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【いちばんすきな花】第3話:細かすぎるあらすじ&感想

いちばんすきな花
第3話 2023/10/27(木) 22:00~

第3話。椿さん回でしたね。
コメディ風味が増して笑えるシーンが増えた気がします。
4人それぞれが少しずつ素を見せられるようになって、子どもっぽい顔やめんどくさい顔なども見えてきて、人間らしくて、よりいっそう愛おしくなる回でした。

本記事では、ドラマ「いちばんすきな花」第3話のあらすじや台詞を、感想や考察を交えながらまとめています。
脚本や台詞が好きすぎて細かすぎるほどに残しているので、長いです!笑

※ネタバレを含みますので、これからご覧になる方はご注意ください。



●「いちばんすきな花」第3話

いい人

3-1. 無個性の"いい人"

椿、小学校時代の三者面談の回想。教室の花瓶には赤い花。
-担任教師「椿くんはとても活発でお喋りで個性的なお子さんです。」
-椿の母・鈴子「ありがとうございます」
-担任教師「落ち着きも、協調性もないという意味です。」
-鈴子「ごめんなさい」

椿、現在の職場でのシーン。同僚から次から次へと仕事を頼まれる。
ふと見た視線の先には、花瓶の枯れた赤い花。

椿の自宅。純恋が忘れ物のパジャマなどの忘れ物をまとめている。
「ごめん」を繰り返す椿。「ごめん以外言いたいことないの?」と純恋。
「駅まで送ろうか」と椿。合鍵を返す純恋。
「一人で帰るね、バイバイ」と純恋。言葉はなく、立ち尽くし見送る椿。

-椿モノローグ「子供の頃の僕は、とにかくよく喋るし、落ち着きがないし、じっと座ってられない子だった。僕はいい子じゃなかった。学年が上がると、自然と個性的を隠せるようになった。返事と相槌しか出来なくなった。親や先生はまた心配した。今度は友達に合わせるだけの、一人で何も出来ない僕を心配した。一人で大丈夫にならなきゃ。一人で大丈夫にならなきゃ。
いい子じゃないけど個性的だった僕は、無個性のいい人になった。それは、いい事なんだろうか。好きな人との人間関係は2パターンで、好かれる努力をするか、嫌われない配慮をするかの、どちらかしかない。

冒頭の三者面談のシーン、「ありがとうございます」と言った椿の母・鈴子は、息子が褒められて本当に嬉しそうでした。
その後の「ごめんなさい」で、一気に表情は曇って、動きまわろうとする椿を制しました。
きっと椿は、こんな風に、自分が自分らしくいることでお母さんが困る事、周りから浮いてしまう事を感じて、成長して変わる環境の中で自分を変えて、なんとか生きる術を身に着けてきたのだと思います。
椿にとって、社会の中で生きていくということは、自分の個性を殺して、無個性のいい人でいることだった。
時代もあったのかもしれないけれど、教育や社会がそうさせてしまったのかなと苦しい気持ちになります。
人間関係は好かれる努力をするか嫌われない配慮をするかの2通りのみ。
自分らしく過ごして気の合う仲間と一緒にいるという経験が、椿にとってはずっとなかった。

教室と職場に置かれた赤い花ですが、アスターのように見えました。
違うかもしれないけれど、アスターだとすると花言葉は「変化を求める」です。
周囲や社会から受け取った圧のようなものの中で、自分を変えて大人になった椿に重なります。

職場のシーン。大人になった現在の椿が勤める職場、椿の席に座っていたのは子ども時代の椿でした。
子ども時代の各キャラクターが現在のシーンの中に迷い込んだようなこの演出、2話までにも登場しましたが、子ども=本当の自分、素の自分を表していて、今は大人の仮面をまといながら、素の自分を隠して窮屈に生きている登場人物たちが表現されているように思います。


3-2. 連絡先

椿の自宅、朝。目覚めて早々に布団を綺麗に整え、家中のゴミをまとめる。
テーブルの花瓶のしおれたガーベラを、「ごめん」と言いながらゴミ袋へ捨てる。

フラワーショップはるき。結婚おめでとうとご近所さんに言われて気まずそうな母。「いい旦那さんにはなったでしょうねぇ」と楓。
切り落とされた花の端材を見て「まだ見た目いけるのになぁ」と楓。

-鈴子「椿みたいなこと言わないでよ。ダメになるのわかってて売れないでしょ。」
-楓「あ、あれと一緒か。コンビニとかの廃棄になるやつ。消費期限ギリの。」

椿の自宅前、「忘れ物を取りにきました」とオクサマに手を合わせる紅葉。
ビニール袋いっぱいのコンビニの廃棄になったおにぎりなどの食品たち。
不在の椿に連絡をとろうとするも連絡先を交換していないことを思い出す。

