見出し画像

【いちばんすきな花】第11話(最終話):細かすぎるあらすじ&感想

いちばんすきな花
第11話 2023/12/21(木) 22:00~

第11話。最終回。
観終えた後の、「観てきてよかった」と静かに思えた気持ち。
余韻を噛みしめながら、今日もまとめていきます!

本記事では、ドラマ「いちばんすきな花」第11話のあらすじや台詞を、感想や考察を交えながらまとめています。
脚本や台詞が好きすぎて細かすぎるほどに残しているので、長いです!笑

※ネタバレを含みますので、これからご覧になる方はご注意ください。





●「いちばんすきな花」第11話

11-1. 四人で住む朝

椿宅にて少しの間一緒に暮らし始めた四人。同じベッドで眠ったゆくえと夜々。ソファで眠った椿。
朝になり、バイトを終えた紅葉が帰宅。紅葉と入れ替わりで慌てて出勤する夜々は、紅葉が持ち帰って来た消費期限切れのおにぎりを朝ごはんにもらって出かけていく。
紅葉が帰宅すると、寝ぼけた顔でコーヒーを飲みながらおかえりと迎える椿とゆくえ。「夫婦みたいだね」と笑う紅葉に、「同世代の男女ってだけで関係性決めつけるのよくないですよって言われますよ~」とゆくえ。
紅葉がシャワーを浴びようとすると、お風呂を沸かしてあるという椿。夜々が持って来た温泉のもともあるという。ゆくえはシーツを替えておいたベッドで寝ていいよと紅葉に伝える。紅葉は「もうここ住もっかな」と感激。
椿が好きだからと買った精神安定パンをお礼に渡し、お風呂に入った後、嬉しそうにベッドにダイブする紅葉。荷造り中の荷物を横目に見て、少しだけ寂しくなる。

前話の続き、引っ越しまでの少しの間だけ四人で椿宅に住んでみる四人。
朝の日常のひとこまが、こんなに愛おしいとは。

家は、行って帰ってくる場所。
四人の毎日の中の、行ってきますと言って出て行き、ただいまと言って帰ってくる場所が、同じ家になる。
それぞれのペースで日常を暮らしつつ、お互いを思いやって、適度な距離感で一緒に居る。
四人のこの居心地の良さが、表情ひとつひとつ、台詞のひとつひとつからじんわりと伝わってくる、心あたたまるオープニングでした。

11-2. カレーと餃子

椿宅にてカレーを作ろうとする椿、ゆくえ、紅葉。それを見守る夜々。
夜々が着ているTシャツに描かれたカタツムリを見て「俺の…」と呟く紅葉。夜々がネットで購入したというTシャツだが、紅葉のカタツムリのイラストが無断で使用されて販売されていた。
-椿「…盗用されたってこと?」
-夜々「私もしかして…犯罪に加担してます?」
急に申し訳なくなり、紅葉の好きなものを料理しようと慌てる夜々。
-紅葉「なんでそれ買ったの?」
-夜々「"カタツムリ Tシャツ かわいい"で検索して、色々出てきて、これ一番可愛いなって。」
-紅葉「そっか。ありがとう。」
-夜々「どういたしまして。…え?」
-紅葉「俺が書いたって知らずに買ったんでしょ?」
-夜々「うん。買ったの知り合う前だし。」
-紅葉「うん。じゃあむしろ嬉しいやつ。友達だからっていうのじゃなくて選んでくれたなら。あ、表紙のやつも嬉しかったけど、でもちょっと気遣われてるのかと思ったから。」
-椿「気は遣ってないよ。あれも本当に可愛いし。」
-ゆくえ「あれも可愛いし、これも可愛い。」
-紅葉「うん。ありがとう。」
四人でカレー作りを続け、3日分くらい大量に出来てしまったカレーを四人で食べる。食べきれないから誰かを呼ぼうかという話になり、椿は楓を、ゆくえはこのみを呼ぼうかと話す。

赤田家にて、鼓太郎と峰子の食卓。今日は餃子。鼓太郎は酢で、峰子はしょうゆとラー油。お互いに酢とラー油を「いる?」と聞き合うが、「いらない」と答え、それぞれの調味料で楽しむ。
食べながら、「潮さんってさ、どんな人?」と鼓太郎聞く峰子。

大鍋にカレー。大人数いるからこそ作って食べて楽しい食事の象徴ですね。
みんなで作って、みんなで食べる。合宿のような感じが可愛らしかったです。

夜々のカタツムリTシャツは、何度か夜々が部屋着として着ているシーンがこれまでにも出てきました。
そのイラストが、紅葉のイラストだったということで回収されるとは。
単純に、このカタツムリが可愛い、好きだと思ったから、という理由で、偶然紅葉のイラストのアイテムを購入していた夜々。
以前、紅葉は出版社にて、「大事なのは良さより、好きになってもらえるかなんだよ」と言われていました。
最近担当した装丁のイラストには、賛否両論あり、ネガティブなコメントを無視出来ず色々と考えていたところもあった紅葉。
シンプルに、自分のイラストが誰かの「好き」になっていたこと。
盗用は許される問題ではありませんが、そのことを知り、嬉しい気持ちになれた紅葉でした。
紅葉くん、表情豊かではないけれど、声色やちょっとした表情で、本当に嬉しそうな様子と、誰かに合わせてつくり笑いを浮かべる様子とが、しっかりと演じ分けられているのがさすがです。
静かに嬉しそうな紅葉くんが可愛かったですね。

赤田夫妻の餃子のシーン。
この二人は、餃子に合わせる調味料にはそれぞれの好みがあって、お互い違って。
でも、別に無理に相手に合わせようとするフェーズでもなく。
俺はコレ、私はコレ、で、それぞれ好きなように食べられる関係性。
些細なことだけれど、お互いを尊重して、干渉しない、この二人にはこの二人の、二人組になれたちょうどよい距離感というものがちゃんとある
んですよね。
峰子って、ゆくえと鼓太郎の関係性を不安がる女、という入口で登場したけれど、決して面倒くさい女ではない。
鼓太郎に過度に干渉しているわけでもないし、男っぽいところも持ち合わせている。
そんな人が男女の友情を不安視するからこそ、"男女二人組=そういう風にみられる"という社会観念的なものが浮き彫りになるのですが、峰子は別に面倒くさい女ではないし、赤田夫妻も別にうまくいっている。
そんなことが、こんな日常の些細な餃子のシーンを通じて描かれたことに、驚きと嬉しさを感じました。


