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『24人のビリー・ミリガン』を読んで

私の大好きなペガサスハイドさん(Youtuber)は「人格解離」、より馴染みのある言い方をするならば「多重人格」の症状があります。ハイドさんの核となる人格は女性ですが、イラスト添削を行う人格は男性なのです。(回し者ではありませんが、イラスト添削の動画はホントにホントに面白いのでお薦めです!!!)

動画にハマってから多重人格という語が何となく頭の片隅にあり、ふと仰天ニュースで複数の人格を持つ犯罪者の特集をやっていたことを思い出したので、『24人のビリー・ミリガン(上・下)』を読んでみることにしました。

あらすじを書くのがあまり得意ではないため、本書籍のバックカバーより引用します…

1977年、オハイオ州で連続レイプ事件の容疑者としてビリー・ミリガンという22歳の青年が逮捕された。しかし彼には犯行の記憶がまったくなかった。取り調べと精神科医による鑑定を行ううち、彼の内部には24の別人格が存在しており、犯行はそのうちの1人によるものだったという驚愕の事実が明らかになる。それまではほとんど知られていなかった「多重人格」という障害を一般に知らしめ、日本でも一大ブームを巻き起こした記念碑的作品。

上巻の終盤では、ビリーのいくつもの人格がどのように形成されていったのかが物語形式で語られます。その中でも非常に興味をそそられたのが「色覚異常」「聴覚障害」といった、通常は先天的(事故によるものは別ですが)である症状が人格と共に瞬時に現われることでした。

24人の内の一人であるレイゲンは色覚異常であるため、スケッチには白と黒のみを使います。またレイゲンから他の人格(アーサー)に交替したときに、履いている靴下の色を見て不思議に思うという場面もありました。(レイゲンは色覚異常なので、靴下の色が左右で違ったのです)

さらにショーンには聴覚障害があり、ほとんど耳が聞こえません。彼は母親から理不尽に怒られた際に誕生し、その後度々、叱られることを感知した際には怒声から心を守るためにショーンが登場します。

そんな風にそれまでは無かった症状が人格と共に現われるなんて、本当に不思議に思いましたし、脳の可能性って凄いな…無限大だな…と、不謹慎ながらも感心してしまいました。ちなみに主人格のビリーは健常者として生まれています(精神的に少し弱さがあるというのは否めませんが…)

また言語にも違いがあります。イギリス人のアーサーは上流階級のイギリス英語を話します。イギリスでは階級と言語が結びついている/いたので、悲しいことに話す言葉から育ちが分かってしまいます。色覚異常のあるレイゲンはユーゴスラヴィア人なので、スラヴアクセントのある英語を話します。

それぞれの人格は年齢も性別も異なるので、話し方も三者三様であることを考慮するならば、ビリーが話せる言葉の数ってすっごく多いな!と驚きました。通常言語というものは幼少期から練習をして、失敗を繰り返しながら段々と身に付けていくものですよね。だから小学校から高校あるいは大学まで、およそ10年弱学び続けている英語が話せないという人が日本にたくさんいるのだと思います。話す場面が圧倒的に少ないので.…。

それなのにビリーは人格の形成と共に言語を身につけている、何の練習もなしに。日本だと関西の方言(大阪弁や京都弁など)、関東の方言(標準語や栃木弁など)、女性の言葉遣い、幼児の言葉遣いなどを瞬時に使い分けているような感じでしょうか?そう考えると本当に凄まじいというか何というか、、、彼の脳がどう働いているのかとても気になります。

ただしビリーが話せる言語には、何かしらヒントになるものがあると読みながら感じました。非常に知的かつ上流階級のイギリス英語を話すアーサーは、ビリーの兄がシャーロック・ホームズを観ていたことから誕生したように思います。実際、シャーロック・ホームズの舞台となった場所を彼が訪れようとする場面が下巻で描かれています。レイゲンの英語は何きっかけだったか分かりませんが…

無意識下の情報の蓄積が様々な人格形成に関与しているのであれば、脳の一部を少しいじることによって、我々も色を知覚できるようになったり、耳が聞こえるようになったり、異なる言語を話せるようになったりするのでしょうか?仮にそうであるならば、我々の脳について科学が明らかにしていない部分はまだまだありそうですし、それほど人間の脳が非常に複雑で非常に精巧なつくりをしていることが分かります。『24人のビリー・ミリガン』を読んで、脳の可能性の壮大さにただただ驚くばかりでした。

最後に、著者はダニエル・キイスといって、有名な小説『アルジャーノンに花束を』を執筆した方のようです。恥ずかしながら私はまだ読んだことがないので、これから手に取って読んでみようと思います。


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