満ちてゆく overflowing

恋愛をテーマにしたら、もっと大きな愛に辿り着く。極めて藤井風さんらしく死生観を内包した、極めて美しい楽曲。賛美歌のようであり、人間への賛歌でもあるように感じた。

映画の主題歌として作られたMVは短編映画のよう。なんて美しい循環なんだろう。
映画のために試写を観て書き下ろされた曲のために短編映画のようなMVが生まれ、その曲がまた映画館で流れる。
映画を観て曲を知った人が、そこからこの短編に出会うかもしれない。同じ作り手から送り出された、ふたつのストーリー。

失った母は母親であり、great motherでもあるのかもしれない。豊穣の女神か、集合的無意識の中に存在する「母なるもの」か。愛の象徴。慈しむもの、包み込んでくれる存在の喪失と重ねる痛み。万物流転、どれほど願ってもすべては移ろい変わりゆく。

しかし人はかならず帰る。その道を辿り、少しずつ老い枯れては手放してゆくことによって、来し方と存在そのものの尊さを見いだして満ちてゆくのだろう。
アリストテレス曰わく、 愛というものは愛されることよりも、寧ろ愛することに存する。

なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」