11-3. 失恋

おのでら塾にて、塾長たちがゆくえの引き抜きの話をしているのを耳にし、「ゆくえちゃん辞めちゃうの?!」と慌てて職員室に駆け込んで来た希子。
「違う違う。お誘いもらってたんだけど、やっぱり辞めないって。まだここの子たちと一緒にいたいからって言ってたよ。」という言葉を聞き、安心し嬉しそうな希子。

カレーを作った日の翌日、カレーの入った鍋を温め直すゆくえ。夜々と紅葉は買い物中で、椿と二人。
-椿「夜々ちゃん、なんか言ってた?」
-ゆくえ「なんかって?」
-椿「いや。なんも言ってないならいんだけど。」
-ゆくえ「紅葉、なんか言ってました?」
-椿「なんかって?」
-ゆくえ「いや。なんも言ってないんならいいんですけど。」
顔を見合わせる二人。家のチャイムが鳴る。

買い物帰りの紅葉と夜々。
-紅葉「ゆくえちゃん、なんか言ってた?」
-夜々「なんも。」
-紅葉「あっそ。」
-夜々「椿さん、なんか言ってた?」
-紅葉「なんも。」
-夜々「あっそ。」

ゆくえが辞めないと決めたことを知った希子ちゃん、嬉しそうで可愛かったですね。
もしかしたら、いつかはゆくえは美鳥の塾に行くかもしれませんね。
でも、今は、希子や朔也たち、今一緒に過ごしている生徒たちがいるから、その子たちを見届けるまでは少なくともやりとげる。
そんなゆくえの、塾の先生としての想いやあたたかさが感じられました。

前回、椿に告白した夜々と、ゆくえに想いを伝えた紅葉。
みんなその後特にこの件については触れず、何事もなかったかのように続けていた四人組。
だけどきっとそれぞれ、気にしていた部分はあって。
それを、年上組の二人と、年下組の二人が、二人になれたタイミングでちらっと聞き合うのがリアルでした。
この会話以上に特に話を広げることはせず、「実はこう言われて…」「気まずくて…」とかを、ぼやき合わないのも素敵。
椿さんは鈍感なようで、紅葉のゆくえへの想いは感じ取ってたんだろうな。
全員繊細だけれど、知らないふりを上手に出来る年上組二人と、意外と思い切った行動がとれる年下組二人です。

四人組でいられる時間は、とても楽しいし、好きだし、大切。
でも、二人組だからこそ、言えることや聞けることもある。
この四人は、四人組なのだけれど、それぞれの組み合わせでの二人組もちゃんとあって。それぞれの二人組ならではの空気もあって。
一人になったり二人になったり三人になったりしながら、そのベースには四人組がある。
そんな関係性が素敵だなと思いました。


11-4. 純恋と楓とこのみと鼓太郎

買い物を終えた紅葉と夜々が椿宅に戻ると、ダイニングテーブルでは、鼓太郎、純恋、このみ、楓の4人が、男女の友情について話をしながらカレーを食べている。驚く二人に、「おかえり…」と小さな声でソファから声をかける椿とゆくえ。
-紅葉「なにあれ。続編とか言っといてキャスト総入れ替えするやつ?
-夜々「意味わかんないです。特に純恋さん。意味が分からないです。」

ゆくえはこのみに、椿は楓に、共通の知り合いなら呼んでも良いと伝えたら、結果的にこのメンバーが集結してしまったと詫びるゆくえと椿。
-紅葉「兄弟たち馬鹿なの?」
-夜々「来る方も馬鹿でしょ。」

このみが椿をお花屋さんと呼び、カレーのおかわりをお願いする。
カレーをよそいながら、最近お姉ちゃんとごはんをすることが減ったであろうとこのみに詫びる椿。
-このみ「最近出かけるの楽しそう。人と会うのが楽しそう、お姉ちゃん。
-椿「へえ~。」
-このみ「うん。ありがとう。カレーありがとう。」
-椿「いいえ。」
-ゆくえ「片想いも楽しかったって。
ソファの方で笑っている夜々を見て、少し申し訳なさそうに、静かにほほ笑む椿。

空になったカレーの鍋を見て笑う紅葉と夜々。食器を下げに来た純恋が、洗い物を手伝おうかと声をかける。
-純恋「見たくて来ちゃいました。友達と話してる椿くん、どんな感じなのかなって。すみません。楽しそうでよかったです。
笑う紅葉と夜々。

帰ろうとする純恋。同じタイミングで帰ろうとしていた楓に椿はアイコンタクトを送り、楓が純恋を駅まで送っていくことに。
「なんかごめんね」と椿に謝る純恋。じゃあねと笑って楓と出て行く。

このみは車酔いするからと、バス停まで一人で歩いて帰ることに。
椿と夜々にはバイバイと手を振り、紅葉にはわざと何も言わずに出て行く。

鼓太郎の帰り際。
-鼓太郎「近くの駐車場いっぱいでさ。ちょっと遠いんだよね。」
-ゆくえ「そう。」
-鼓太郎「もう遅いし、暗いし。」
-ゆくえ「そうね。」
-鼓太郎「駐車場まで送ってくんない?」
-ゆくえ「女子なんだが。」
-鼓太郎「言ってある。今日潮と会う、話すって。許可得てる。」
-ゆくえ「…」
-紅葉「…もう遅いし、暗いし。」
-鼓太郎「はいすいません、帰ります!」
-紅葉「ゆくえちゃん。送ってあげて。」
-ゆくえ「なんでそうなる?」
-椿「うん。夜道一人じゃ危ないと思うし。」
-ゆくえ「危なくないでしょ。」
-夜々「赤田さん可愛いし。」
-ゆくえ「可愛くもないでしょ。」
紅葉にコートを差し出され、三人に手を振られ、「じゃあ送ってきます」と、鼓太郎と一緒に家を出るゆくえ。
送り出したものの、「急に二人きりって気まずいのかな」「ある意味別れた二人ですからね」と心配になる三人。

8人大集合しちゃったシーン、沸きましたねー!!!(笑)
ここまでこの作品を観てきた私達へのご褒美かっていうくらい、夢のシーンでした(笑)
その光景に驚いた紅葉と夜々の台詞には笑いました。

