「ハマスホイとデンマーク絵画」に行った話

今年の1月の話です。

念願の「ハマスホイとデンマーク絵画」(東京都美術館)に行きました。

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なぜ、「念願」だったのかというと、国立西洋美術館で常設展示されている《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》というハマスホイの絵が、以前からとても好きだったからです。

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西洋美術館に行くたび、その絵の前でふわふわゆらゆらと立ち尽くしていました。

でも、その画家の名前「ハマスホイ」は、他ではお目にかかったことがなく、もう何年も、私は、イーダがピアノを弾いている絵しか知りませんでした。
それで、去年、「ハマスホイとデンマーク絵画」というチラシを見つけて、「あの画家だ!」と狂喜乱舞したのです。


ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916)は、デンマークを代表する画家です。
17世紀オランダ風俗画の影響が認められるため、 「北欧のフェルメール」と呼ばれることもそうです。


私は、「ハマスホイ」も「デンマーク絵画」も、この展覧会で初めて、きちんと認識しました。

ハマスホイが活動した時代、19世紀後半~20世紀前半のヨーロッパ絵画というと、もう、フランス画壇の印象がとても強いのです。
どんどん「写実的であること」から離れて、色彩の研究や構図の冒険が始まる時代です。
特に、色彩がぎんぎんぎらぎらです。

でも、同時代でありながら、この会場に並ぶデンマーク絵画は違いました。
全体的に、もっと素朴な色合いです。

なぜ、色彩に違いがあるのでしょう。
もちろん、国や地域によって美術の歴史も異なるので、そういった美術史的な要因もありますが、地理も関係していると思います。

大雑把に言うと、ヨーロッパの南の方はおひさまが眩しくキラキラしているのですが、北の方はおひさまが大人しく穏やかな明るさなのです。
絵にもそれが表れていると思います。
ヨーロッパの北の方の絵には、全体的に灰色がかった、落ち着いた色合いのものが多くあります。

オランダ生まれの画家ゴッホも、初期は暗い絵を描いていましたが、どんどん南下して、南フランスのアルルに着いた途端、頭のネジがとんだような明るい絵を描いています。

日本だって、北海道のおひさまと、沖縄のおひさまは、きっと違うと思います。
どちらも行ったことはないのですが。


話を展覧会場に戻します。


会場には、私の好きな《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》のような室内画もたくさんありました。

(ちなみに、ピアノを弾くイーダも、西洋美術館から遊びに来ていました。
西洋美術館と東京都美術館は、どちらも上野公園内にある美術館。
ほとんどの絵がデンマークから来ている中、この絵だけはご近所さんです。
後ろ姿を見つけた瞬間、思わず会釈しました。)

冷たく静かで、やわらかい色合いの室内画は、どれも季節感がありません。
時間も、はっきりとはしていません。

朝、昼、夕方のうち、どれでもない。
春、夏、秋、冬のうち、どれでもない。
「いつでもない」時間。

だからこそ、そこには、何とも言えないノスタルジックな趣きがありました。

少し寂しくて、どこか懐かしい感じ。
ほっこりしつつ、ひんやりともする感じ。

見ていて、とても落ち着きます。


すっかり、お気に入りの画家になりました。


この展覧会ですが、新型コロナウイルスの影響で、東京では、開催期間半ばで閉幕となってしまいました。
また、次の会場である山口でも、5月下旬から6月上旬までというとても短い期間での開催となりました。

また、どこかでお目にかかれますように。

下記サイトで、展覧会の図録を購入できます。
https://oil-catalogues.bijutsutecho.com/

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