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それはほんの少しのこと

時々、他愛もない会話の内容を思い出す。
あの方はこれが好きだったなあとか。あれを集めていらしたなあとか。

例えば、探し物をしていたら可愛らしいコレクタブルアイテムが出てきたとき。
今のわたしにはちょっと可愛らしすぎるけれど、あの方は欲しいかも知れない・・・・・・とか。
例えば、ノベルティで頂いたグッズを整理しているとき。
これはもっとちいさな方向け、そうだ、あの方のご家族に差し上げてはどうだろう・・・とか。

そんなことをふと思いながら、でも今ではないな、とそっと記憶しておく。

それはほんの少し、他愛もないこと。
他愛もないけれど、予定の立たない未来の話。

やがて大きく手を振ってお会いできたら、きっとお渡ししよう。
やがて物流がもっとスムーズになったら、きっとお送りしよう。
積もった土産話でも添えたらいい。

そうやってあちらこちらを慮りながら、未来に目を向けて種を植えること。
とてもちいさなこと。些細なこと。
ささやかな家の中のささやかな暮らしで、今のわたしにできること。

なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」