美容院の夜々。女友達と食事に行くという客を送り出した後、誰かを思い浮かべて連絡をとろうとするも、連絡先を交換していないことに気付く。

職場の椿。プリンターのインクのトナーを替えておいてくれと言われ「大丈夫です」と請け負う椿。慣れた手つきで交換する。印刷を待つ同僚に、「ごめんなさい、これ済んだらデスクに持っていきますよ」と椿。別の上司に、外回りに1件追加するように言われ、「一人で大丈夫です」とそれも請け負う椿。

椿さんはやっぱりきっちりきっちりした性格ですね。
引き出しの中のきっちり詰められたゴミ袋が何かの伏線かもと以前書きましたが、日常のカットから椿の性格を表した演出だったのかなと思います。
ゴミ袋もまだ満杯じゃないのにきちんと指定日にゴミ出しをするし。
もともとこういう気質でそれが自分ルールなのかなと思いつつ、もしも"いい子でいなきゃ""ちゃんとしなきゃ"の呪縛から形成されたものだとしたら…なんて、勝手にあれこれ考えてしまいました。

捨てられる花→コンビの廃棄→連絡先、で繋がっていくそれぞれの日常の見せ方も素敵です。
椿さん、「花は好きだけど花屋は嫌い」と以前言っていましたが、売り物にならずまだ綺麗なのに捨てられてしまう花を見るのが嫌だったのかな。
母・鈴子の言葉からなんとなく想像させられました。

プリンターのインクの件、トナー交換を頼まれる前、一人で歩いているのに微笑みを浮かべていた椿。いつも"いい人"と思われるように笑顔を貼り付けるのに慣れているのかな。
トナー交換もまるで椿の仕事かのように周りにいつも押し付けられているのでしょうね。せっかく対応しているのに、誰かを待たせてしまい、まるで自分が悪いかのような気分になってしまい、「ごめんなさい」と椿。
「ごめんなさい」や「大丈夫」と言うことで自分を保っているような姿が苦しそうです。

3-3. いい人=怒らない人

椿。外回り途中の路上の喫煙所にて、缶コーヒーを飲みながらたたみかけるように別の喫煙者に話しかけている。怪訝そうに話を聞く喫煙者。

-椿「僕は一人でも大丈夫なんです。家事も仕事も、多分同世代の男性の中だとかなり出来る方だし、気遣いも得意です。どこ行っても、誰にでも、いい人って言われます。ありがたいですよ。みんなにいい人いい人って言われて、嬉しいです。ただ、みんなが言ういい人って、怒らない人っていうことなんですよね。だとしたら僕はいい人じゃないです。怒ってるし、悲しんでるし、悩んでます。それを隠せるってだけなんです。」
-喫煙者「お兄ちゃんタバコ切れてるの?1本あげようか?」
-椿「結構です。タバコ吸わないんで。」
-喫煙者「え、じゃぁなんでここにいんの?」
-椿「二度目がない初対面がたくさんあるからです。
-喫煙者「お兄ちゃん変わってるねぇ。」
-椿「何言ってるんですか。僕ほど無個性な人間はいないですよ。

笑いました。椿、ストレス発散してるなぁ!(笑)
いつもの椿のやわらかな物腰ではありつつもたたみかけるように見知らぬおじさんに喋りかけまくる椿が面白かったです。
自分が怒らない人と思われて、だから都合の良い「いい人」にされて周囲から利用されていることもわかってるんですよね。

"僕ほど無個性な人間はいない"の発言ですが、ここまで見てきただけでも椿さんは結構個性ありまくりですよね。
たくさんのいいところがあって、ちょっと面倒くさそうなところもあって、面白いところもあって、でも自分の良さなんて椿本人は考えてもこなかった人生なんだろうな。
抑圧された椿という個性とそのストレスがぷんぷん漂ってくるような、でもそれがコミカルなお芝居で笑いに変わってしまう、面白いシーンでした。


繋がる

3-4. ゆくえと夜々

美容院で仕事を終えた夜々。前回会った帰り道でゆくえが忘れていったボールペンを手に取る。

おのでら塾のゆくえ。LINEで紅葉に「あの2人に連絡先聞いたー?」と打っては消し、「4人のグループ作っちゃう?笑」と打っては消し、送れない。
ゆくえを訪ねて塾を訪れた夜々。忘れたボールペーンを渡す。
「この写真とか送って…これゆくえさんのですか?また椿さんち行ったとき持っていきますね、みたいな感じの…送ろうと思ったんですけど…」とモゴモゴする夜々。「交換してなかったね」とゆくえ。二人で手間取りながらLINEの連絡先を交換する。