前のくだりで、夜々が何かゆくえに言っていないか気になり聞いた椿。
こんなかたちで、このみから、夜々が片想いに区切りをつけたということを聞くことになり、ほっとしたような、申し訳なさそうな、ありがとうと思っているような、絶妙な表情になる椿。
夜々の片想いを、ちゃんと終わらせた脚本。それを人づてに椿も知り、椿も終わらせられた。よかったです。
しかも、それを椿に伝えたのが、四人組の外側にいるこのみちゃんだったのもよかった。
人の想いや本音は、ちゃんと自分が言葉にしないと、届かない。
けれどこんな風に、近くにいてくれる誰かが伝えてくれるからこそ、すとんと腑に落ちることもある。
そう感じさせてくれました。
夜々ちゃんがゆくえ宅にもよく来るようになり、このみともよく話す仲になったことが、ここで効いてきたんですね。

純恋は、あんなかたちで椿とは別れを選択した後に、この家に来るのってとても気まずかったと思います。
それでもやってきた純恋。図々しいとかではなく、シンプルにその台詞の通り、自分の知らない本当の椿を見てみたいと思って来たんだろうな。
自分と一緒にいる時には、どこかずっと息苦しそうだった椿。
自分が椿の感情を奪ってしまうのではと考えていた純恋にとって、伸び伸びと無理せず椿らしくいる様子を見られたことで、自分たちがした別れるという選択に、やっとマルを付けられたんじゃないかなと思います。
別れた時、純恋は「おじゃましました」と言って家を出て行きました。
その台詞から、その時は少し他人行儀というか、二人の間に距離があったように感じました。
でも今回は、ごめんと謝りながらも、「じゃあね」と言って出て行った純恋。
二人はもう、恋愛の二人組ではないけれど、何かあれば連絡はとれるかな、くらいの、変な気まずさやしこりが取れた感じ、距離感がまた少し近づいたような気がして、嬉しかったです。

そして鼓太郎。玄関前でのこのシーン、笑いました。
仲野太賀さんの細かすぎる表情のお芝居とか、面白すぎて(笑)
もう赤田とゆくえのシーンを見るのも今回で最後かあ、と、切ない気持ちになります。ほんとすき。すきすぎて、全部台詞を書き起こしました(笑)

11-5. 潮と赤田

帰り道のゆくえと鼓太郎。二人でよく行っていた店の店員が二人のことをカップルだと思っており、最近一人になった鼓太郎を慰めてくれたという話で爆笑しながら歩く二人。新婚生活はどうかと聞くゆくえ。楽しいと答える鼓太郎。
-鼓太郎「潮の基本情報説明したら」
-ゆくえ「え、奥さんに?」
-鼓太郎「うん。そしたら、子どもの進路相談出来るねって。あ、全然嫌味とかじゃなくて、助かるねって。」
会話の流れで、赤田夫妻に子どもが出来たのかと勘違いして大喜びするゆくえ。
-鼓太郎「すっげえ喜ぶじゃん。」
-ゆくえ「うん、楽しみ。赤田の子ども。」
-鼓太郎「結婚するって言った時も、今みたいにめちゃくちゃ喜んで。」
-ゆくえ「うん。嬉しかったもん。」
-鼓太郎「そういうの伝えた。奥さんに。確かに女だからっていう正義は理解出来るし、わかるけど、でも潮はこういう人ですって。自分のことみたいに、自分のこと以上に、俺らの結婚を喜んでくれてましたって。」
-ゆくえ「うん。」
-鼓太郎「前ほど頻繁には無理だけど。うん。俺の歌を聞かないと死んでしまいそうってことがあれば、電話しろ。多分、許しが出る。」
-ゆくえ「わかった。赤田の横で、永遠に、永遠にともに、歌う。」
-鼓太郎「お前ほんとそういうとこだぞ。」
-ゆくえ「カエラのフル尺聞かせなきゃー」
-鼓太郎「楽しみだわー」

車で椿宅前までゆくえを送った鼓太郎。車から降りるゆくえ。
-ゆくえ「二人で幸せになれよ。」
-鼓太郎「もう幸せだよ。」
笑って別れる二人。

泣いた(涙)

三人の心配をよそに、二人になった瞬間、前みたいに爆笑しながら笑い合う二人。
ゆくえには、今は居心地の良い四人組があるけれど、赤田の存在は、それとは別のずっと大切なもので。
鼓太郎も、峰子との新婚生活を楽しんでいるし、峰子の不安を理解しているから気遣っているけれど、潮の存在は、変わらず大切にしたいもので。
二人の間に他社によって引かれてしまった線が、薄くなって、また前みたいに笑い合っている。
そんな二人を見れて、私は幸せです(突然)。

店員にカップルだと思われていたことも、笑い飛ばせる二人。
鼓太郎の人生の幸せを、自分事のように心から喜べるゆくえ。
ゆくえが大切で、峰子も大切だからこそ、きちんと峰子と話をした鼓太郎。
鼓太郎を理解したくて、きちんと話を聞いて、受け止めた峰子。
鼓太郎が、女だからとか常識がどうだからとかではなく「潮はこういう人」って峰子に説明をしてくれたこと、ゆくえは嬉しかっただろうな。

男女の友情が成り立つパターンの象徴として描かれてきたこの二人。
「男女」「二人」「友達」と言っても、このワードだけで何かを括ったり語ったりすることなんて本来は出来なくて。
その二人の、その関係性というものがある。
赤田は赤田。潮は潮。そういう感覚をお互いが持っているからこそ、価値観が同じだからこそ、二人組でいられる二人。
その価値観を、違う価値観を持つ誰かに説明することって、難しいし、面倒だし、ややこしくなるから別に分かってもらえなくてもいいやって諦めてしまいがち。
だけど、鼓太郎は峰子に対して、きちんと話した。
それは、峰子への信頼でもあったと思うし、峰子への愛情でもあったと思うし、自分と潮の関係に対するプライドでもあったんだと思う。
価値観なんて人それぞれだし、すべてを受け入れたり認める必要も、認めさせる必要もないけれど、ここでしっかりと向き合った鼓太郎に拍手だし、それにゆくえちゃんが救われて、前みたいに笑っているところを見ることが出来て、本当に嬉しいです。

まぁ、これだけ二人の変わらぬ友情が嬉しいと語った私なんですけど、実際鼓太郎の「電話してこい」とか、運転席の鼓太郎とか、マジイケメンだなってキュンとしてしまった恋しそうになりました(笑)
ありがとう赤田。また二人で山盛りポテト食べてね。


