【あれからどうした】感想 | 目と耳の情報が異なる新感覚ドラマ
先日放送されたNHKドラマ「あれからどうした」を観た話。
なんだこのドラマ、新しい!とっても面白い体験でした。
※一部ネタバレがありますのでご注意ください。
「あれからどうした」公式サイト
物語は全3話。
1話完結型で、前話共通テーマは、「あれからどうした」の台詞から明らかになっていく、嘘。
第1話は証券会社の法人営業部、第2話は一般家庭、第3話は警察官と、舞台と人間関係を変えて、それぞれの回の登場人物が、「あれからどうした?」の台詞から、少しずつ嘘をついていきます。
例えば第1話であれば、部署のメンバーで飲み会をした翌日、職場でのランチタイムに、「〇〇さんは飲み会の後あれからどうしたの?」と聞き合うところから物語が始まります。
ある人は、不倫相手の家に行ったが、まっすぐ家に帰ったと嘘をつく。
ある人は、スーパーで万引きを目撃したが、それを言わない。
ある人は、宝くじの当選金額をごまかす。
ある人は、悲しませたくないからこそ事実を伝えない。
ある人は、事実を話しているのに疑われる。
ある人は、詐欺師に騙されかけたことを知り、ごまかす。
こんな風に、「あれからどうした?」から、各々が少しずつ嘘をついていくのですが、ナレーションはその人物が語る嘘、それに対して映像は事実になっているので、耳から入る情報と目から入る情報とに乖離が生じます。
その乖離は、特に細かく説明をされるわけではなく、視聴者がその違いを見つけ、くすくすと笑ったり、虚しくなったり、切なくなったり、いろいろな感情にさせられる仕掛け。
関友太郎さん、平瀬謙太朗さん、佐藤雅彦さんの3名からなる監督集団「5月」という、「手法がテーマを担う」との言葉を掲げて新しい映像表現の開拓を目指されているチームによる作品。
この映像の手法と、「人はなぜか嘘をつく」というテーマが先行で、そこから物語が企画されたそうです。
登場人物たちがつく嘘は、不倫や万引きなど許されない事実を隠すための嘘もあれば、自分を少し大きく良く見せたいための小さな嘘、人に話すまでもないことや話せないことを呑み込んだ嘘、誰かのための嘘、など、背景はさまざま。
息を吐くように嘘をつく人もいれば、しどろもどろになる人もいる。
その嘘が特に暴かれて突き詰められるようなこともなく、ただ淡々と進んでいくのですが、なぜか嘘をつく人間の姿がリアルであり、おもしろおかしくもあり、虚しくもあり。
観ていると、あーこういうのあるよな~と思わされることも多く。
みんな何かしら大なり小なりの嘘をついてコミュニケーションが成り立っているのかもしれない。
別に事実のすべてを話すことが正義ではないし、知らないままでいたほうが楽なことも多くある。
実際の世界では、その人のことについて知っていると思っている情報のほとんどは、語られたことで構成されているのだとしたら、本当にその人のことを理解出来ているのかどうかなんてわからない。
そんなことを思う作品です。
語られる嘘の「音」と、見せられる事実の「映像」の2軸で展開されるので、たとえばこのご時世によく使われがちな倍速再生をしてしまったり、耳だけ傾けてながら見をしているだけでは楽しめないのも、手法の妙だと感じました。
今回は3話で終了でしたが、どんな環境でも、どんな人間にも当てはめることの出来るテーマなので、ぜひまた新作を観たいなという感想です。
とっても面白い作品でした!
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