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「カラーガールじゃないし」

 そういえば、小さくて細くて頼りないあの頃のわたしは、通知表に「周回遅れ」と書かれたものだったな。
 じわじわと悲しみが追いついてきて、まさかの「君は天然色」で泣けてきた。さっぱり意味がわからない。いやわかるけれど、わからない。
 

 今回の選挙も、不偏不党を貫く身として、色々と考えて票を投じた。ただひとつ、いつもと違ったことがある。絶対にワンイシューでは揺らがない、という自分の中の決まりを外した。
 
 騙されて命を縮めてしまう人は減っていってほしい。願わくばそういうことのない世の中であってほしい。そんな気持ちで、トンデモ医療をなくしたいという候補に票を投じたのだ。
 その候補のやり方すべてをよいと思っているわけではない。些か強引な手法でインチキを暴いているのも、そうせねば何事も表面化しない事情をわかった上で、リスキーだなとは思っていた。対立の構図は目を引く分、反発を生むのではないかとも思っていた。
 ただ、もし国の真ん中で、そうした事情もろとも改善されるならば。そこまでに至らなくとも、一歩が刻まれるのなら。そう考えたのだ。
 
 現実、医学に反することを主張する人たちが選ばれて、トンデモ医療をなくしたい人が落ちるのだ、この国は。
 ・・・・・・溜め息が漏れた。
 
 
 勿論、政治はワンイシューでは語れない。様々な要素を十二分に読み解き勘案して選んでいく必要があるし、それぞれの選択が尊重されてこその民主主義だ。それは充分わかっている。
 だが、「似非医療が跋扈する現状の改善」というイシューが広く注目を集めず、得票には繋がらないというメッセージになってしまっていたら──これ、現状が暫くそのままになってしまうのではないのかと、つい考えてしまったのだ。
 悲観するのはよくない。わかってはいるのだ。だが感情が徐々に追いついて、わたしを追い越していく。トンデモのせいで命を落とした人、命を縮めた人が実際まわりにいるからこそ、同じ思いを誰にもしてほしくはない。誰にも。
 

 聴く音楽を慎重に選んで大瀧詠一にしたはずだったのに、初っ端の「君は天然色」でもう溢れてしまった。夢まくらとか言うなよ。しかも早送りした先が「夢で逢えたら」なんて、出来すぎた話だ。
 「馬鹿だなあ、俺はカラーガールじゃねえし」なんて、あの人は向こうでちょっとでも笑っていただろうか。やるせないな、まったく。
 
 
 
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なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」