遺書No.573 悪魔組曲。~譲り合い~

※この記事の内容は、2004年7月6日から2009年7月5までの5年間毎日記録していた「遺書」の1ページを抜粋して転載したものです。

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2006.1.28
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本日、仕事で後楽園に移動する時に電車を使いました。
そしたら電車の中にある広告に、彼がいました。

ダイキンの空気清浄機で知られる、
きっと誰もが見たことがあるマスコットキャラ
「ぴちょんくん」ね。

そのぴちょんくんがね、なんと今年は、
「ロボぴちょんくん」にパワーUPですよ!!

・・・こいつぁすごいです。

「花粉を電撃パンチ」とかコピーつきですよっ!?

こいつぁやってくれそうですね!!(・∀・)ニヤ

花粉症に悩まされる人なら、
いくら 胡散臭そうでも期待しちゃいます。

ま、実際は花粉で苦しむ2ケ月後の自分が、
目に浮かびますけどね…


こんばんわ、みーくんです。


今日はね、例のヤツが前回意外にも好評だったからまた書いてみようと思う。

ネタでもジョークでもない、
全く意味もオチもない短編小説。
『悪魔組曲』シリーズね。


「譲り合い」


少年の心は弾んでいた。
今日は待ちに待った、
FSSの新刊が発売される日だったからだ。

学校から帰るなり、
肩から外した鞄をベッドの上に放り投げ、
数年前に祭りの露店でGETした無愛想な猫型の貯金箱を無造作にひっくり返すと、
申し訳なさげに飛び出した僅かな漱石氏を、
未練に気付かぬ振りして財布に詰め込みながら、
再び自転車に跨って走り出す。

向かう先は、地元で一番大きな本屋だ。
そして、道中の出来事だった・・・。


横断歩道を渡ろうとした時に、
前から老人が少年の方に、
やはり自転車をこいできた。

はやる気持ちを抑えるかもなく、
とにかく先を急いでいた少年だったが、
とりあえずここは、と、
老人に道を譲る為にスピードを落として、
右に避けた。

と、同時に、老人も同じ方向に自転車を避けた。


仕方なく少年がまた左に避けると、
老人もまた同じように避ける。

もう一度右に避けるが、
やはり老人も避ける。

段々いらいらしてきた少年は、
避けずに止まった。

しかし、老人もまた止まる。
もう一度左に避けてみるが、
やはり老人も同じように避ける。

三秒ほど均衡したのち、
少年はもう一度、右に避けた。
か、老人も避ける。


・・・。


少年は顔を引きつらせながら、
「どうぞ」と言ってみた。


老人はにっこり笑った。
が、自転車を進めようとはしない。
聞こえなかったのだろうか。


少年はもう一度、
今度は少し、さっきよりも大きな声で
「どうぞ」
と言って、自転車を左に避けた。

・・・老人はにこにこ笑いながら、
やはり同じ方向に避けた。


少年はもはや何も考えていなかった。


右に避ける。老人も右に避ける。
左に避ける。老人も左に避ける。
右に避ける。老人も右に避ける。
左に避ける。老人も左に避ける。
止まる。老人も止まる。

約5秒間硬直したあと、

少年はもう一度右に・・・


避けようとしたとき、


横から猛スピードで走ってきた大型トラックが
少年と老人を勢いよく跳ね飛ばした。



終わり。


ん?
オチ?
そんなもんないよ・・・

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2022.1.15
毎日遺書を書き始めた当時573日目の投稿内容。
悪魔組曲とか言って、こんなんばっか浮かんでた当時の自分の精神が怖くなるわw


過去のボクは昭和の固定観念や慣習に縛られ、自分や家族を苦しめていた事に気付きました。今は、同じ想いや苦しみを感じる人が少しでも減るように、拙い言葉ではありますが微力ながら、経験を通じた想いを社会に伝えていけたらと思っていますので、応援して頂けましたら嬉しいです。