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【いちばんすきな花】第1話:細かすぎるあらすじ&感想

第1話 2023/10/12(木) 22:00~「いちばんすきな花」

ついに迎えた初回放送。4人を中心とする物語が動き出しました。
本記事では、ドラマ「いちばんすきな花」第1話のあらすじや台詞を、感想や考察を交えながらまとめています。
脚本や台詞が好きすぎて細かすぎるほどに残しているので、長いです!笑

※ネタバレを含みますので、これからご覧になる方はご注意ください。




●「いちばんすきな花」第1話

"二人組"と4人の主人公

1-1. それぞれの"二人組"

ゆくえ。小学校時代の回想シーン。教師の「好きなお友達同士で二人組をつくってください」の声かけに、動き出す生徒たち。動けないゆくえ。

椿。学生時代の回想シーン。ファミレスで待ち合わせをしていた女子生徒がやってくる。緊張しながら二人分の水を用意して待っていた椿だが、女子生徒が友人二人を連れてやってきて、二人きりになれず、がっかりする。

夜々。幼少期の回想シーン。可愛らしいドレスを着せられお人形あそびをしている。母親が買い物に出かけると、ドレスを脱ぎ捨て、将棋のひとりあそびに夢中になる。

紅葉。幼少期の回想シーン。公園でシーソーの順番待ちをする紅葉。二人組のお友達が遊び終えた後に、一人でシーソーに座る紅葉。

二人組をつくるのが苦手だったゆくえ。
二人組にさせてもらえなかった椿。
一対一で人と向き合うのが怖かった夜々。
一対一で向き合ってくれる人がいなかった紅葉。
4人の登場人物たちが、昔から"二人組"に苦労している様子が描かれます。
ゆくえがいる教室の窓辺に、花瓶に入った枯れたオレンジ色のガーベラが置かれているのが気になりました。

1-2. 潮ゆくえ

おのでら塾で講師をするゆくえ。学習の進み具合を気にする生徒の希子に、「よそはよそ、うちはうち」と声をかけて和ませるゆくえ。
授業の合間には鼓太郎と他愛のないLINEを交わすゆくえ。
上司に「彼氏?」と聞かれ、「友達です」と答える。

生徒との会話から、公式サイトの相関図にもある「他人や物事を一辺倒に見ないという意味で、ゆとりのある性格をしており、それによって周りに新鮮な意見を与える」というゆくえの人柄が垣間見えました。
上司は、女性がスマホ片手にくすっと笑っている=相手は男だと考えたのでしょうか。「男女の二人組」に対する周囲の固定観念を思わせます。

1-3. 春木椿

椿の職場。PCを扱えない上司のフォローをする。電話をかけようとした矢先に質問をしてくる部下に笑顔で対応する。その部下の質問には別の同僚が答えを出してしまい、笑顔で頷くだけの椿。そんな様子を見ながら同僚の女性は「旦那にはいいよね。つまんなそうだけどね。」とこそこそ話す。

「いい人」だから、周りばかり優先させてしまうのでしょう。
必要とされているようで、されていないような、そんなことを自分でも気付いているような椿が表現されています。
PCが使えなさすぎる上司のくだらない質問にも、文句を言わず対応する椿と、ガン無視して自分の仕事を進める同僚たち。上司の対応も「椿さんの仕事」「椿さんがやってくれる」と周りから思われているのでしょう。

1-4. 佐藤紅葉

コンビニでアルバイトをしながら、合間にお金にならない0円の趣味のイラストを描く紅葉。インスタに公開することでいつか仕事に繋がるかもと願う紅葉に対して、「夢があるとも言えるし、確証がないとも言えるよね。」と上司。
-紅葉「好きなこと仕事にするってそういうことです。好きには確証がないんです。」
-上司「そっかぁ。でも馬鹿にされたりするでしょう。ばりばり会社員やってる友達とかにさ。

何を言われても笑って流す紅葉。それがクセになっているのでしょう。
上司の言葉には、会社勤めの方が夢を見ている人より上位であるという、無意識の概念が感じられます。そんな風にこれまでも周りから言われてきたであろう紅葉が、イラストという夢を見ているのはなぜなのかが気になります。

1-5. 深雪夜々

美容院で働く夜々。初めて来店した椿を担当することに。花瓶の花を見つめる椿と花について会話。「椿」が名字だと思い「椿さん」と呼んでしまっていたが、帰り際に下の名前であることに気付き、次回の割引クーポンをお詫びに渡す夜々。微妙な顔をする椿。
上司に「わざと下の名前で呼んだんでしょう」といびられ、スマホの待ち受けにしているアジサイとカタツムリの画像を見て心を静める夜々。

