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クリーニングに出した洋服が行方不明になって京都で見つかった話・後編

お待たせしました。
後編です。

前回はこちら。

うっかり八兵衛なヤマトのおっちゃんのおかげで、私の洋服は京都へと漂着していた。

とにかく荷物は見つかったので、あとはそのままリネットへ送ってもらうだけだと思っていた。
ところが。



新たな問題

「夏木様、実はお伝えしなければならないことがございまして…」

ヤマト運輸お客様係の田端さんは、電話口で深刻そうな声を出す。
もう嫌な予感しかしない。

「夏木様のお荷物のリネット専用バッグがですね、その、少し、と言いますか、かなり破損しておりまして…」
「かなり、ですか…」
「はい…。その、中のお洋服が外から見える状態で発見されまして…。申し訳ございません!」

彼女によると、なかなかひどい状態なのでもしかしたら洋服に傷がついているかもしれないと。
だから一旦私の自宅に戻し、洋服を確認して問題が無ければ別のダンボールへ梱包し、改めてリネットへ送ると。

私の洋服は京都に拉致られ傷物にされてしまったかもしれないのだ。

おぉ、なんということだ…。
これはもう犬に噛まれたと思って諦めるしか無いのか…。

しかし田端さんは、万が一洋服が破れていた場合の補償の話もしてくれた。

その後ヤマトとリネットの間で交渉やら何やらがあり、夕方頃にまた田端さんから連絡が来た。

彼女はリネットに、私の洋服が無事だった場合は届き次第最短で仕上げるという約束を取り付けてくれたのだ。
そして仕上がり次第ヤマトが最速で届けると。

優秀なコールセンターのエースが担当してくれたことに感謝。

こうして私の荷物は東京→京都→東京→神奈川→東京という元プロ野球選手の講演会みたいな行路を辿ることになった。



ヤマトからの刺客

翌日の午後、家のインターホンが鳴った。
あらかじめ田端さんから「この時間に配達員が向かいます」と連絡をもらっていた私は、「はいはーい」とモニター画面を覗き込んだ。

そこには、ヤマトの制服を着た見慣れない男が立っていた。

通常、配送ルートの担当者というのは決まっているので、私のところにはいつも同じおっちゃんが来てくれていた。
マスクのせいで顔はあまりよく分からないが、明らかにいつものおっちゃんではない。

ははーん。
これはアレだ。
ちょっとだけ偉い人だ。

「わたくし、〇〇センター係長の△△と申します。この度は大変なご迷惑を…」みたいに名刺を出してきたりするんだろう。

ふーん。
別にそんなので心象良くなったりなんてしないけどね!

なんて思いながら玄関ドアを開けた。
すると。

そこには永山絢斗似のイケメンが立っていた

なんとヤマトは、若くて見目の良い男を生贄いけにえに差し出す、という姑息な手を使ってきたのだ。

くそっ…。
私に対して一番の有効打を打ってきやがった…!



傷物にされたリネットバッグ

謝罪するイケメンにヘラヘラしながら対応し、早速私の荷物がお披露目された。

「こちらなんですが…」と永山くんがビニール袋の中から出したのは、見るも無残な姿だった。

まず通常のリネットバッグがこちら。

布製

で、帰ってきた私のリネットバッグがこちら。

ビリッビリ

京都には切り裂きジャックでもいるんですかね…?

これは破損も覚悟せねばなるまい、と思いつつ一点一点慎重に検分した。
が、結局どこにも傷は見当たらず、晴れてそのまま新しいダンボールに梱包されることになったのだ。

良かった…。
安堵したのは私だけではなく、絢斗くんも同じだったようで、心なしか笑顔も口数も増えていく。

「実は僕もこういうこと一回あって、実家から米を送ってもらったんですけど、なぜか沖縄に行っちゃってw」
「え、どこから送ったんですか?」
「実家宮崎なんです」
「宮崎から逆方向に!w」
「そうなんですよーw」
「私宮崎一回行ってみたくて」
「ホントですか!すごい良いところですよ!食べ物も美味しいし…」
「あ、『おぐら』っていうチキン南蛮のお店が美味しいって聞きました!」
「『おぐら』は間違いないですね!」

蛙亭・イワクラと宮崎出身のフォロワーさん達から得た知識を、イケメンとの会話にブチ込んでいく女。

「あと、フェニックスっていう所があって…」
「あ、知ってる!ヤシの木の道路ですよね!」
「そうそう!うわー、ドライブしたくなってきちゃったなぁw」

あれ?
これもう家に連れ込めんじゃね?

と思ったけどもちろんそんなことはなく、彼は爽やかな笑顔を残して去って行った。



あとは待つばかり

前後編に渡ってお送りしてきました「永山絢斗と玄関デートをした話」、いかがだったでしょうか。

あれ?
なんか違うけどまあいいか。

現状、荷物はリネットのクリーニング工場に到着しているので、数日で帰ってくると思われる。

最後に。同じような目に遭った場合の参考として、ヤマト運輸の補償内容のお話をしておきたい。

田端さんによると、荷物の中身に破損があった場合、原則として同じ物をヤマトが用意して弁償してくれる
ただし一点物や生産が終了している品については、メーカーに当時の販売価格を問い合わせ、同じ額での示談となるそう。

事故に遭わないことが一番ですが、念の為。

早く永山絢斗が荷物持ってこないかなぁ…。

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