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【エッセイ】 紙

電車の吊り革に垂れ下がる広告紙を見るとつい、停滞しているように見えてしまう。そう、町内会の掲示板と変わらずそこに鎮座して。お地蔵さんのようにずっとそこにいる。
きっと、あまりにも早い速さで携帯の画面をスクロールし、動画は倍速で聞き、短いショート動画ばかりを繰り返し目で追ってばかりいるからそう感じるんだと思う。
今を生きる私たちの脳は擦り切れるまで流され続けているレコードのように回り回って流されている。
誰も、紙は見もしない。いや、見れないのかも。
でも、ふとした瞬間目があったり言葉が届いたりしてホッとする。
こんな言葉があるんだとか、こんな本が売り出されているんだとか。
紙媒体は流され続けた私たちをふっと掴んで止めてくれる最後の標識なのかもしれない。

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