11-6. ココア

引っ越し当日の朝。珈琲を淹れている椿。仕事は休みを取り、リビングに集まって来たゆくえ、夜々、紅葉。家を見渡し、寂しそうな紅葉。

おのでら塾にて、ゆくえが休みを取った日、二人で自習をしている希子と朔也。
-希子「ゆくえちゃん今日友達の引っ越しの手伝いするんだって。引っ越しちゃうから席なくなっちゃうんだって。でも大丈夫なんだって。いなくなるわけじゃないから。…しんどい。学校にいるのも、教室に行くのも、しんどい。」
-朔也「…うん。」
-希子「だから自分のこと一番に考えることにした。だから穂積の好きにしていいよ。」
-朔也「うん。…何が?」
-希子「穂積のことどうでもいいから、どうしても保健室で給食食べたいならいいよ。」
「なんで上からなの」と少し笑う朔也。間違えて買ったからと冷めた缶のココアを朔也に渡す希子。嬉しそうにココアを飲む朔也。並んでココアを飲む希子。

自分の席を守らなければならないと思って、一生懸命学校に行っては、傷ついてきた希子。
穂積くんのことや、クラスの"みんな"のことにまで気を遣って、前回はお腹が痛そうな顔で蹲ってしまった希子ちゃんでしたが、このシーンではすっきりした表情をしていて、安心しました。

ゆくえはきっと引っ越しの話をしながら希子にメッセージを送って、希子もちゃんとそれを受け取ったんだろうな。
どこにいようと、希子は希子だし、しんどい場所に無理していなくたって大丈夫。
希子ちゃんはこれからも、また学校に行ってみるかもしれないし、教室に行ってみるかもしれないし、保健室直行かもしれないし、学校はもう行かないかもしれない。
その時々の気持ちで、自分の事を一番に考えて、自分が居たい場所にいればいい。

気持ちを伝えたい相手、心を開いた相手に、ココアを渡す希子ちゃん。
希子ちゃんと朔也くんの二人が、二人らしく、二人がいたいような関係値でこの先もずっといられるといいな。
安心できたシーンでしたね。

11-7. おじゃましました

食器をまとめていた椿が、4つのマグカップを持って集合をかける。
それぞれ自宅に持ち帰るよう、梱包をお願いする椿だが、三人はマグカップを見つめる。ゆくえが自分のマグカップをキッチンに戻すと、続けて紅葉と夜々もマグカップを並べて置く。別の場所の梱包作業や掃除に戻る三人。少し考えて、椿も、自分のマグカップを同じ場所に並べて置く。
リビングのカーテンを取り外す4人。

引っ越し屋にすべての荷物を受け渡し、からっぽになった家。
リビングの床に仰向けに寝転がる四人。
「いっせーの、いち!」と紅葉がゲームを始める。床にうつ伏せで寝ながら、いつもみたいに、爆笑しながらゲームをする四人。

時間が来て、ついに身支度をして、家を出て行く四人。
-椿「忘れ物ないですか?」
-紅葉「二度目苦手なんで~」
-夜々「忘れ物気を付けてくださ~い」
-ゆくえ「懐かしい(笑)」
-椿「(笑いながら) 今回は本当に困るでしょ、何か置いてっちゃうと。誰もいないから。」
-ゆくえ「でも別に…美鳥ちゃんいるから。帰ってくるから。」
-椿「そうだね。そもそもマグカップ、意図的に置いていくくらいだし。」

最後、部屋を見渡す四人。一言ずつリビングに向けて言って家を出て行く。
-夜々「みどちゃんまた来るね。おじゃましました。」
-紅葉「また来ます。おじゃましました。」
-ゆくえ「私も。おじゃましました。」
-椿「(無言で深く一礼して) おじゃましました」

リビングには、幼少期の椿、ゆくえ、夜々、紅葉が、輪になって座り、さきほどまで四人が楽しんでいたゲームをしている。
玄関の扉が閉まる音が聞こえて、玄関に向かって、四人は笑顔で手を振る。

カーテンを外すって、本当にその家を出ていくんだなって感じ、しますよね。
四人の表情と、外されるカーテン。この家での時間の終わりを感じさせます。

マグカップをこの家に置いていった四人ですが、美鳥目線で考えたら、前の住人のマグカップが置いてあったら、えって思いますよね(笑)

このマグカップを置いていったシーン。
この家じゃなくても、このマグカップじゃなくても、自分たちはまた四人で別の場所で集まれる、という意思表明にも感じました。
お揃いのこのマグカップは、家で一人で使っても意味がないし、あの頃は楽しかったな~なんて一人になって干渉に浸るようなつもりもない。
もう家やマグカップという、物理的な理由がなくても、自分たちはきっと一緒にいられる四人組になれた。
それを表しているように感じました。
一方、この家にマグカップを置いていくことによって、美鳥が住み始めた後にこの家を訪れる理由にもなる。
マグカップだけでこんなに色々感じさせる11話の積み重ね、エモいです。

床に寝そべってゲームをする四人。
このゲーム、何て呼ぶんですか?指スマ?
これ、撮影の合間に四人が現場でよく遊んでいたゲームですよね。
実際の四人の関係性と、物語の中の四人の関係性が交錯して、無邪気に笑い合って楽しんでいる四人の姿が映っていて、なんなんでしょうかこの感情は。それだけで泣けましたよね。
この四人に会えてよかったな~って。じんわり泣けました。

最後、「おじゃましました」と言って出て行く四人。
椿も「おじゃましました」。
この家は、椿の家だったけれど、やっぱり最初は純恋と一緒に住む予定の家だったから、自分の家とはいえ、どこか自分の居場所ではないような感覚がずっとしていたであろう椿。
引っ越しを決めた時、美鳥が以前住んでいたことを知って以降は、この家は美鳥が帰るべき家だということがストンと心に落ちたから、自分の家だったけれど、「おじゃましました」という言葉が最後に出てきたのでしょう。
一礼する前、少し目が潤んだような椿さんの表情に、ぐっときました。

そして四人が出て行った後、子ども時代の四人が並んでゲームしている様子が描かれましたが、なんですかこれは。泣いた…(涙)

