実家じまい-その3(手放した後のメンタル編)
終わった。
謂わゆる「家をひっくり返して揺すっても、何も出ない状態」になった。
(ひっくり返さないけどね…笑)
■最後に私の手元に残ったもの
畳についた重い座卓の足跡のへこみや、越してきたときから移動したことのなかったサイドボードの畳の色がこの家の歴史を物語る。
作業が終わる頃にやってきた弟と、がらーんとなった部屋を眺めて
「この家、こんなに広かったんだね・・」
「ここではいろいろあったよね・・」
と、ちょっぴり懐かしむ。
片づけ当日、土壇場で私が救出したものがある。
父と母の若かりし頃の写真数枚。
私のパネル(笑)
そして、母が書いた原稿。
スタッフの方が「これはどうしますか?」と確認してくれたのだ。
原稿用紙が入っていた袋には、優秀作品は本になるという懸賞の新聞記事もあった。
そこには、母がちょうどいまの私の歳のときの様子が綴られていた。
(どうして分かったかというと、そういうタイトルだったから^^;)
まさか娘に読まれるとは思ってなかっただろうけど、せっかくだから持ち帰って全部読んでみた。中身についてはここに詳しくは書かないが、そういう50代を送っていたのか・・と、思いがけず母の昔の心の中を覗くことになった。
そういえば、私が最初の本を出版したとき、いつになく母は嬉しそうだったと記憶している。自分が本を出すことを夢見ていたとはひとことも言わなかったけれど。
他にも、ちらしの裏やその辺のノートや手帳など、その時々の母の思っていたことや感じていたことがしたためられたものが見つかった。世が世なら、母はブログでも立ち上げて、読者を増やしていたかもしれない(笑)
こんなに書くのが好きな人だったのか、、、とちょっと驚いた。
ふむ・・・
もしプロの手を借りずに片づけていた途中で、こんな埋蔵物を発掘してしまったら、中々先に進めなくなるだろう(苦笑)
ドサクサな出来事で逆によかったように思う。
■レティング・ゴー 別れには勇気がいる
私は、片づけのプロを育成している団体の本部スタッフも務めていて、ライフオーガナイザーという資格も一応持っている(笑)
片づけの現場に出ることはまったくないけれど、それでも、実際の片づけ現場がどのように進んでいくのかは、門前の小僧的に詳しくなっている。
通常、家の片づけのゴールというのは、そこに住む人の使い勝手や生き方のプランが反映されて、必要なモノが必要な空間に「収められる」ことで整っていくことだ。
でも、もう住む人のいない家を片づけるというのは、そこに蓄えられていたものすべてを「旅立たせる」作業となる。
ライフオーガナイザーになりたての頃に読んだこの本。
著者である大塚さんは、日本ライフオーガナイザー協会の第1回目のカンファレンスでお目にかかったことがある。
ここに書かれている「レティング・ゴー」というコトバ。
愛着のあるモノや状況とサヨナラするのは簡単なことではない。
でも、現実的に考えれば、
持っていても使わない。
持ち帰っても置いておく場所がない。
思い出の品はすでにもう充分持っている。
だから、手放すことにした。
全部「旅立った」のだ。
実家じまいは、実家仕舞いであり、実家終い。
すべてが終わった。
■人生は頭と心をすり合わせながら織りなしていくのかも
冷静な判断とはうらはらに、心はなんだか落ち着かない部分もある。
頭で考えることと、胸に感じることにギャップがまったくないと言えば嘘になる。
心の声は、ちょっと寂しい。
いや、とっても寂しい・・と叫んでいる。
片づけが完了した清々しさの傍には、言葉にするのが難しい切なさが潜んでいた。
でもそれでいいのかも・・・と思っている、というのがあの片づけの日から2ヶ月が経った私の正直な心境だ。
私の場合は、こんな風に父母の遺品整理に向き合ったけれど、片づけに正解はない。
想い出との付き合い方にも正解はないだろう。
この実家じまいによって、母が亡くなったときよりも、母のことをとても深く考えている。もしかしたら生きていたときより、ずっと心の中に一緒にいるのかもしれない。
(着物のことだけじゃなくて、考えさせられる原稿とかメモとかが出てきたからでもあるけど…苦笑)
だから、私の体力のあるうちに、そして私の人生にまだまだ先があると思えるうちに、この実家の片づけに取り組んだことは、とっても意味のあることだった。
また時が経ったら違う思いが湧いてくるかもしれないけれど、母の人生のいろいろを「レッティング・ゴー」してあげられたことに感謝している。
彼女のドラマチックな人生については、また何かの機会があれば、私の持ちネタとして(笑)どこかで還元できればと思っている。乞うご期待♪
・・・ということで、長く綴ってきた実家じまいの報告としてはここで完結。
随分時間がかかってしまったけれど、最後までお読みいただいた皆様、ありがとうございました^^
私の唯一の後悔は、母が元気なうちに、いろんな思い出の品を一緒に手に取って振り返る時間を味わえたらよかったな・・・ということです。
間に合う方は、ぜひ悔いのない実家(親や兄妹)とのお付き合いを。
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