ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ

「猫のイラストで爆発的な人気だった画家、ルイス・ウェインの生涯をベネディクト・カンバーバッチが演じる」
この宣伝文と、猫がたくさん出てくるPR動画を見ただけの事前情報で見にいった「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」。

映画『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』公式サイト (louis-wain.jp)

にゃんこと画家のハートフルなストーリーかと勝手に思っていたら、思いがけず心の深いところに刺さる映画だったのでnoteに書きました。

ベネディクト・カンバーバッチが演じたルイス・ウェインは、メンタルフィジカルともに不安定さを持って生きた人でした。妻とネコが支えていた、その生涯を追う映画だったんですが、ルイス・ウェインが口唇裂で生まれたことを明かすエピソードが序盤にさらっとありました。

ここだけ少し映画の内容に触れます。

ルイス・ウェインは普段、口唇裂を隠すために口ひげをのばしています。けれど、後に妻となるエミリーが肌着になっている瞬間を見てしまったルイス・ウェインは、自分も肌着になり、口ひげを剃って傷跡を見せ、「自分も裸になって謝る」と言いました。
うろ覚えなので違うところもあるかもしれません。

少し補足なんですが、口唇裂(こうしんれつ)は、うわくちびるがつながらず、割れたような状態で生まれてくる先天異常です。口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)は口蓋部分、あごも割れた状態です。日本人では4~500人にひとり生まれてくると言われていて、私もその一人です。
現代なら医療が進んでいて見た目にもわかりづらくなることが多いですが、この映画の舞台は第一次世界大戦の時代のため、外観にかなり影響があったはず、と映画のパンフレットにも書いてありました。

時代の影響なのか、主人公一家が貴族で体面を気にするからなのか、口ひげを剃ったルイス・ウェインを見て家族は「(口唇裂の跡を隠す)口ひげを剃るなんて!!」と吐き捨てるように言うんですね。
それほど口唇裂であること、もしくは外観に他の人と違う部分があることは問題視されるんだな、と感じたシーンでした。

エミリーに謝る場面に戻ります。
ルイス・ウェインは肌着で、口唇裂をさらした状態で立つけどエミリーは全然気づかないんです。
さらに一歩進み明るいところに出て、「すべてをさらして謝るよ」と伝えて口ひげを剃っていることをアピールしても気づかない。
ここで感じたのが、自分の顔は醜くくて、パッと見ただけで誰もが口元の障害に気が付くだろうと、私も悩みの最盛期には思ってました。
なのでこの表現すごいリアルに感じます。

おそらく勇気を振り絞ったルイス・ウェインを見て、エミリーは一言、「あなたはハンサムよ」と言うんです。
分かります。ベネディクト・カンバーバッチはハンサムですよね。すごい分かります。どこかミステリアスさがあって、異能の天才を演じさせたらドはまりする奥深さで、「シャーロック」の演技めちゃめちゃ良かったです。語りつくせないですよね。

いやでも分かります。口唇裂を再現するためにこの映画ではベネディクト・カンバーバッチはうわくちびるに傷跡があるんですが、なんだかそれが格好良く見えたんです。髪の毛がもじゃもじゃだったのもあって、ライオンみたいに。
それが心の不安を表すように体を揺らしておどおどしてる様子がすごく魅力的に見えた。

「イケメンは傷があっても格好良い」 ではなくて、「この魅力的な人を構成する要素の一つに口唇裂も含まれている」のがすごく良かった。
主人公は精神の病も持って生きていき、脳内映像もあるためその不安定さに引っ張られそうにもなるのだけど、それでもやっぱりベネディクト・カンバーバッチもルイス・ウェインも、生み出された猫のイラストも魅力的だった。

もっと良いシーン、もっと心に刺さったセリフはたくさんあったけど、それはやっぱり直接観て感じたほうが絶対感動するのでここまでにします。

最後に、この映画ぜひスクリーンに見に行くことをお勧めします。
猫推しなだけあって、見に来ている人たちもやっぱり猫好きが多いらしく、猫が出てくるだけであちこちから「ふふふ…」と声が聞こえてきます。
鳴こうものなら「あぁ…」とこらえきれない声が。もちろん小さい声でしたけど。みんな猫推し!の一体感があって非常に良かったです。

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