異性の客に媚びたと決めつけたような言われ方をする夜々。何をしてもこんな風に昔からいつも言われてきたのでしょう。「春木椿」という、どちらが名字か分からないようなネーミングもここで生きています
今田さんの美貌を何の嫌味もなく生かすキャスティングがさすがです。
美容院の店名が「snail」(カタツムリ)。待ち受け画面もカタツムリです。

-椿「花屋は嫌いです。花屋は嫌いなんです。花は好きなんですけど、花屋はちょっと。」
-椿「苦しかったんですよ。教室が嫌いで。学校の教室。まぁ教室というかクラスというかそういう集団の単位。同じ地域に同じ年に生まれたってだけで寄せ集められて、みんな友達、みんな仲良しってあの感じ。花屋も同じです。花ってだけで寄せ集められて客の方に顔向けられて、はい綺麗でしょって。
-夜々「お花は選ばれて買われていきますしね」
-椿「花束とかね。勝手にグループ作られちゃったりして。」
-夜々「同じですね。

この美容院での二人の会話には、様々な意味が感じられます。
一括りにされること、その中に混じらないといけないこと、カテゴライズされること、上辺だけで決めつけられること。夜々にも思うところがありそうです。「花」の喩えも、人ともとれるし、夜々の華やかさにもとれるし、奥行きがありますね。
また、勤務終了後の、夜々と同僚の大貴との次の会話も印象的でした。

-大貴「いびられてたねぇ。」
-夜々「(笑いながら)慣れた。」
-大貴「慣れるの?」
-夜々「昔からそうだから。勘違いされるのも、決めつけられるのも、全部慣れた。」
-大貴「でも傷つきはするでしょ。傷つけられるのに慣れても、傷つかなくなるってことはないでしょ。
-夜々「届くまでに変換されちゃうんだよ。悩みとか不満とか話しても、相手に届くまでに変換されちゃうの。嫌味とか、自慢とか。女の子には特にね。」
-大貴「じゃぁ聞くよ。俺、女の子じゃないし。」

大貴の言葉にじんわりと涙を浮かべる夜々。男と女だけど、性別を超えてわかってくれる、友達になれそうだと感じて嬉しかったのかなと思います。大貴の優しさがシンプルに同僚としてのものなのか、下心があるのかはここではまだわかりません。

今田美桜さんは、華やかで派手な役柄をされてきたイメージがありますが、主役から脇役まで幅広く演じられてきた確かな演技力があり、繊細な表情や声色を使い分けるところが魅力的だと思います。この作品でそんなお芝居がたくさん観られると思うと楽しみです。

男女の"二人組"

1-6. ただの友達の男女二人組

いつものカラオケで集合するゆくえと鼓太郎。テーブルに並ぶメロンソーダと山盛りポテト。生徒の課題に採点をしながら待っていたゆくえ。
-ゆくえ「解けない人に採点はできません。ただの間違い探しじゃないの。○か×かじゃないの。途中式ここまでは合ってるよ、とかさ。

結婚することを打ち明けた鼓太郎。心から喜ぶゆくえ。大騒ぎの二人。
-ゆくえ「安室ちゃんと木村カエラ、どっちがいい?
-鼓太郎「じゃぁカエラで。潮の結婚式で俺安室ちゃん歌うわ。」
この流れの直後、コブクロの「永遠にともに」を選曲するボケをかますゆくえ。二人で気持ちを込めて熱唱。

一緒に暮らす妹このみに、「夜な夜な度々二人で密室で密会する男女は本当に友達なのか。LOVEの方の好きはないのか。大丈夫ならいいんだけど。」と言われるゆくえ。

このカラオケシーン、コブクロにつっこみながらスンっと歌い出す鼓太郎の仲野太賀さんのお芝居が最高でした(笑)
安室ちゃん、カエラ、コブクロの選曲も最高ですよね。生方さんのこうした世代感覚が大好きです。音楽で表現されるとエモいですよね。
採点に関するゆくえの台詞は、この物語のテーマでもある「男女の間に友情は成立するのか」というテーマに対するメッセージが感じられるように思いました。誰も答えなんて出せないし、人の関係に正しいも間違いも口を出す資格はないはず。だけどとやかく言われてしまう。

1-7. 夫婦になる男女二人組

結婚が決まり恋人の純恋と新居の家具選びをする椿。最近純恋がよく会っている様子の「モリナガくん」が気になる椿。「別に普通にご飯行くだけ」と純恋。
別日、新居に荷物を運びこむ椿ですが、純恋と連絡がつかず、不安がよぎります。

椿は過去にも彼女が別の男性のもとへ行ってしまった経験がありそうですね。「モリナガくん」の存在が気になりつつも、気にしていない、気にしない、「ただの友達」だと自分に言い聞かせ、恐れから追及することを躊躇う様子の椿でした。