もともとばらばらだった一人と一人と一人と一人が、この家で出会って。
それまでそれぞれに生きづらさを抱えていた一人たちが、出会って四人になったことで、色々なことが救われたり、肯定されたり、これでいいんだって思えるようになったり。
みんなそれぞれ、この四人に出会って、この家で過ごす時間の中で、大なり小なり色々な変化をしてきたこれまでの時間。
この家で初めて集合した時の四人のあの気まずい空気を思うと、今の四人の空気感がまるで嘘みたいに、本当に打ち解けましたよね。
だけど、それぞれみんな、性格が根っこから変わったとか、人生が180度変わって生きやすくなったとか、そういうことではなくて。
みんなそれぞれ、子どもの頃から今まで、大人になっても、本質的なところって変わっていなくて。
だけどそれを見せてしまうと生きづらい人生だったから、隠したり、抑えたり、合わせたりして、なんとかごまかしながら歩いてきた。
この家では、この四人組の中では、そういうものから解放されて、自分らしく、自分がいたいように、居る。それが出来たんですよね。
そう。出会って変わったというよりは、出会って肯定されたという感じ。
だから、子どもの頃の四人が無邪気に輪になって遊んでいる演出を見た時、息苦しかったそれぞれの今までの道のりを、今の四人が肯定してあげられたように感じて。嬉しかった。
出会うべくして出会った四人。必要だった、この時間。
性別とか、年齢とか、関係ない。
この物語の軸が可視化されたような気がして、ぐっときてしまいました。
ただ言いたい。ありがとう(何)。


11-8. それぞれの日常

自宅で結婚式の招待状を見ているゆくえ。出席か欠席か、どちらに丸を付けるかで悩んでいる、相変わらずのゆくえ。
-このみ「相変わらずそんなので悩んで。嫌ならさぼっちゃいなよ。」
-ゆくえ「でもこの子、この前の同窓会で会ったばっかで。同じグループの子の結婚式に私が呼ばれなかったことが発覚して、だからこれは多分義務的に送ってくれたやつなの。欠席すると意味を持ってしまうというか…」
-このみ「そんなの気にしなくて大丈夫だよ。」
-ゆくえ「気にするの!気にしないの無理なの!

職場の椿。いつものように上司に呼ばれてフォローしている。その様子を見て話している同僚。「新居はどうですかって聞いたら、"本当に部室みたいなサイズ感になりました"って言ってて…」と同僚。
「え、どういう意味?狭いってことかな?…春木さんさ、なにかと"僕は無個性な人間なんで"って言うけどさ、超個性強くない?超個性強い、いい人」と言って笑う同僚。
上司から大量の資料を押し付けられ、自分のデスクへ戻る途中、躓き、資料をばらまいてしまう相変わらずの椿。

美容院の夜々。職場の上司に、髪が付いていたと肩を触られ、今日メイク違うねなどと絡まれる。その様子を見た谷本が「相変わらず必死に愛想笑いしてるよ~社会の縮図だ~生きづれ~」と言いながら相良にアシストする。
相良は夜々のもとへ行き、シャンプー台を片付けるように頼む。
夜々はシャンプー台に移動したが、掃除は既に終わっている。
-夜々「相良くん、全部もう片してあるけど…」
-相良「あぁ、気のせいかも。大丈夫。ごめん。」
-夜々「…(笑う)」
-相良「…何?」
-夜々「ううん。」
-相良「嫌な時は嫌って言いなよ。」
-夜々「(真顔で) お前が言うなよ。
-相良「口わる…」
笑って去っていく夜々。笑う相良。

バイト先の休憩室での紅葉。先日夜々と居酒屋で会った同僚二人が、夜々への謝罪の品を渡すが、「こういうので女が喜ぶって男に思われてることに何よりブチギレる子だから」と断る紅葉。理解し、申し訳なさそうに出て行く同僚。入れ替わりでやってきた店長。
-店長「相変わらずだねえ。平和主義。紅葉ちゃんがブチギレたっていいのに。あ、でもなんか最近、あの調子乗り大学生二人、ちょっとだけ態度いいの。」
-紅葉「多分、友達がキレたから。」
-店長「キレた?調子乗ってんじゃねえよ的な?へぇ~。いい友達いるじゃん!」

引っ越しの後も、それぞれの日常は変わらない。
ほんの少しの変化はありつつも、たいして変わらない。
同じような毎日を、それぞれがそれぞれの場所で生きている。
でももう、いつでも会える四人がいる。引っ越しても、変わらず、ある。
そんな愛おしさを感じさせるそれぞれのシーンでしたね。

私がこっそり応援している相良くん。
まだ夜々のこと狙っている気もしますが(笑)、夜々が素直に優しさを受け取って、でも素を出して口悪く出来る程度には心を開けて、よかった。
相良くんとは良い友達になってほしい。

そして椿さん、躓き方がもうリアルすぎてさ(笑)
大丈夫?っていう角度で足首曲がってましたけど(笑)
相変わらずで可愛かったな。

そしてそして最後、紅葉のバイト先の店長。
店長もあの子たちのこと調子乗り大学生って思ってたんだなって思うと、ここにきてめちゃめちゃ笑いました(笑)
一生懸命サンタ帽被って無表情でバイトしてる紅葉も想像するだけで面白い(笑)


11-9 お相撲さんとムラサキちゃん

自宅のテレビで相撲の秋場所で優勝した力士に関するニュースを見ていたこのみ。その力士は新潟出身で、かんちゃんと同じ大会に出ていた、お母さんがビデオを撮っていてお宝映像だと騒いでいる、とこのみ。
-ゆくえ「え!どっち…?」
-このみ「どっちって?」
-力士「(インタビューにて) 子供のころから、悔しい思い、恥ずかしい思いもたくさんしてきました。今日ようやく今までの経験や感情にすべて意味があったと思えました。」
-ゆくえ「どっちでもいいね。どっちでも。よかった。おめでとう!!よかった!!」

実家の花屋にやってきた椿。「最近美鳥ちゃんに会ったんだって?」と母。
北海道に戻る前に美鳥が店を訪れ、思わず「おかえり」と言ってしまい、美鳥も「ただいま」と言ったと、笑う母。
「ま、二か所あっても。」と椿。「あってもね。」と母。

