焦がれる プロローグ

【あらすじ】
それなりの収入、優しい彼氏との同棲、平凡で幸せな日々⋯26歳の里紗は、今の自分の生活には満足していた。しかし里紗には彼氏の浩平にも打ち明けられない心の傷があり、その傷から恋人同士の行為への嫌悪感が拭えずにいた。そんなある日、中学時代の友人である藍が入院しているという事を人づてに聞かされる。藍は唯一里紗の心の傷を知る人物であったが、成人式以来もう何年も会っていなかった。『私の事、殺してよ。』彼女と最後に会った日言われたのはそんな言葉で、里紗はその日の事をずっと記憶の奥底に閉じ込めていた。浩平との関係が変わり始めたことをきっかけに、里紗は藍への思いを巡らせながら、自分の過去と向き合っていく。


11月6日

彼女を監禁することに成功した。
ネットでやり方を調べながら部屋の窓をすべてガムテープで貼った。ドアに鍵もつけた。

11月21日

彼女の指を切断した。

1月12日

彼女が話さなくなってきたので慌てて水を飲ませた。パンも食べさせてみたが上手く飲み込めないようだった。何かもっと食べやすいものを買いに行くことにする。

1月30日

彼女の爪をはいでみた。感覚が麻痺しているようだ。



8月15日

崖の下には海が広がっていた。ここから落ちたらきっと命はないだろう。その崖の上で、彼女は。

彼女は、わたしの手を掴まなかった。


#創作大賞2024 #恋愛小説部門


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