あおいちゃんの人生2

あおいちゃんは日本の南のほうにある、とっても小さな町で生まれました。

まわりには山と田んぼと畑しかなく、電車は走っていない

ほんとうにほんとうに小さな町。

あおいちゃんにとってはこの町が世界のすべてでした。


あおいちゃんにはふたりのお姉ちゃんがいます。

3つ上のお姉ちゃんと、そのもう少し上の仏壇の中にいるお姉ちゃん。

仏壇のお姉ちゃんには会ったことがなくて

あおいちゃんが生まれた時から、仏壇の中にいました。


朝は家族におはようと言って、

それから、仏壇のお姉ちゃんにおはようと言って、

キティちゃんのマグカップにお水を入れて、仏壇に置くのが

あおいちゃんの日課でした。


お父さんは自動車の修理工場を営み、お母さんはその工場の経理を担当し、

幼稚園が夏休みに入ると、その工場があおいちゃんの遊び場でした。

あおいちゃんは、大きくてゴツゴツしたやさしいお父さんと

丸くておだやかなお母さんが大好きでした。

海にも山にも遊園地にも連れて行ってくれるし、大好きなぬいぐるみを買ってくれる。

あおいちゃんの家族はお金に困ることもなく、幸せな毎日を過ごしていました。


そんな家族の幸せな時間が、少しずつ色あせていくのに

あおいちゃんはうすうす気づいていました。

少しずつ、家族が壊れていくのを、まるで他人事のように感じていました。



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