積もる雪と、そこに滴り落ちる血の表現だけでも、その映像の美しさには引き込まれるものがあり、日本のアニメ技術の進化を感じさせる作品でした。
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