1-8. 挙式準備をする男女二人組

挙式に向けた打ち合わせをする鼓太郎と恋人の峰子。
鼓太郎から「ウシオ」と聞かされ、よく二人でカラオケに行く仲の良い男性の友人であると認識していた「ウシオさん」が、「潮ゆくえ」という女性であったことを知り動揺する峰子。峰子の様子を見て動揺する鼓太郎。

峰子は「ウシオさん」を当然のように男性だと思っていたのでしょう。「ウシオ」という性別の判断がつかない(一見男性のような響きの)ネーミングがここでも生きます。女性と知り、あまりの仲の良さから関係性を不安に思う様子の峰子でした。
鼓太郎は、ゆくえが女性であることを隠していたわけではなく、当たり前に"友達"だから、特にやましい気持ちもなく峰子に言わなかっただけなのだろうと思います。
鼓太郎にとってはゆくえは友達。ゆくえとはその価値観が合い、友人として絆を深めてきた。けれど、峰子にとってはその価値観は理解しがたいものだった。
鼓太郎とゆくえ、二人の世界では当然の価値観であった友情が、周りとの関係性の中で揺らぎ始めます。

"ひとりに戻る"

1-9. 女の子だから

いつものカラオケで、いつものメロンソーダが2つ。山盛りポテトを注文しておくゆくえ。鼓太郎が到着するが、「密室だから」とドアの所で立ち止まり入室しようとしない。「今日は別れ話をしに…きて…」と鼓太郎。

-鼓太郎「潮とはもう会えない。彼女が、結婚する人が、その…会うなと。二人で会うな、密室で会うなと。」
-ゆくえ「友達。」
-鼓太郎「うん言った。ちゃんと説明した。潮は友達。一回もそういうの無いって言った。」
-ゆくえ「で?」
-鼓太郎「だめって。」
-ゆくえ「なんで?」
-鼓太郎「…女の子だから。」
-ゆくえ「…なにそれ。しょうもな。」
-
鼓太郎「価値観ってそれぞれだから。自分的にはしょうもなくても、誰か的には常識で、正義で、絶対ってことあんだよ。

赤田と友達を辞めたらスタバの新作は誰と飲めばいいのか、髪を切ったり服を買った時の報告や、新しく買ったLINEスタンプを試しに送る相手は誰になるのかと問うゆくえ。「赤田が女の子ならよかった。」「私が男ならよかったのか。」とゆくえ。

-鼓太郎「今度生まれ変わったら、女の子になるから。そしたらまた、友達になろうね。」
-ゆくえ「それはちょっとキモイな(笑)」

笑い合う二人。涙ぐむ二人。木村カエラの「Butterfly」を入れ、画面を見つめながら鼓太郎に手を振り歌い始めるゆくえ。そっと扉を閉めて去る鼓太郎。泣き出すゆくえ。運ばれてくる2人分の山盛りポテト。

あぁ。泣けるシーンでした。
ゆくえと鼓太郎、本当にこの二人の間にあるのは友情でしかないのでしょう。ゆくえにとって鼓太郎は、女友達よりももっとずっと友達で、かけがえのない存在だったのでしょう。
男と女だからという理由で周りから関係性を奪われるなんて本当にしょうもない。事実何もないんだから何も問題ないじゃないか。でも、そんな目で見られる現実も理解している二人。
鼓太郎にとってゆくえは大切な友人。でも、"恋人"であり"妻"になる愛する女性、今後一緒に生きていく人の価値観を無視することはできない鼓太郎。
ここで妻をとるかゆくえをとるかのもしも二択なら、鼓太郎が妻を優先するのも仕方ないことだと感じてしまいます。
「仕方ない」「しょうもない」「どうしようもない」で、男女の友情は簡単に消えてしまう。

結婚式で歌うと笑っていた曲でお別れをした二人があまりにも切なかったです。一人では多すぎる山盛りポテトが効いてくる演出もさすがです。

ただ、鼓太郎の恋人の峰子目線からすると、恋人がしょっちゅう二人きりでカラオケに行き、スタバ新作を一緒に飲み、まるでカップルのような他愛のないLINEをしていた相手が女友達であったことを知り、不安に思う気持ちもわかります。結婚という約束をして"夫婦"になっても、"異性の友人"はどうしても不安の種になってしまうのです。
峰子が単純に嫉妬深い女ではないのも、男女の"二人組"の難しさですね。

1-10. 苦手なんだ、二人組

ようやく純恋と電話が繋がった椿。食べかけのアイスクリームを雑に置き迎えに行こうと急ぐ椿だが、「お迎え、来なくて大丈夫。向かってる。モリナガくんち。」と純恋。結婚は出来ない、ごめんなさいと言われてしまう椿。

