「塔」2024年4月号掲載作品など(夏机)
闘病は終わってきみは駅で一フォロワーとして見送っていた
産まれたときあんなにうれしかったのに風呂場の独り言のか細さ
やりたいことを語るのを思い出しながら足音を深夜に馴染ませた
元カノと僕が夜道に見えたとき恋人をつくらなきゃと思った
黒いコートが向かいの列を埋めている中の方がまだ明るい朝に
(返却は奥)目が合ったバーキンのお姉さんの二、三秒の手先
助手席で見ている赤と灰混じる空生きている人みな戦士
あたたかい喪失なんだと聞いている 風に立つコンドーム自販機
日光を吸った 怖れをやわらかい歯車の隙間から落として
音もない駅のかすかなふらつきとコートから出たつなぎめひとつ
1、2、3、6、9首目が「塔」2024年4月号に掲載されました。
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