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花が枯れることについて

花は当然ですが、枯れます。
茎を切って根から離れた切花は、その瞬間から死に向かって時間を加速させます。

食べられるわけでもないし、料理みたいに焼いたり冷凍したりできるわけでもない。

花は、人間が生きていく上で”絶対的に必要ではない”と言う意見があります。私も同じ考えです。ある意味、非合理的な存在。誰かにプレゼントを渡すなら、普段使いできたり日用品だったり、美味しい食べ物が良いかも知れない。自分に対してもそうかも。同じお金を出すんだった、便利でおしゃれで”残り続ける物”が良いに決まってる。事実、私は花屋に勤める前も自分で開業した後も、そう思ってきました。

「まあ、花はあんまり買う人いないよね」

少し諦め気味に、少し自虐的に、売れ残ってしまった花たちを見ながら、
「花業界ってなんで成り立ってるのかな?」と疑問に思う日々が続いていました。だけど、ひょんなことから自分なりに納得できる答えが生まれたので、文字に起こしたいと思います。

私は現在、香川県の「麦縄の里」と呼ばれる複合施設で1カ月限定のPOP-UPを開催しています。企画名は「POWEEER!!!」。とある知人が、私の花束を「パワーな感じ」と言ってくれたことが由来です。お客さんが花を受け取った時に「元気になる」とちょくちょく言ってくれたりもしたので、この「パワー」と言う言葉は私の心にストンと落ちました。

確かに、私は花の世界に入って自然と湧き上がる力を感じたことがあります。

例えば、早朝の市場に行った時。ほぼ徹夜で意識が朦朧としていても、いざ入場すると一気に目が覚めます。何回言ってもです。澄んだ香りを身体中に吸い込み、目の前には自然が育んだ「色」が広がっている。その時の私は、紛れもなく元気です。

他にもあります。ご注文されたお客様に花束を渡す瞬間です。月並みな表現ですが、花束を手にさえたお客様が笑うと、少し涙腺が緩む瞬間があります。私は基本的に体力が無いので常にふらふらな状態なのですが、花束を束ねるとき、そしてお渡しするときは、体力が無限にあるような錯覚に陥ります。花は、贈られる側だけでなく、贈る側も幸せになるのだと、花屋になって気づきました。

『花には、人を元気にする「力」がある。』

と、自分の中で腑に落ちるキャッチコピーが生まれました。お店の壁紙、インスタグラム、写真フォルダ。振り返れば、毎日この言葉を読んでいたような気がします。お客様に届いたかどうかは分かりませんが、確信を持って言えるのは、私は皆様から「力」を頂いていたし、感じていたと言うこと。ここに、花産業の本質があるような気がしました。

繰り返しますが、花はいつか枯れます。
「枯らしてしまった」と罪悪感を覚える人がいます。とても優しい方なんだと思います。花を買ったり、贈られたりしたときは幸せなのに、最後に待っているのは寂しさや虚無感。命の儚さを感じるという点においては、その考えも良いと思いますが、花にもう一度関わるのが怖くなってしまう人が増えるのは、花屋としては避けたいことです。

花を手にした人たちは、花が枯れたらこんな風に考えたら良いと思います。いや、あまり言語化されてないけど、これが花産業が成立している本質な気もします。

「力を頂きました。ごちそうさま。ありがとう。」

花が枯れると言うことは、花の持つ力が、関わった人たち全てに行き渡った証拠だと言うこと。美味しいご飯を食べ終えて手を合わせるように、目一杯花の持つ力を享受して、お別れを言えばいいのです。

食べられないし、いつか枯れる。
だけど、花農家がいて、市場があって、今日も世界中で花が日常に溢れています。誰かが花を贈って元気になって、花を贈られた誰かが花から力を貰って、そして、花が枯れる。その繰り返し。

一つだけ、訂正させてください。冒頭で記した、「花は、人間が生きていく上で”絶対的に必要ではない”」と言う言葉。

花は、人間が生きていく上で”絶対的に必要ではない”ではないが、
それでも”必要”である。

と、期間限定ではありますが、初めて店舗営業をして、花と向き合い続ける日々を過ごして、一つの答えに辿り着いた気がします。

花には、人を元気にする「力」がある。
期間限定POP-UP「POWEEER!!!」は5月21日まで開催しています。

皆様に力を贈れるように、ラストスパート頑張ります。


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