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DSDC、渋谷を海にする

 渋谷WWWにてDeep Sea Diving Clubのライブを観た。このバンドはお気に入りで1stアルバム以前のリリース作品も愛聴しているが、生ははじめて。
 影響を受けた様々な音楽の素晴らしく素敵なところを惜しげもなく鍋に入れてぐつぐつ煮込んだ濃厚スープ、だが素材同士が喧嘩したり主張しすぎることなく「DSDC」という味にきちんとおさまる。非常にエモーショナルだが、緻密さもしっかりと見える。

 さて、思っていたよりも5倍くらい「ライブバンド」だなというのが率直な感想。とにかくライブ演奏が格好いい。
 各パートも、纏まりもいい。vo.谷颯太の高低緩急自在な歌、Dr.出原昌平とBa.鳥飼悟志が織りなすグルーヴィーなリズム、Gt. 大井隆寛のMCからは想像もつかない雄弁なプレイ。2人のサポートキーボードも「花を添える」のではなく、「一緒に大輪の花を咲かせて」いた。
 同期なしの人力スタイルとそれを選択した心意気が、フランクに言うならば最高にテクいしエモい。

 思わずニヤリとするような粋なアレンジ、時にレイドバックをゴリゴリに効かせたチルムード、会場の一体感をオーディエンスの動きで作り出すのではなく音でふんわり包むような心地良さ。
 思い思いに揺れるフロアはクラゲの群れのようで、まさしくDeep SeaにDivingした感があった。年齢層は20代が中心かと思われるが、わりと幅が広めな印象。
 先日のKan Sanoのライブがそうだったように「こりゃガチの音楽好きが集まってるなあ」という感じが強い。所謂タン・タンの手拍子ではないクラップへの対応速度が速いのだ。記憶が確かならば、3-2のソン・クラーベ。
 これは以前サルサの大御所オルケスタ・デ・ラ・ルスを観た時にも思ったことだが、クラップの上手い聴衆(=耳の肥えた人たち)が支持層にいるのは強いだろう。音楽そのものが価値基準になっている人は、流行りで簡単にうつろったりしないはずだ。

 メンバー全員が曲を書ける、さらに楽曲の中にしっかりオリジナリティと旨味があるというのはDSDCの良さ。今後ぐんぐん動員が伸びていくといい。このような距離感はなくなるのだが、そうあってほしい。
 音楽好きは、ハコの規模が同程度でチケットが取れる今のうちに観ておくといいのではないだろうか。

 いま勢いのある彼らのよきライブ、ご馳走様。いい潜水だった、とても。
 

(敬称略)

【追記】セットリスト
※feat.表記の楽曲にゲストなし
SARABA
Just Dance feat. kiki vivi lily
SUNSET CHEEKS feat. Michael Kaneko
in E-inst
Happy Feet
おやすみDaydream
しじま
sunselco
フラッシュバック'82 feat Rin音
cinematiclove
FLACTAL
lostpeople
Interlude(for Early Summer)
T.G.I.F.(A LONG VACATION)
ランデブー
[encore]
CITY FLIGHT


なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」