-純恋「友達じゃなくなっちゃった。モリナガくん、ほんとに友達だったんだけど、もう友達じゃなくなっちゃった。」
-椿「あー、喧嘩でもした?大丈夫大丈夫、仲直り出来るよ。ほら友達って、そう簡単に友達じゃなくならないから。
-純恋「そうじゃなくて…」
-椿「そうじゃないほうだよね…。だよね…、うん、わかってる。」
-純恋「椿くんとも、友達ならよかった。友達なら3人でもいいのにね。恋愛って二人組をつくる作業でしょ?ごめんね。苦手なんだ二人組。」
-椿「大丈夫。俺も苦手だから。二人組。」
-純恋「一緒だね。」
-椿「俺のこと、好きだった?」
-純恋「いいなぁって思ってたよ。本当にいいひとだなぁって。」
-
椿「そっか。」
-純恋「うん。ばいばい。」
-椿「ばいばい。」

…こんなことってありますか??????(涙)
結婚まで決めたんですよね?新居引っ越し当日にこんな風に別れを告げられてしまう椿も、それを受け入れてしまう椿も、不憫すぎて…。
純恋と椿の恋愛がどのような関係だったのか、これまでの付き合いを覗いてみたい気分です。きっと何か事情があるのだろう、あってくれ、純恋よ…。

「簡単に友達じゃなくならない」という台詞は、「簡単に友達じゃなくなってしまう」ということの裏返しですね。
椿にとっては、簡単に友達から恋人になってしまうという意味だと思いますが、ゆくえと鼓太郎のように友達じゃなくなることも、簡単に起こってしまう切なさを思わせます。

椿はこうやって、何度も何度も、「いい人」で終わってしまい二人組をつくる作業をやりきれなかったのでしょう。
分かっているから、これ以上傷つきたくないから、純恋を責めることもせずにただ別れを受け入れたのかなと思います。ずっと「モリナガくん」のことが気がかりだったのに追及しなかったのも、椿の弱さやトラウマからくるものですね。
しかしそれにしてもすんなり受け入れすぎだよ椿…!!!!!(涙)
椿の優しさと必死さが表れている食べかけの溶けたアイスクリーム。
パルムですよね。今後パルムを食べるたびに切なくなりそうです。

1-11. 選ばれない

出版社にて、担当と仕事のことで話をする紅葉。なぜ自分に仕事をさせてもらえないのか問うと、「佐藤くん、上手だと思う。いい絵、描くと思う。でもね、大事なのは良さより、好きになってもらえるかなんだよ。好きになってもらえる絵、描けるようになってね。」

高校の友人とのグループLINE。同窓会をしようと盛り上がる友人たち。幹事をすすんで引き受ける紅葉。「佐藤いつもありがと!」と友人たち。

こうした類の幹事はいつも紅葉が引き受けてきたのでしょう。誰もやりたがらないことを進んですることで存在意義を感じようとしてきたのかな。
「良いんだけど、一番に好きにはなってもらえない」「頼られるけど、絶対じゃない」そんな自分の存在がコンプレックスな紅葉です。
椿にも通じる部分がある言葉です。

1-12. そんなつもりじゃない

二人で飲みにいった夜々と大貴。帰り際、家に行こうと当然のように誘う大貴。「そういうことじゃないの?じゃぁなんで二人で会ってくれたの?」と大貴。「だって相良くん、別に普通に友達だし…」と夜々。

-大貴「夜々ちゃん、気を付けた方がいいよ。軽い気持ちで男と二人で会うの良くないよ。友達だっていうの、自分が男と遊ぶ言い訳にするのよくないよ。

夜々は大貴に対して、友達になれるかもと期待していたのでしょう。サシ飲みしながら愚痴も話せたようで、楽しそうな夜々が印象的でした。
しかし結局こういう展開になり、期待してしまった自分への後悔と、やはり男女はこうなるのかという悲しみを感じさせる夜々の表情が切なかったです。
大貴も大貴で、別に悪人でもなく、普通に夜々といい感じになれると思ったのでしょう。

大貴と別れた帰り道。「カタツムリになりたい…カタツムリになりたい…」と呟きながら歩く夜々。

夜々のキーワードになっている「カタツムリ」ですが、カタツムリは雄と雌の区別がなく、雌雄同体であるようです。
男とか女とかという区別のせいで苦労をしてきた夜々。そのように区別されず、男でも女でもないただの「人」として関係性を築けないものかという想いが、カタツムリに繋がったのでしょうか。
男女の関係の喩えにカタツムリをもってくる生方さん、凄くないですか。
ちなみに夜々のスマホの待ち受け画面にナメクジと映っていたアジサイの花言葉は、「移り気」「辛抱強さ」「無常」などだそうです。 雨の中で咲くアジサイのように、じっと耐えながら生きてきた夜々を感じさせます。

