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生保、取扱数での有利性は無意味に

最近ではスタンダードとなった複数の保険会社の商品を組み合わせた生命保険の見直し。

大型の保険来店ショップの登場でCMでも複数の保険の中から自分に最適の保険を選ぶといったスタイルが違和感なく受け入れているが、その流れは生命保険の誕生から見れば極最近の事である。

そもそも生命保険会社の誕生は約140年前の1881年に明治生命が現存する保険会社で一番古い。
そのあとに1888年に朝日生命、1889年に日本生命が誕生した。

生命保険会社誕生から約110年間は保険募集人は1社が当たり前だったが、日本版金融ビックバンが行われた1996年8月に生命保険業界で大改革が起こった。

その大改革とは乗合代理店の誕生で複数社の保険を扱えるようになった。
これによって、顧客が他社の保険を比較するのに数人の募集人にそれぞれ話を聞かなくて、1人から比較した商品の説明を受けられるようになった。

同時に、損害保険の会社が生命保険の子会社を作ることも可能になった。
これにより損保系生保の誕生となった。

そこからの乗合代理店の発展は凄かった。
取扱う保険会社の数を競うかのように10社前後を取扱うのは当たり前と言った雰囲気だった。

一方の顧客にとっては生命保険会社1社だけでの保障内容ではニーズに満たされないところを他の保険会社の商品で賄えるのでよりカスタマイズしやすくなった。

しかし、保険会社は自社の商品を選んでほしいために保険のスペックよりも価格勝負に入ってしまった。

その結果、保険料見直しの目的は保険料の引き下げになっていった。
ここで、安い保険がいい保険で高い保険が悪い保険だと勘違いされるようになった。

そもそも、保険料はすべて確率で計算されている。
該当項目を除外していくと確率の計算は下がり保険料も下げることは出来るが、内容はスカスカになってしまった。

今から10数年前にはこの流れは激化して、保険会社は自社の商品を選ばれるために安価な保険を販売したり販売手数料を上積みするようなキャンペーンを盛んに行っていた。

一方の顧客も少しでも保険料は安くという傾向が強かった。
でれはバブル崩壊後の長く続いたデフレの影響もあっただろう。

このころに複数のプランを組み合わせるのに一生懸命だったその保険は今ではどうだろう?

10年も経過するとその保険は古さを感じ、今必要とする保障内容とはかけ離れているかもしれない。

生命保険とは、一旦加入したらその保険が進化することはない。
特約を入れ替えたり、保障を追加しなければいけない。
それでも数年もすれば古さを感じる。

言い換えれば、加入の時に複数の会社の保険を選んだところで、数年経てばそれよりいい保険が発売されているケースが多い。

加入するその時点ではベストな組合せと思っても、半年も経てばそれは覆される。
それだけ保険会社も必死でニーズに応える商品を開発している。
既に、10年ほど前に保険料の安さだけを売りにしている保険会社は沙汰されつつある。

そして、保険会社のラインナップもこの10数年でグレードアップしてほとんど変わらなくなってきた。

なので、他社を比べる必要もなくなってきている。
しかし、乗合代理店がこれまでの拡大してきた背景に、比較という最大のベネフィットを否定するわけにはいかない。

実際に、顧客に10社ほどの提案を一度に出来るだろうか?
そんなことをすれば顧客が混乱してしまう。

また、顧客も比較を説明されても詳しくないので判断がしにくい。
なので、推奨する商品を選ぶのが大半である。
推奨する理由も曖昧であるのでわかり辛い。

ラインナップの数で顧客のベネフィットを高めるのには既に限界にきている。
TVでガンガンCMを流している広域代理店はその維持費とCM料は契約した加入者が払っている。

言い換えれば、そのビジネスモデルの維持のために契約して、その保険料の中からCM料を捻出していると思ってほしい。

沢山の中から選ぶのに意味はない。
それよりも最適な保険を選び、時代ともに定期的に見直すしかない。

日本版金融ビックバンから20年経った2016年5月に保険業法改正が行われた。
あれから4年が経ち、更なる転換期を迎えたのかもしれない。

数よりも質の時代というわけだ。

場合によっては保険会社1社だけで十分かもしれない。


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