美容院にて、やってきた新規の客と、迎え入れた夜々、お互いに顔を見て驚く。その客はムラサキちゃんだった。ムラサキちゃん?!と喜ぶ夜々。
結婚して名字が変わったからもうムラサキちゃんじゃないね、と謝る夜々。
-咲「よくないよそういう固定観念。旦那にこっちの名字になってもらったの。女が名字変えなきゃダメとか納得いかなくて、めちゃめちゃ話し合って勝ち取った。今でも村山咲。」
-夜々「やっぱムラサキちゃんだね。」

飲み会で幹事をし、回収したお札を数えている紅葉。スマホを見て、途中で抜けていいかと友人に聞くが、一人に「は?」と言われて、ごめんと引き下がった紅葉。別の友人が「いいよ、貸して」と言ってくれ、まとめていたお金を預け、中座する。

ちびっこ相撲がここで回収されましたー!!!!(歓喜)

今回優勝した力士が、あの時負けた大柄の子なのか、勝利した小柄な子なのか、どっちだかはわからないけれど、どっちでもいい。
相撲を嫌いにならず、過去の経験を良かったと肯定できた力士の姿を見て、心から嬉しそうにするゆくえ。よかった。
どっちでもいいよね。
過去がどうとか、あの時どうだったとか、周りの人がそういう散らばった欠片みたいなものを搔き集めてその人をどうだと語る必要なんてない。
自分が知っている姿以外にも、たくさんのことがあった道を生きてきた人が、今、報われたと自分で言っている。
それだけで、よい。
ゆくえちゃんらしくて、素敵でした。

ムラサキちゃんの話は、夜々が憧れて大好きだったムラサキちゃんが、大人になっても変わらなかったことがまず救いでしたね。
名字のくだりで、さらっと固定観念に縛られた発言をしてしまった夜々。
一番そういうことに傷ついたり悶々としてきた夜々でさえも、そんな風に言ってしまうくらい、固定観念や決めつけって、無意識のレベルで日常に溢れている。
そこにはっとさせるシーンでした。

最後紅葉のシーン。
今までの紅葉だったら、途中で飲み会を抜けるなんてなかなか出来なかったのでしょう。
珍しくそんなことを言い出した紅葉に対して、怪訝そうにしながらもいいよと言って会計を代わってあげた子は、少し紅葉に対する印象が変わったのかなと思います。
少しだけ、ほんの少しだけ、自分が変われば、周りも変わる。
そのほんの少しで、少し息がしやすくなる。身体が軽くなる。
おそらく四人組のもとへ嬉しそうに駆け出していく紅葉が可愛らしいシーンでした。


11-10. 美鳥の家

一人カラオケをしている椿のもとへ集まって来たゆくえ、紅葉、夜々。
部屋番号が分からないから他の部屋を開けてしまったと愚痴る三人。
みんなで山盛りポテトをシェアしながら、いつものようにお喋りをする。

旧椿宅に引っ越してきた美鳥。花壇にある「オクサマ」と書かれた棒を見つけて、ちょうどやってきた夜々に「これ何?」と聞く美鳥。手を合わせる夜々。
荷物の整理を手伝う夜々と美鳥の会話。
-夜々「嫌いって話がちゃんと出来るんだよね。」
-美鳥「嫌い?」
-夜々「うん。何が好きって話が出来るのもいいけど、何が嫌いとか苦手とか、そういうのちゃんと言えるの。
-美鳥「なるほどね。夜々はずっと嫌いってことが言えなかったもんね。」
-夜々「そう。今まで好いてくれてた人たち、みんな当たり前に好きな物聞いてくるの。何が好き?これ好き?って。でも、好きな人達に自分が何を嫌いなのか知ってもらったら、すっごい生きやすくなった。

引っ越しの手伝いをしにやってきた紅葉。自分が表紙を描いた本を美鳥に渡そうとするが、美鳥は自分で買ったからいらないと断る。嬉しそうにする紅葉。

美鳥の家にやってきたゆくえ。
-ゆくえ「人の優先順位ってよくわかんないの。
-美鳥「誰より誰が大事、とか?」
-ゆくえ「そう。友達より彼氏とか。彼氏より家族とか。」
高校時代にゆくえが付き合っていた彼氏に、友達との先約があったからデートを断ったら、「なんで俺より友達優先するんだ。俺彼氏だよね。」とか言われた、と、思い出話で笑う二人。
-美鳥「そういうの積み重なって、わかんなくなったんだ。」
-ゆくえ「うん。順位なんかつけらんないよ。」
-美鳥「そうだねえ。」
-ゆくえ「だからね、美鳥ちゃんよりあの三人が大事ってことでもないの。四人で会える日だって、このみの誕生日お祝いしたりもするし。誰が一番とかじゃない。
-美鳥「男友達より女友達の方が大事にした方がいいとかね。そういうのよくわからないよね。」
-ゆくえ「うん。ねぇ。男女の友情ってさ、成立するの?しないの?
-美鳥「うーん。どっちでもいいんじゃない?」
-ゆくえ「だよね。どっちでもいいよね。
-美鳥「人それぞれだからね。
-ゆくえ「だよね。人それぞれだよね。」
-美鳥「なんでそんな嬉しそうなの?」
笑う二人。

美鳥の家に代わる代わるやってくるみんな。
それぞれと美鳥の、居心地の良い二人組。
みんなの真ん中に美鳥がいるようで、美鳥が孤独でないことや、みんなにとって美鳥が必要な人であること、そんなやさしさが伝わってきて、愛おしいシーンでした。
このドラマのサブタイトルにある「二人組を求める人生で出会った四人のひとりたち」。
美鳥ちゃん目線での四人のひとりたちが、四人が繋がって、物語が集結する。美しいなあ。

夜々の「嫌い」の話。確かに。
好きと違って、嫌いって、自分の本性や価値観が出るというか。
その嫌いを主張することって、共感されなければ孤立化してしまうかもしれないし、あんまり深い仲でない人には、特別言うこともないものかもしれない。
でも、好きな人、一緒にいたいと思う人に、その「嫌い」を言えて、知ってもらえるって、安心感に繋がりますよね。
一緒にいて心地が良い人とか、安心できる場所って、自分の「嫌い」や「苦手」をしてくる人がいない場所かもしれない。
友達でも恋人でも夫婦でも家族でも、好きを共有できることも素敵だけれど、そういう嫌いが共有されていると、自分が肯定される安心感に繋がる。
生きやすさって、安心感なんだろうな。心に残る台詞でした。