1-13. 二人というのは難しい

-ゆくえモノローグ「二人というのは難しい。あらゆる人数の中で、二人というのは特殊で、二人である人たちには、理由や意味が必要になる。二人は一人より残酷。二人は、一人いなくなった途端、一人になる。もともと一人だった時より、確実に孤独な一人になる。二人は強いに決まってる。一人の人間は、二人の人間がいないと、生まれない。逆に、三人以上の複数人というのは、一人の集合体でしかない。個々の価値は間違いなく、二人の時が一番強い。

確かに、同性同士の二人組なら友人、異性同士の二人組なら恋人か夫婦。そんな風に前提を勝手に決めてしまう概念が、私たちの中には未だあります。
友人、恋人、夫婦、同僚、家族、知人、親族、友達の友達、初対面、どんな性別のどんな"二人組"にも多様な関係性があるのに、"一般的に"そう思われてしまう組み合わせ。そもそも性別だって、男と女の二択ではないのに。
この物語、「男女の友情は成立するのか」という普遍的なテーマを軸に、どこまで深く切り込んで描いていくのか気になりますね。

1-14. 友達に振られた

塾にて、教え子の希子とゆくえの会話。
-ゆくえ「振られた。友達に、振られた。別れ話された。もう会えないって。ほんと、なにそれだよ。高校の時に塾が一緒だった友達。学校にはいなかった、二人でなんでも話せる友達。
-希子「それはつらいね。」
-ゆくえ「つらいよ。これ絶対失恋よりつらいよ。」
-希子「その友達と会えたから、だから塾の先生になったの?」
-ゆくえ「その元トモだけが理由じゃないけど。でもやっぱ、学校より塾が好きっていうのはあるね。」
-希子「浮気してなかったの?他にいないの?その元トモくらい好きな友達。

元友達。元トモ。友達が友達じゃなくなると、その人を定義する言葉は何になるのでしょう。恋人同士なら元カレや元カノ。夫婦なら元ヨメや元ダンナ。友達が終わると、呼び名も無い存在になってしまうのでしょうか。
この会話の中では、希子はゆくえの友達を同性の女性かと思っているかもしれないですね。

希子に他の友達について問われたゆくえが浮かべた微妙な表情が気になりました。
冒頭の小学生時代の回想シーン、花瓶に飾られたガーベラが枯れていて、お友達との二人組をゆくえはつくろうとしませんでした。過去に同姓の友人がいて、その友人と何かこじれてしまったような経験でもあるのでしょうか。
ゆくえにとっては、友達をつくる場所、人間関係を築く場所である学校は何かしらの理由があって居心地がよくなくて、勉強をする場所である塾が心地よかったのかなと思います。そこで出会った鼓太郎だから、学校ではつくれなかった「友達」になれたのでしょう。

"二人組"になれなかった4人の出逢い

1-15. オレンジのガーベラ

「フラワーショップはるき」を訪れたゆくえ。「好きな人のいちばん好きな花だから」という理由で、オレンジ色のガーベラで、小さめの花束を作ってほしいと注文。
桜新町まで花束を届けるというゆくえに、店主は「おつかい」として、桜新町にある椿の家まで花束を届けるようゆくえに頼む。

店名から、椿の自宅ですね。椿が「花は好きだけど花屋は嫌い」と言った理由、家族絡みで何かあるのかなと思わせます。
そして出てきました、オレンジ色のガーベラ。教室で枯れていたのもオレンジ色のガーベラでした。ゆくえの同性の友人が好きな花で、その友人に花束を渡しに行くのでしょうか?
ちなみにオレンジのガーベラの花言葉は「神秘」「冒険心」「我慢強さ」などで、11月の誕生花だそうです。この先の伏線回収が気になります。

1-16. 椿の家と"奥様"

椿の家を訪ねてきた紅葉。
-紅葉「先生の旦那さんですか?」
-椿「旦那さんじゃないです。旦那さんになれませんでした。」

フラワーショップはるきの店主である椿の母から、息子への結婚祝いにと託された黄色のガーベラの花束を届けに、椿の家を訪れたゆくえ。
-椿「純恋のお友達ですか?」
-ゆくえ「ガーベラとスミレってお友達なんですかね?わかんないです。友達かどうかは本人の意思によるものだと思うので。
-椿「そうですかね。本人が主張しても違うってことありますからね。」

紅葉は椿の前にこの家に住んでいた人を訪ねてきたようです。イラストレーターを夢見ることと何か関係があるかな?と思いました。その人はきっと女性なのでしょう。出てきた男性である椿を見て、「旦那さんですか」と関係性を無意識に決めつける紅葉です。
ゆくえは、「スミレ」と聞いて、人の名前ではなく花の名前だと思ったのだと思います。ちなみにスミレの花言葉は「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」などです。純恋よ…(涙)

