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60年後の君へ

お久しぶりです。
お元気ですか。
今日はあなたに手紙を書くことにしました。

振り返れば3ヶ月という、とても短い期間でしたね。
その中で私たちが会った回数をあなたは覚えていますか?

たったの4回です。
日数にして12日間。

けれどもその短い12日間は、私の人生の中で最も濃密でキラキラとした、かけがえのない日々でした。
どんな困難に遭ったとしても、この思い出さえあれば私は生きていける。
そのぐらい大切な宝物です。

今でも時々、ふいに足元の床が消えて落ちていくような感覚に囚われます。

店の人混みで。
駅の雑踏で。

その場にうずくまって子供のように泣き喚きたくなるのです。

でもそんなことをしても、あなたに会えるわけではないから。
何でもない振りをして私は私の日常を生きます。

凡庸な日々を積み重ねることで、いつかあなたへの想いも少しずつ薄れてゆくのでしょう。
ただ、私にとって大切な人であることに変わりはありません。

いつか、あなたが心から安らぐことのできる相手と出会えることを祈っています。
どんな形でもいいから幸せでいてほしい。
私はあの12日間で、もう一生分の愛をあなたから貰いました。
だから他には何も望みません。

あなたはきっと長生きをすると思うので、60年後もこの手紙を読めるはずです。

素晴らしい思い出をたくさん残してくれて、ありがとう。
この世に生まれてくれて、出会ってくれて、ありがとう。

あなたの人生の一部になれて、私はとても幸せでした。
さようなら。


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