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Workin' Hard所感──盛り上がった自分の呟きをまとめるなど

 藤井 風「Workin' Hard」がリリースされて約1か月、そろそろ自分のつらつら呟いたあれこれをまとめながら何か書いておこうと思うなどした。

 ストンプ(Queen「We Will Rock You」のように足を踏み鳴らすアレ)が最高に似合う、だがこれまでのスポーツ応援ソング群とは明らかに一線を画するタイアップ曲となった「Workin' Hard」、当初Tik Tokで部分的に公開された音源からしてもう異質だった。勿論、いい意味で。

 この時点では若干高揚感に富んだ展開への含みを残してツイートしているが、終始低音域を活かしたつくりには、正直喝采した。
 あの艶のある低音が太いリズムとあいまって、新しい扉を開いたのが実に斬新。

 以下リリース後の高速オタク語りのような独り言ツイート群を引用で羅列。

 ここ最近個人的に気になっているのが、まさに太いリズムと土着的な音。さらに言うならば、初期衝動やルーツを色濃く感じさせるサウンド。

 近年シティポップリバイバルとニコニコ/ボカロ世代の目覚ましい台頭が潮流としてあり、こと泥臭さの色濃く香るサウンドはメインストリームから若干外れがちだったように感じている。
 だが、藤井 風という人は方言すらもひとつの表現として自然に織り込みながら、Yaffleプロデュースもあり圧倒的クオリティをもってド真ん中に走り出た。シーンやトレンドとは脈絡なくあらわれたからこそ、与える衝撃の度合いもより強かったのだとわたしは考えている。

 その藤井 風が2ndアルバムで洗練の色を増しながら、シンプルかつ熱量のかたまりのような「燃えよ」や和洋折衷グルーヴの権化「まつり」を発表し、いままたルーツミュージックのそのまたルーツまでをも強く感じさせるような「Workin' Hard」をリリースしたことがとても面白い。

 MVなど完全に労働歌仕様だ。タイアップのバスケットボール、バスケと密接なブラックカルチャー、そこから生まれたヒップホップ文化、ジャズそしてブルース、さらにその源流へ。
 映像の舞台は台湾だが、違う空の下でも「みんなめっちゃよーやるわ」は共通だ。
 日が当たろうが当たるまいがどこに住もうが働こうが、賃金が幾らだろうが発生しない家事だろうが、頑張っているすべての人への応援歌。エンパワーメントとしてこれほどにパワフルな楽曲がテーマソングというのは、どう書いたらよいのか見当がつかないが、ともかく筋が通っていたようにわたしは思う。

 すべてのスポーツには結果があるが、結果に至るまでには知られざる努力が積み重ねられている。たとえばバスケットボール男子は順位決定戦の最終戦で勝利し、アジア1位でオリンピックへの道を掴んだ。バレーボール女子は健闘したが今大会での出場権獲得とはならなかった。しかしながら、観客は眩い結果や評価ばかりを追うのではなく、変わらずにスポーツの素晴らしさをつぶさに見て讃えることができるのだ。
 それは市井の日常生活にしても何ら変わらないだろう。「バスケのタイアップ」だが、「バスケの歌」ではない。「応援歌」だが結果を求めない。それがいい、とてもいいのだ。


なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」