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ましひろさん④

ましひろさんの取材記事、いよいよ最終④です。
女装趣味の定義や、イベントの魅力、女装界隈に思うことを伺いました。最後までご覧ください。

※前回の記事はこちら

ましひろさん 思うことがあるんだけど、女装趣味って、主観と客観を行き来する趣味だと思う。女装って、はじめは「イケてるかも!」みたいに主観で始めると思うんだけど。主観だけで女装してたら、「そんな女いねえよ!」って見た目になりがちだし、客観が大きくなると周りの目が恥ずかしくて女装できないと思う。だから主観と客観を行き来することで女装のレベルが上がっていくのかなと思う。

~主観しかない人が、女子トイレ入っちゃうような人なのかもしれませんね。確かに客観しかなかったらコンプレックスに押しつぶされそうですね。面白い視点です。

ましひろさん MtFの人なんかは、女性として生きていくから仕方ないと思うけど、自分を常に客観視せざるを得ない。だからしんどくなっちゃう人が多い気がする。どうバランスを取るかが大事ね。

~ほんとにいろんな人がいますよね。性自認隠して結婚したけど耐えられなくなる人もいるし、吹っ切れてオープンになる人もいますね。

~結婚も考えられていたこともあるので、いわゆる性自認は男で性対象は女性なんですか?

ましひろさん そうね。私はそこはぶれない。未だに男の人は無理だし。女になりたいと思ったこともないよ。まぁ性別なんてあまり気にしても仕方ないと思うけどね。人間みんな兄弟みたいなもんだし。そういう意味でも、男女ってあんまり興味ないのかもしれない。

~そうですね。自分は自分でしかないし。性別って区分けがナンセンスになってきてますよね。

ましひろさん 男女どっちも辛いじゃない?楽しいこともあるし、辛いこともある。女に生まれ変わって女のコミュニティの辛さを味わいたくはないな。絶対どっちになりたいってあんまりないけど、とりあえず今は男でよかったと思うかな。

界隈以外には一切カミングアウトしてないんですよね。

ましひろさん 一切してない。正直もう恥ずかしさを感じることもないし、親しい友達には、こんなことしてるんだって言いたくなる時もあるけど、そこは抑えてる。男の世界、女装の世界を分けときたい私がいるんだよね。

よくされる女装ファッションを教えてください?

ましひろさん フェミカジとか綺麗目でカジュアルな感じかな。ガーリーな感じとかは好きじゃない。ていうかできない。女装って、自分の好きな女性像を求めた鏡になると思う。結局自分好みのスタイルに行きつくよね。
時代の変遷だと思うんだけど、我々の頃は入門編がギャル女装だったじゃない?今は地雷系みたいよ。

~地雷系か~。体系選ぶし、ハードル高いような。

ましひろさん やっぱり外見の振れ幅が大きいスタイルが入門編にはなりがちなの。あとは服が比較的安いのも大きいんだって。
私は綺麗目カジュアルが多いんだけど、TPOに合わせていろいろな女装する。聖装新聞の授賞式はフォーマルとかドレス着たりとか。
カジュアルって逆に難しさもあるよね。カバンとか靴とか小物で外し要素を考えたりもする。ほんとに幅広い。だから楽しい。甘めか辛めかで言ったら辛めのスタイルが好き。でも辛すぎると女装してる意味なくなっちゃったりするからバランス取りながら楽しんでるかな。あまり振り切った格好はできない。

~ましひろさんは女装イベントもたくさん行かれて楽しまれてる印象です。界隈の楽しみ方のようなものを教えてもらえないでしょうか。

ましひろさん 女装イベントのいいところって、これまで会えなかった人に会えるってことだと思う。固定のお店に行くと、そこの常連さんとの交流が中心になっちゃうし。それはそれで楽しいんだけどさ。大きいイベントのいいところって、Twitterでしか知らなかった女装さんとか、有名な人なんかにも会えるってのが一番楽しいとこじゃないかな。全然知らなかった面白い人と出会うこともあるし。普通に生きてるだけじゃ出会えない人間と出会って、仲良くなれるところが面白い。普段生活してて、40歳くらいの人間が20歳前後の人間と遊ぶ機会なんてなかなかないし。もちろん音楽かかって楽しくってのもいいんだけど、こんな面白い人がいたのかって出会いがたくさんあることが一番の魅力だわ。

ましひろさんにとって界隈はどんな存在になりましたか。

ましひろさん 最初は、こんな広い世界があったのかって思った。男の自分と、女装の自分。世界が倍になった感じがした。はじめて女装して新宿で遊んだ時の解放感がすごくてね。もうその辺で男同士がベロチューしてて、ものすごく解放感というか。「自分ってこんなに自由なんだ、自由に生きられるんだ」って感じた。その時の気持ちって未だに忘れられない。
でもそこから女装界隈のことを知っていくにつれて、ほんとに狭い世界だなって思い直すのよ。どこに行っても同じやつがいるし。実際、ゲイコミュニティとかと比べたら規模も小さいしね。
でも新聞をはじめて、また思い直した。狭いなと思った界隈は、まだまだ全国に無数にあったんだよね。地域ごとに同じようなコミュニティがたくさんある。小宇宙にみたいに世界中に散らばってるんだよね。ある地域でそこそこ有名な女装でも違う地域に行ったらまったく知名度ないとかざらにある。例えばこの前、ワタナベが韓国とかインドネシアとかの女装界隈を回っててさ。世界に目を向けるとそんなコミュニティが無数にあるってことも最近思った。新聞もそう。女装界隈のほんの一部を切り取っただけで、あれがすべてだなんて思わないでほしい。
ワタナベさんのTwitter

~ネットがそれらの小宇宙をつなぐきっかけになりましたね。

ましひろさん そうやね。そういう意味で界隈の広さっていうのは最近再認識した。だから、はじめ広いなと思った界隈を狭いなって思って、また最近広いなって思い直してる(笑)

これからも女装は続けていくんですか。

ましひろさん わからん。たまに辞めたいって思うときもあるよ。楽しいし面白いこともたくさんあるけど、悪いところもあるしね。万人に勧められるものじゃないと思う。それで家庭を壊す例もある。クオリティを上げようと思ったらお金もかかる。嫉妬だったり、足の引っ張り合いもある。爆サイに書かれたり、お店に対する脅迫とか聞いたこともあるし。
そういうこともあるから決していいことだけじゃない趣味だけど、でもやるからにはみんなハッピーになってほしい。共存共栄なんだよ。みんなが幸せになる方法を探していきたい。私が新聞で導いてやるなんておこがましいことは思ってない。こんなのただのネタでしかないんだから。新聞はね、みんながやってることの後追いで、足跡を気楽に残してるだけ。これからも謙虚にやっていきます。


~4回にわたりましひろさんとの対談をお送りしました。

女装や新聞、企画の根底に独自の考えがあり、聞いていてとても面白かったです!末永く、今後とも宜しくお願い致します(^^)✨

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