ゆくえの優先順位の話。こういう価値観だから、ゆくえは物事を一辺倒に見ないし、赤田との関係も成り立つんだろうな。
男女の友情は成立するかというテーマ。
このテーマは、11話通してずっと表現されてきたものですが、提示された回答は、「どっちでもいい」。
成立することもあるし、しないこともあるし、実際どうかはその二人次第だし、その人次第だし。
男女っていう性別で考えることもナンセンスだし、どっちでもいい。
どちらかを否定することも無意味だし、押し付けるのも意味がない。
同じ感覚の人もいれば、違う感覚の人もいる。当然。

別に飲み会のテーマとかで冗談半分でこういう話をして盛り上がるのは勝手にすればいいんですけど(笑)
でも、何か価値観について話す時、人は無意識に、自分目線や、自分が知っている世界の中での基準にあてはめて、フィルターを通して語ろうとするから。
悪意がなくても、そうやって、自分の価値観が知らず知らずのうちに凝り固まってしまっているかもしれないこと。
何かを肯定することで、何かを否定して、誰かを息苦しくしてしまっているかもしれないこと。
それをどこか頭に留めておくだけで、無意味な傷付け合いはなくなるかもしれない。
そういったことを、人にとって最も身近そうな「男女の友情」というテーマに落とし込んでくれた物語だったんだなと思います。

この四人の間に恋が生まれるかどうか?!ドキドキ!なんていう物語ではなくて。
男女の友情、なんてひとつの切り口に過ぎなくて。
それをテーマに据えつつ、そんなんくだらないしどっちでもよくない?で終わってくれたこの物語。
やっぱりきっと最後まで見てもよくわからなかったなって人は一定数いると思うのですが、私は好きだし、観てきてよかったなと思いました。


11-11. 価値観

美鳥の家にやってきた椿。「なんで代わりばんこに来んの?」と笑いながら、椿のマグカップにコーヒーを淹れて差し出す美鳥。
みんな一人ずつ来たことを知り笑う椿。
「ここなくなっちゃって、四人でどこで会うの?」と少し心配そうに聞く美鳥。「この前はカラオケで。」と答えた椿は、先日のカラオケの話を怒涛の勢いで話し始める。うんうんと笑って聞く美鳥。
一通り話し終えて家を出て行く椿。
-椿「なんかごめんね、何も手伝わず、コーヒーもらって話聞いてもらって。」
-美鳥「ううん。」
-椿「おじゃましました。」
-美鳥「うん。」
-椿「おじゃましました!」
-美鳥「あ、またおいで。」
椿のマグカップを洗い、他の3つと並べて置く美鳥。

美鳥モノローグ「勘違いされる人生だったけど、だからこそ、間違いないものがよく見えた。」

展示会会場にいる篠宮の元へ、黒崎が差し入れを持ってやってくる。
黒崎が、紅葉が表紙絵を描いた本を2冊取り出し、「これ知ってる?」と1冊を篠宮に渡そうとする。篠宮は、自分の鞄から同じ本を2冊取り出し、笑い合う二人は、一冊ずつ交換する。

美鳥モノローグ「勘違いがあったから、見つかったもの、出会えた人もいる。」

赤田夫妻、家で峰子が戸棚を開けてゴミ袋を探している。鼓太郎はゴミ袋を、ゴミ箱の底、ゴミ袋の下にしまっていた。
-峰子「あー!コタくん、ゴミ箱の底にゴミ袋入れる人?」
-鼓太郎「うん。替える時、楽でしょ?」
-峰子「了解。じゃあそうしよう。赤田家はそれで。」
-鼓太郎「ありがとう。その…合わせてくれて。こっちの価値観に。
-峰子「大げさ。ゴミ袋くらいで。」
ゴミ袋の袋を、洗面所の小さいゴミ箱に使うから捨てないでという峰子。「了解」と笑う鼓太郎。

美鳥モノローグ「他人の価値観なんて理解出来ないけど、理解したいと思える他人と出会えることはある。

学校の保健室にいる希子のもとへ、二人分の給食を持って来た朔也。
希子は苦手なニンジンを朔也に、朔也は苦手なピーマンを希子にあげる。笑って一緒に給食を食べる二人。

美鳥モノローグ「みんなみたいに、みんなにならなくていい。みんなに嫌われてる子なんて、いない。

この物語のテーマがぎゅぎゅっと詰まったシーンでしたね。

怒涛の勢いで喋りまくる椿さん。相変わらずで可愛かった(笑)
もう喫煙所のおじさんに話しかけなくとも、美鳥ちゃんにはいろいろと話せそうでよかったです(笑)

篠宮くんと黒崎くんが最後にまた出てきてくれたのもよかった!!!
あんなこともあったけど、高校時代に篠宮くんや黒崎くんにとって紅葉がヒーローだったことは、二人にとっては事実で。
紅葉のイラストが描かれた本を見た時、嬉しくて手にとったのであろう二人。
紅葉もきっとまた、どこかで会うんじゃないかな。
優しさや思いは、受け取った側の人の中で、消えることはない。
大切な思い出になって、いつも心のどこかをあたためてくれる。
この二人が最終回で回収されてよかった。

赤田夫妻のゴミ袋の話、少し前の餃子のタレと同じですね。
別々の道を生きて来た他人が一緒に過ごす時、価値観の違いがあることなんて当たり前で、どちらかがどちらかに合わせたり、ふたりのルールを新しく作ったり、そうやって歩み寄って、一緒に生きていく。
どちらかが正しいとか、間違いとか、そういう話ではなくて、あなたはそうなんだね、私はこうなんだよ、そっか、じゃぁどうしていく?、ということ。
こういう、ゴミ袋とか餃子のタレとか、掃除の仕方とかバスタオル洗う頻度とか、生活的な作業に関しては結構みんなそういう歩み寄りや尊重のし合いが出来るのに、感覚や感情の話になると冷静になれなかったりする。
だけど、理解したいと思える相手と、根気強く、理解し合っていく。

赤田夫妻は、「夫婦」というかたちを切り口に、このことを伝えてくれる二人でしたね、
峰子、ゴミ袋の袋を活用するタイプだから、きっとゆくえとも意外と仲良くなれる気がする。
いつかの未来で、ゆくえと峰子が会って話して意気投合するシーンなんかを想像してしまいました。