再び戻ってきた紅葉。ゆくえとは久々に会った知り合いだったようで、お互いを懐かしむ。
ちょうどそこに、椿が美容院に忘れた社員証を届けに訪ねてきた夜々。
椿とゆくえを見て「奥様ですか?」と問う。
-ゆくえ「いえいえ、初対面です、独身です。」
-椿「同世代の男女ってだけで関係性を決めつけるのよくないですよ。
-紅葉「わかります、よくないです。」
-夜々「よくないですよね、ほんとよくない。」

ここで4人が巡り合いました!
男女の組み合わせに対して、自然と恋人や夫婦を連想する夜々。紅葉もですが、「二人組」の概念の呪縛にとらわれて苦労をしてきた身であるにも関わらず、本人たちでさえも、当たり前のようにそんな先入観をもって「二人組」を見てしまっていることが描かれています。

用件を終えて椿の家前から去っていくゆくえ、紅葉、夜々。花束を届けてくれたゆくえへのお礼に自宅でお茶でもと声をかける椿。応じるゆくえに対し、「恋人いますか?」と問い、いないことを確認した上で中に通そうとする椿。
-夜々「なんで確認したんですか?わざわざ恋人の有無、わざわざ。
-椿「いるとやっかいなんで。」
-ゆくえ「いるとやっかいですよね。
-紅葉「そういう前提で家に入れるんですか?」
-夜々「奥様になんて説明するんですか?この人恋人いなくて独身だからお茶だすねって言うんですか?奥様混乱しますよ。」
-ゆくえ「あ、奥様にご迷惑なら、私は全然。」
-紅葉「奥様にご迷惑だと思う。ゆくえちゃん嫉妬されちゃうと思う。」
-夜々「奥様いて彼女いないの当たり前ですよ。」
-椿「奥様いません。」

外し忘れていた結婚指輪を外し、玄関先の花壇に埋め、手を合わせる椿。
それを見てともに手を合わせる3人。

いきなり指輪を外して手を合わせる椿を見た3人。この流れだと、奥様は亡くなったのか…何かただごとでない事情があるのではと3人は想像してしまいますよね(笑)
指輪というアイテムも、しているかどうかで既婚かどうかを判断する、"二人組"の関係性や立場を周りが判断するためのラベルとして描かれているように思います。
4人の軽快な会話劇がどことなくコミカルで、面白いシーンでした。

1-17. 初対面は得意

結局椿の家で4人でお茶をすることに。テーブルの座る位置を気にしながら席につくゆくえ、紅葉、夜々。2組のペアのマグカップにコーヒーを入れて差し出す椿。自分の水色のマグカップとペアのピンクのマグカップをゆくえに差し出そうとして、一瞬考えて紅葉に渡す椿。
初対面なのに上がり込んだことを詫びる3人に対して、「初対面好きだし。初対面は得意なので。」と椿。

ペアのマグカップ。ゆくえと自分が男女で"ペア"になってしまうのはなんとなく気まずいと思って、椿はペアのマグカップを男性である紅葉に渡したのではないかと思いました。座る位置やカップを気にする様子から、誰かとの関係性の中で、性別がいつも無意識的な引っかかりになっていることがわかります。

結婚のせいで、この世界から友情がひとつ消えたの」と、結婚を機に男友達と別れたことを話し出すゆくえ。本当に友達だったのか少し疑いながら話を聞く夜々は、「男女が二人でいたらたいがいは恋。恋というか下心。綺麗に言うと恋。正直に言うと下心。」と持論を一般論風に展開。
椿に届けた黄色のガーベラを花瓶に生けながら、学校でよくある「二人組をつくってください」の流れを引き合いに出し、自分が学校ではなく塾の講師になった理由を語るゆくえ。

-ゆくえ「学校はお友達つくって人間関係を学ぶところだから、子供たちにそれ、私は教えてあげられないなって思って、学校の教員にはなりませんでした。」

「1-14. 友達に振られた」に記載したように、やはりゆくえは学校の人間関係に何かあるようですね。

ゆくえが黄色のガーベラを生ける花瓶を探すシーンで、椿の家には複数個の花瓶がありました。結婚祝いなどの頂きものというよりは、自分の家から持ってきたような花瓶に思います。花は好きだけど花屋は嫌いな椿。普段から自分でも花を生ける習慣があったのでしょうか。後の展開の伏線かもしれません。
ちなみに、黄色のガーベラの花言葉は、「究極美」「究極の愛」だそうです。この物語のテーマに繋がるように思います。

