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unique たったひとつの

 まず、セルフ引用をしたいと思う。

 6月はじめ。

スレッズより(身近な人の死に際して)

 6月5日。

 わたしの身近な人が、この10年で何人も、平均寿命から程遠くして亡くなった。
 がんがいちばん多い。中には稀少がんの人もいた。自分には何もできなくて、弱っていくところをつぶさに見続けるだけの強さもなくて、無力で無為だなと何度も思った。

 人命を助けたことも何度もある。でも失われた人が帰ってくるわけではない。

 ある日、ふと気付いたことがある。かたちはなくとも残してくれたものはあるし、一見みんな忘れたようでも折々に思い出しては、欠片を眺めて記憶に揺れる時間を過ごすのだろうと。
 それに声や表情が薄れてもなお、記憶を残すことはできる。文字に変えたり語りあうことで。

 そんなこんなで、プライバシーや表現に悩みながら幾つかnoteを書いた。記憶すら失って亡くなっていった人のことも、その一部分をわたしが記録すればいい。それがたとえ、他人から見たら違う色をしていたとしてもそれでいい。

 この曲を聴いて身近な人たちの記憶と同時に、生でその歌を聴きたかった早世のボーカリストを思い出していた。

 6月15日深夜。
 14日夜のライブで、やはりそのボーカリストのことを受けて書かれた曲なのだとMCで明かされた。

 タイムカプセルのように思いがつまっていると、こんなふうに伝わっていくのだな。

 折しも別のフォロワーさんが御尊父を亡くし、胸のつまるような素晴らしい追悼文を公開した。
 作り出すこと、残すこと、遺されたものを繋いでいくこと。自分の中に誰かのかけらを抱えて生きていくこと。目に見えるものの中に、目に見えない誰かの輪郭や残像を見いだしていくこと。

 作り手の意図とはぴったり重ならなくても大切なものを受け取った気がしている。
 いい曲だし、いいサウンド、いい歌詞だと思う。心から。



なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」