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こんな時代を笑って生き抜くためにEテレを見たり公園に行ったりする私と息子の話

息子が生まれたことにより、日々Eテレの恩恵を受けている。朝の育児は夫に任せているので、私が見ているのは夕方の「いないいないばぁっ!」「おかあさんといっしょ」「みいつけた!」のあたり。気が向いたら録画しておいて、ご飯作りの間に見せている。

これらはそれぞれ「いないいないばぁっ!」が0~2歳、「おかあさんといっしょ」が2~4歳、「みいつけた!」が4~6歳が対象になっていて、0歳の息子はやはり「いないいないばぁっ!」が一番食いつきがいい。はるちゃんたちのやりとりも、間にはさまるミニアニメも歌も、飽きずにじっと見ている。あとはたとえば「ゴミをごみ箱に捨てる」ということがテーマの歌と一緒に、視聴者から投稿された動画が流れることがあるのだけど、映っている少しお兄さんお姉さんの様子も嬉しそうに見ている。
「おかあさんといっしょ」は歌や体操は見て、一緒に身体を揺らしたりして楽しんでいるけれど、シルエットクイズとかガラピコぷ~は気になったときに見るくらい。「みいつけた!」になるとほぼ興味がなさそうだ。
大人としては、そこまで違う? という感じもするのだが、ひとつひとつのコーナーの尺とか内容が対象に合わせて変えられているのは分かる。

私はそこまで手の込んだ料理をするわけではないので、フルで録画にお世話になることはあまりない。むしろ腹痛でどうしようもなくトイレにこもらなくてはいけないときの方ががっつり頼っているかもしれない。だから、普段は離乳食を用意した後冷ましながら一緒に見たり、ご飯のあとお風呂に入るまでの時間になんとなく流しながらゆったり遊んでいたりする。

大人の私の食いつきは、「おかあさんといっしょ」が一番。最初はあんまり興味をそそられなかったガラピコぷ~も結構熱心に見るようになってきた。なかでもお兄さんお姉さんたちが爽やかで全力で大好きだ。いつも輝くような笑顔で、時には変顔で、振り切った演技で、子どもたちに寄り添ってくれているのが分かる。あまりに全力なその姿を見ていて、私は時折きゅうっと胸の奥が引き絞られるような切なさを感じる。
きっと彼らは、これまでの歴代のお兄さんお姉さんたちを見てきて、憧れたり自分の夢を描いたりして、今あの場に立っているのだろう。私がEテレを見るようになったのは今年になってからだけれど、今のお兄さんお姉さんたちはいずれもコロナ禍前から活躍している。本当ならば、たくさんの子どもたちに囲まれて歌ったり踊ったり体操したりして、いろんな地域でコンサートをしていたはず。それを夢見ていたはず。
今は状況が許さないから、子どもと触れ合うにしてもごく限られた人数とになっていて、きっとそれは当初思い描いていた活躍とは違うはずだ。
彼らが今何を考えて、何を願ってテレビに出続けているのかは現時点で語られることはない。(この前誠お兄さんが文春に取材されていたけれど)でもそれぞれが本来とは違った形にはなってしまっても子どもたちを楽しませたい、笑顔にしたいと思って全力を出しているのではないかと感じる。テレビの向こうにいるはずの全国の子どもたち、自粛を強いられ思うように出歩けず、マスクを外した笑顔を見る機会も少ない子どもたちに、少しでも元気を届けられないかと。

実際、息子は家族以外の大人のマスクを外した顔を、生まれてこの方直接見たことがない。でもテレビ越しに笑顔のお兄さんお姉さんたちと日々会っていて、「元気~?」の声がけに息子なりに答えているようだ。そのことに親である私が一番ほっとしている。感謝してもしきれない。
いい? あなたのことをかわいがってくれる保育士さんや、スーパーや公園で声を掛けてくれる人たちは、マスクの下でこういう顔をしているんだよ、笑っているんだよ、と0歳の息子に語り掛けてみる。息子はなにやら感傷に浸っている母親などお構いなしで、おもちゃのブロックをかちかち鳴らしている。「ね、ニコニコ~、だよ!」と言うと、ああそれね、という感じでにこーっとしながら首を傾げて見せてくれた。そう、ちょっとしたコミュニケーションもとれるようになってきて、もうだんだんと赤ちゃんでもなくなっているのだ、来月には1歳になるのだし。
1年間、いや、彼がお腹の中にいた頃からずっと、私たちの生活はコロナによって制約を受けてきて、その中で一番削られてしまったのはたくさんの人との触れ合いだった。

今日、近所の公園に息子を連れてお散歩に行ったら、5歳くらいの男の子とお父さんが遊んでいた。息子は男の子を見かけるなりとても嬉しそうな声を出した。いつも乗せる赤ちゃん用のブランコに乗ってからは、身を乗り出して男の子の様子を見て、その子が走り回ったり、持っていたボールをポーンと投げたり転がっていくのを追い掛けたりする度に大きな声で笑った。もう大爆笑と言っていいほど、とても楽しそうに嬉しそうに笑うのだ。私はそれを見ながら、なんだか泣きそうになってしまった。微笑ましくて嬉しいのに、切なくて悔しくて歯がゆかった。
息子は以前から同じくらいの歳のお友達や少し年上のお兄さんたちが好きで、支援センターや子育て支援広場などではぐいぐい寄って行ったり笑ったりしていた。人見知りや場所見知りをせず、保育士さんやスタッフの方にも近寄ってつかまり立ちをしてよじ登ろうとするので、いろんな人に抱っこしてもらって嬉しそうに笑っていた。けれどここ1か月のコロナ感染者の増加で、私が怖がってしまってどこにも連れ出さずにいて、そうこうしているうちにもっと増えて支援センターも広場もしばらくお休みになってしまった。だからすっかり忘れていた。息子のこんなにも楽しそうな笑い声を。

家族といても基本はご機嫌に過ごしている息子だけれど、小さな子どもだから呼び起こせる何かがある。だから息子はあんなにも、テレビ画面に映る、日本のどこかにいる「お友達」に目を奪われるのだ。

私が息子のためにしてあげられることはたかが知れていて、息子が本当に望んでいることは叶えられていないのかもしれない。保育園に預けない選択をしたのだって私なのだし。来年度からは通わせて復職するつもりだったけれど、今の状況を見てなんだか怖くなってしまっているし。本当に毎日毎日を祈るように過ごしている。

「おかあさんといっしょ」やその他の番組は、私にとって、子どものためを思って何かしたいと思っている人に繋がっている窓だ。複雑な思いを各々抱えていても、子どもに健やかに育ってほしいという願いだけは決して脅かされない。こんな時代でも笑って生き抜いて、「ほんとあのときは大変だったけどさ、楽しいこともいっぱいあったよ」って、みんなで話したい。悲しくなったらそう考えることにしている。

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