-椿「あれ、怖いですよね。いつも必死でした。」
-夜々「仲良しグループが奇数の時のあの心理合戦で寿命だいぶ縮んだと思います。」
-ゆくえ「紅葉はね、関係ないね。この子、幼馴染で、昔から誰とでも仲良くなれて、全人類友達で。ね。縁のない話だね。」
-紅葉「縁、ないんだよね、二人組。大人数でわいわい楽しく、薄っぺらい話する友達はいっぱいいるけど、二人ってなると。嫌われてるわけじゃないけど、でも、誰も好んで自分のこと選ばないし、興味すらもたれないから、いじめられもしないし。いてもいなくても同じで、いると、便利なときだけ使われる。ま、別にいいんですけどね。同窓会の幹事してれば、みんなと友達でいられる。」

ゆくえと紅葉は幼馴染であることが分かりました。ということは、ゆくえが塾で仲良くしていた鼓太郎のことを紅葉は知っているのでしょうか。

幼馴染のゆくえには、紅葉はいつも友人たちの中心のいて、自分とは違うタイプの人間だと映っていたようですが、紅葉の本音は違いました。幼馴染でも、見えているその人と、本当のその人は、違うものです。

-夜々「嫌でも興味もたれて、いるだけで目立ってみたいですか?小5だったかな。一番仲良しだと思ってた女の子にペアになろって声かけたら、"もう引き立て役やりたくない”って断られたことあります。ひとりで残っちゃうの嫌で、自分のこと好きってわかってる男の子に、絶対断られない子に、こっちから声かけてペアになってもらいました。女の子たちがこっち見てなんか言ってて。聞こえないけど、何言ってるかわかるやつでした。
-椿「僕は、ペアを組む契約を交わした後に、"やっぱりあの子にする"って契約破棄されたことあります。何度もあります。昔からそうなんですよね。みんなのいい人にはなれるのに、誰かひとりの一番好きな人にはなれなくて。
-ゆくえ「二人組つくれなんて命令、もうないのに。なのに、上手に二人組つくれないと、大人になっても…、あ、そっか。だから学校でそれやるのか。なるほど。それが上手にできなくて、こぼれ落ちちゃったんですね、私たち。二人組になれなかった、4人。4人全員、余っちゃったひとり。

夜々のこの台詞、受け取り手によっては自慢話のように捉えられるかもしれません。可愛くてモテてきた夜々だからこそ出来る発言であり、してきた経験であり、事実です。
夜々の美容院での立ち振る舞いや、椿の家を訪れた時に気をまわしてドアを閉める様子などから、夜々は可愛くてモテるけれど性格が悪い女ではないように思います。だけど、特に女の子の間では、「可愛くてモテる」は、性格が悪い、あざとい、媚びていると決めつけられて嫉妬されがち。その人がどんな人かは、上辺で決められてしまいがちです。

4人それぞれ、経験してきたことは異なりますが、お互いを否定するわけでもなく、深堀りするわけでもなく、ただ静かに話を聞いている様子が、なにかこの4人の似ているところを感じさせます。
「1-5. 深雪夜々」でも書いた話の"変換"が、この4人の間では感じられません。夜々の一見自慢話のように変換されてしまいがちな話も、3人に届くまでの間には変換されず、静かにそのまま受け止められたように思います。

「二人組つくれなんて命令、もうないのに。」という台詞、確かにそうですよね。それなのに人は、最終的には二人組になろうとする。当たり前すぎてなんとも思わなかったことですが、あらためて考えると、どうして二人組をつくらなければならないのか。"二人組にならなければならない"という無意識の呪縛に、人は捉われていることに気づかされます。それが大多数だから、こぼれ落ちた4人が少数派のように扱われ、余り者のように感じてしまう。世の中の"仕組み"を感じさせる会話でした。

気まずい空気が流れ、帰ろうとする3人。
-椿「忘れ物、気を付けてください。二度目、苦手なんで。こんなに、こんな話したの、初対面で二度目がないからです。もう会わないってわかってるからしゃべれるんです。どう思われてもいいから。

ゴミ箱に美容院の割引券と会員カードが捨てられているのを見つけ、拾って持ち帰る夜々。

椿はきっと美容院も、どの店舗にも2回目は行かずに、ちょこちょことお店を変えながら渡り歩いているのかなと感じました。
夜々がカードを持ち帰ったのは、夜々も色々と自分の話をしてしまったので、もう会わないように、二度目がないようにと思ったからでしょうか。

1-18. 余っちゃった4人の"ひとり"

ゆくえ。花束を渡そうとした相手である友人ミドリに電話をしたが、そこでミドリは桜新町から北海道に戻っていたことを知るゆくえ。「いつでも会えるって思ってちゃダメだね。今度遊びにいくね。」とゆくえ。行き場のなくなった花束を抱え、鼓太郎と通ったいつものカラオケをひとりで訪れるゆくえ。メロンソーダと水を並べ、水の方にガーベラの花束を生ける。

