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白黒つけなくてもいい

私はいま非常に困っている。
と言っても「トイレに入ったら紙がなかった」とか「パンツを履くの忘れて出掛けちゃった」とかの類いの困りごとではないので、トイレットペーパーやパンツは届けてくれなくて大丈夫です。

昔から「超」が付くほど惚れっぽく、私はいとも簡単に恋に落ちてしまう
「落としたハンカチを拾ってくれた」とか「助手席のドアを開けてくれた」とかの些細なことで簡単に落ちる。
本当にお手軽な女です。

さて恋にも種類があり、「ちょっと好きかも」程度の可愛らしいものから「日常生活に支障を来す」レベルの超弩級のものまで様々だ。

そして私はいま絶賛「超弩級の恋」に撃ち抜かれ中というわけである。
さぁ困った。
仕事も手に付かないしホークスの応援にも身が入らない。

こんなことではダメだ。
目を覚ませ!
早くnoteにお得意の下品な記事でも投下してフォロワーを減らす遊びをしろ!

そう自分に言い聞かせてみるものの、やっぱりダメなのだ。
というわけで非常に前置きが長くなりましたが、今回は昔した超弩級の恋の話をします。



あの時君は若かった

19歳の頃、勤めていた小料理屋の板長と付き合っていたことがある。
板長には婚約者がおり、もちろん私も承知の上でのお付き合いだった。

ショートカットの婚約者がロングヘアの私の存在に気付かないように、部屋へ遊びに行く度に彼は絨毯に念入りにコロコロをかける。

最初はほんの興味本位だったのだが、次第に私は彼を自分だけのものにしたくてたまらなくなった。

ある日、私は彼が婚約者と一緒にいるのを知りながら、近くにある喫茶店に突然呼び出すという暴挙に出る。
若さ故の愚行

「彼女と別れて私と付き合ってほしい」

そうせがむ私に、彼はラッキーストライクの煙を深く吐き出しながらこう言った。

「それは話が違うよ。最初に凛ちゃんに言ったよね?俺には婚約者がいるよって。それを分かってて付き合ってくれてたわけでしょ?」

その通り。
私は何も言えずに喫茶店を出た。



運転手さんに救われる

電車に乗る気力も無くてタクシーを拾う。
何も話しかけて来ないタイプの運転手さんだったのが有り難くもあり、しかし私は誰かと話したい、いや、話を聞いてもらいたい気分だったのだ。

勝手に訥々とつとつと、運転手さんに自分の話をした。
車窓に流れ行くテールランプを涙でぼんやり滲ませながら。
運転手さんは適度に相槌をし、すっかり話し終えた私にこう言う。

「私には難しいことは分からないですけど、世の中ってそんなに白黒ハッキリつけなきゃいけないんですかね?グレーの部分があっても良いと思うんですけどね」

この回答に私は衝撃を受けた。
そうか。
グレーでも良いのか。

「竹を割ったような性格だね」とよく評されていた私は、無意識に「白黒ハッキリつけなきゃ」と思っていたのだ。
けれどよくよく考えてみれば世の中はグレー部分が多く、そのおかげで上手く回っていることも沢山あるということに気づく。

これ以降、私はグレーを受け入れることにした



閻魔様ってチンコデカいの?

付き合っている人がいたり婚約者がいたり結婚していたり。
それでも出会った瞬間に好きになってしまう人はいる。

普段から「割り切っている女です」みたいに書いている私だが、どうしても声が聞きたくて深夜に電話をしてしまいそうになったり(寸前で踏みとどまるけど)会いたくて仕方なくて酒に溺れる日も沢山あるのだ。

私もいい年になり「今回こそは最後の恋だろう」と思っているのに、忘れた頃にまた新しい恋がやってきて身悶えてしまう。
生まれつきの恋愛体質な自分が恨めしい。

面と向かって「地獄に落ちるよ」と言われたこともある。
それがどうした。
地獄に落ちたら閻魔様と寝てやるよ。

「最後から二番目の恋」という素敵なタイトルのドラマがあったけれど。
私はこれからも最後から五番目、いや、十番目の恋をしていくのだろう。


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