11-12. いちばん好きな人

美鳥の学習塾にて、やってきた生徒の髪の毛についていた桜の花びらをとってやる美鳥と、「桜の花びらついてた?」と笑うその生徒。

キッチンに残った人参の皮とヘタの部分を持って行こうとする生徒に、「捨ててくれるの?」と美鳥が聞くと、「ごはん」と答える生徒。美鳥は慌ててゴミだから食べられないと伝えると、生徒はウサギのごはんだと言う。
「そっか。ウサギのごはんか。うん、いいよ持って帰って。ごめんね、ゴミだなんて言って。

美鳥モノローグ「誰かにとってはゴミになるものでも、他の誰かにとっては大切なものだったりする。

引き出しからゴミ袋を取り出す美鳥。
カフェに入った紅葉、篠宮の絵が飾れれているのを見つける。
道を歩いている夜々、「お姉さん」とすれ違った男に声をかけられ、「一人です」と鬱陶しそうに怒鳴る。
カフェに集合した、ゆくえ、椿、夜々、紅葉の四人。

美鳥モノローグ「人はどうしたって変わっていくのに、なりたい自分には、いつまで経っても変われない。他人に決めつけられた自分の価値からは、どうしたって逃れられない。みんなみたいにみんなになれなくて、上手に二人組もつくれない。居場所を探してうろうろしてた四人が出会って、三人がいてくれる場所が、帰る場所になった。」

オレンジ色のガーベラとかすみ草を花瓶に生ける美鳥のもとに寄って来た生徒。「欲しい?」と声をかけると頷いた生徒に、美鳥は花を渡す。それを見ていた生徒たちが次々に花が欲しいとやってくる。みんなに花を渡す美鳥。
残った4本のオレンジ色のガーベラを、教室に飾る美鳥。

美鳥モノローグ「いちばん好きな人は、ひとりじゃなくていい。

髪の毛についたゴミは、桜の花びら。
生ゴミにしてしまう食材の端材は、ウサギのごはん。
物の見え方なんて、人それぞれ。見る角度によって、どうとでも変わる。そのどれも事実で、どれかが間違っているなんてことはない。
自分が大切にしているものを、もしかしたら時に誰かがゴミだと踏みつけていって、傷つくこともあるかもしれない。
でもその逆に、自分がゴミだと思って見向きもしなかったものを、誰かがとても大切にしていて、それを知った時に、新しい世界を見ることが出来るかもしれない。

居場所もそう。
今そこにいるのが苦しい時、少し視野を広げてみたら、本当にそこに縋りついていなければならない理由はないって気付けるかもしれない。
ひとりぼっちだと思った時、少しだけ辺りを見渡してみたら、似たように蹲っているひとりが見つかるかもしれない。

好きなものは好きでいいし、嫌いなものは嫌いでいい。
それに素直になれる場所があれば、生きていける。
好きに理由はなくていいし、何かひとつだけを選ばなければいけないわけでもない。

この物語は、少し前にも書いたように、分からない人には分からない物語。
それはそれでよくて。
わかってください、ってしてる作品ではないですよね。
分かる人、この物語の登場人物たちに自分を重ねてしまう人に、そっと手を差し伸べてくれるような作品。
「生きづらいよね。でも生きていけるし、いていいよ。生きていこうね。」そう言ってくれるような作品でした。

11-13. 四人

エンディング。椿宅のセットで主題歌「花」を歌唱する藤井風さん。
その後ろで、テーブルを囲みケーキを食べる、椿、ゆくえ、夜々、紅葉の四人。
部屋には、4本のオレンジ色のガーベラとかすみ草が飾られている。

別日、家具店のダイニングテーブルセットの4つの椅子にいつもの配置で座り、近況報告をしあう四人。
同窓会のLINEグループを自ら退会した紅葉。
心開いていない人にも口が悪くなれた夜々。
結婚式の招待状を欠席で返したゆくえ。
2回続けて同じ美容院に行けた椿。
美容院を変えたことを知り拗ねる夜々。
話題を変えて、何を食べに行くか話す四人。
「他のお客さまもいらっしゃいますので…」と注意しにきた店員に誤り、ごはんを食べに行く四人。

-ゆくえ「あ、ラーメンはどう?このみは美味しいお店見つけたって。」
-夜々「ラーメン食べたい!」
-紅葉「俺、一蘭がいい。」
-夜々「一蘭…」
-ゆくえ「紅葉、一蘭はだめだよ。」
-紅葉「なんで?一蘭美味しい。」
-ゆくえ「美味しいけど、美味しいけどだめ。一人で行きなさい。」
-椿「ね、カラオケ行こうよ、カラオケ行こ?」
-夜々「じゃあ紅葉くん一人一蘭で、椿さん一人カラオケね。ゆくえさん二人でどっか行こ。」
-椿「なんで?四人じゃなきゃ意味ないでしょ。

色々居場所を変えて、相変わらず四人で集まる四人。
それぞれの毎日はちゃんと続いていて、変われたり、変われなかったり、悩んだり、傷ついたりしながらも、いつでも「四人」に帰ってこれる。
今日もどこかでコーヒー飲んでるのかな~なんて思ってしまいますね。
最後は四人のシーンで終わってほしいなと誰もが願ってたはず。
相変わらずのいつもの四人で、嬉しかったですね。

この家具店でのシーン。
第一話放送前の予告映像では、同じ家具屋のテーブルセットで、子ども時代の四人が座って話しをしていました。
引っ越しのシーンのところでも書きましたが、大人になった今も根本は変わらない四人が、出会って、一緒にいること。
あの予告とこの最終回ラストが繋がるのか!と、感無量でした。

家具店で集合するの、謎ですけどね(笑)
椿の新居の家具でも探してたのかな(笑)
最後まで一蘭引っ張るのも、もはや椿と夜々の関係がネタ化してるのも、仲良い友達のアルアルって感じで、笑って追われてよかったです。


いやーーーーーー終わってしまいましたね!!!!!!!!!!!

終わってしまう寂しさと、でも最後まで見届けられた嬉しさで、いっぱいです。
この秋ドラマはいろんな作品があったけど、いちばんのめり込んで視聴しました。
毎回こんなに長ったらしい記事を書いてきて、自分で台詞やシーンをまとめたいという自己満足で書いてきた記事でしたが、たくさんの方から反応をいただいて、同じ感覚を共有できる方がいるんだなという喜びで毎週いっぱいでした。
ドラマって、好きな世界観や価値観が出るから、共有できる人がいるって、嬉しいですよね。

長々とお付き合いいただきありがとうございました!!

この記事が参加している募集