もう山盛りポテトはテーブルにありません(涙)
この友人のミドリが、教室で枯れていたオレンジのガーベラにも繋がっていくのでしょうか。もしそうであれば、ゆくえにとってミドリは「いちばんすきな人」。ゆくえにとって学校が苦手な場所になったきっかけに絡んでいるように思うので、今後の伏線回収が楽しみです。まったく見当外れでしたらすみません(笑)

「いつでも会えるって思ってちゃダメだね」の台詞は、友達になれても、二人組になれても、油断しているとその関係は崩れてしまうこと、努力して繋ぎとめていない限り、無敵な永遠の繋がりなどないということを思わせる台詞にも感じました。

夜々。友人ユリを電話で食事に誘うが、彼氏といるからと断られてしまう。
-ユリ「他に相手いくらでもいるでしょ。夜々が会いたいって言ったらよろこんでくる男、いっぱいいるでしょ。初回無料トライアルみたいなストックがさ。」
-夜々「いないよそんなの。」
-ユリ「別にいいじゃん、自分のスペックなんだから、有効活用すれば。
-夜々「…だよね。ありがとう。またね。」

泣いている夜々に「お姉さん泣いてる?大丈夫?ひとり?」としつこく声をかける通りすがりの男。「二人に見えるのかよ!!」とキレる夜々。

「二人に見えるのかよ」の返し、良いですね(笑)
夜々にとってユリはきっと仲の良い女友達だと思うのですが、こんな風にユリからも(ユリには悪気はなく)色々なことを言われてきたのでしょう。
夜々は、その度に心がズキッとしながらも、笑って受け流して、ひとりにならないように一緒にいることを選んできたのでしょうか。
何の悪気もなしに放った言葉が、チクチクと誰かの心を刺してしまうことって、きっと普通にたくさんあるんだろうなと思いました。

友人からの電話を受ける紅葉。「これからサシで飲まない?」との誘いに、驚きながらも嬉しくなり、お湯を入れようとしていたカップ焼きそばを閉じて家を出る準備をする。ところが、友人の目的は水を売りつける勧誘でした。電話を切り、焼きそばづくりを再開する紅葉。

紅葉がちょっと嬉しそうにした顔が見えたからこそ、かわいそうでした。
友人にとっては、こういう時に「あいつなら」と顔が浮かぶ程度の存在感を紅葉はもっているのでしょう。そして「あいつならNOと言わない」という風に思われているのかもしれません。
少し期待しては裏切られる、その繰り返しがこれまでも紅葉にはきっとあって、誰からも嫌われないように生きる=自分が傷つかないように誰か特定の人に過度な期待をしない、という生きる術を身につけたのかもしれません。

引き出しからゴミ袋を取り出し、ひとりコーヒー豆を片付ける椿。
ダイニングテーブルの中央には、ぽつんと黄色のガーベラの花束。

元恋人の純恋と選んだ4人掛けのテーブルに対して、ぽつんと座る椿と残された花束が寂しげに見えて印象的でした。
ゴミ袋などがきっちり整頓されて並んでいたあの引き出しがあえてクローズアップされて映し出されたのが何の意図か気になりました。
きっちりとした椿の性格を映し出しているようでしたが、ポンッとゴミ箱に捨てるのではなく、わざわざゴミ袋を取り出すシーンにする必要があったのか?何か意図があるのか、ないのか?

それぞれが"ひとり"になった少し寂しいイメージで、第1話は幕を閉じました。


●第1話 感想

思ったよりも大人のドラマになりそう

「silent」が大好きで事前の期待値がかなり高かったので、"面白くなかったらどうしよう"というなんとも失礼な不安を勝手に抱きながら第1話を鑑賞しました。(本当にすみません)
そんな不安など忘れて、あぁ、やっぱり面白い、と感じた第1話でした。
映像も綺麗だし、ひとりひとりの表情がとても丁寧に切り取られていて、皆さんお芝居が良くて、コミカルなやりとりもあり、ドラマ好きとしては見ていてたまりませんでした。

入口のテーマが「男女の間に友情は成立するか」という、学生が盛り上がりそうな少しカジュアルなテーマだったので、どんな内容になるのかなと思っていたのですが、20代後半~30代半ばの男女が織りなす物語は、ひとりひとりの人間を深く掘り下げていく、思ったよりも深いテーマに切り込んでいくような、大人のドラマになりそうです。
「男女の恋愛ものでしょ」と思って見るのをためらっている方がもしいたら、ぜひ見てほしいです。

今から第2話が楽しみです。