数学が一番好きで理系だったが、「女の子は文系でしょ」と固定観念強めな母が言ったために文転したことをゆくえに話す夜々。「今度数ⅢC教えてあげる」とゆくえ。教室に現れた不機嫌そうな希子。

-ゆくえ「不機嫌ちゃん何かあった?」
-希子「点Pが…毎秒1cmで動き続ける…」
-ゆくえ「あいつねぇ。懲りずに動くよねぇ。」
-希子「ゆくえちゃん…あいつどうやったら止まるの」
-ゆくえ「止め方じゃなくて、解き方考えようよ。」

フラワーショップはるきのすぐ近くまでやってきた純恋。
何かを話そうと足を進めるも、椿の両親を見かけ、来た道を戻る。

夜々が訪ねて来た時のゆくえの表情が嬉しそうで可愛くて、連絡先交換が出来た時の夜々が嬉しそうで可愛くて、やっぱりこの女子二人可愛いです。
大人になると、なかなか新しい友達が出来て連絡先交換をすることって少なくなりますよね。
私もQRコードの表示の仕方なんて急に言われたら戸惑ってしまいます(笑)
不慣れな様子で連絡先を交換する二人が可愛らしいシーンでした。
どうでもいいけど昔って赤外線通信とか、スマホをフリフリして連絡先交換した時代がありましたね…エモい…。

希子とゆくえの会話、私は個人的に数学が苦手なので、点Pに共感しすぎて記録に残しました(笑)
点Pまじ動き過ぎだし、違う時速で一定の距離感保って時間差で出発する兄弟は謎だし、数学の問題、嫌いだったなぁ(笑)

夜々には文転して習えなかった数学ⅢCを教えてあげると言い、希子には解き方を考えようと言うゆくえの、相手を否定も肯定もせず寄り添うような言葉をかけられるところが素敵だなって思います。

純恋は何を伝えにきたのだろう…。椿が実家に戻っていると思ったのかな?

3-5. 椿と紅葉

椿の自宅前。門の前でコンビの廃棄をもぐもぐ食べて椿を待っていた紅葉。
「来る前に連絡くれれば」と言いかけて、連絡先交換していないと気付く椿。QRコード表示に手間取る椿と、手際よく交換を済ませる紅葉。

-椿「こういうの慣れてるのあれだね、いいね」
-紅葉「回数だけはこなしてるんで」
-椿「女の子の友達も?」
-紅葉「いますよ、ゆくえちゃんだって。」
-椿「幼馴染と友達は同じ枠?」
-紅葉「まぁゆくえちゃんは、うーん、ゆくえちゃんって枠ですね。

椿の自宅を訪ねて来た楓。門先の「オクサマ」ってどんな花と聞く楓。
「花がね、咲く直前で枯れるんだよ」と椿。「切ないねぇ」と流す楓。
店で売り物にならず捨てかけた花を寄せ集めた花束を渡す楓。

紅葉が完全に椿に懐いている感じが可愛いですよね。
神尾くんってこれまでイケメンキラキラ系の役が多かったような気がします。前回出演された月9も見ていましたが、この作品で、お芝居自体がもっと注目されそうで楽しみです。
顔が綺麗なのはもちろんなのですが、可愛らしさとか、人懐っこさ、今っぽさがあって、独特の穏やかさがあって、佇まいが素敵ですよね。

椿と楓との会話。オクサマについてよくわからないことを話す兄に対して、「切ないねぇ」と乗っかって話を終わらせる楓が、あぁいつもこうやってお兄ちゃんの話を聞いて、よくわからないけれど否定もせず、よい話し相手になって過ごしてきたのかなと感じて微笑ましくなりました。
ちょっと冷めたようなところもあるけれど、兄のことをよく知っていて、心配もしている良い弟なのでしょう。


3-6. 友達?

フラワーショップはるきの前を通りかかったゆくえと夜々。椿の実家だと気付く夜々。鈴子と目が合いお互い深々とお辞儀するゆくえ。
椿の家から戻ってきた楓が「お姉さんたちもお友達ですか?今兄ちゃんち行ったら友達きてるって。友達かどうかわかんないんですけど、友達?って聞いたらなんかモゴモゴして。」と話すと、椿の家に紅葉がいることを察して笑い合うゆくえと夜々。

椿の自宅。集合した4人。いつものようにコーヒーを淹れる椿。
家間取りの話から純恋の話になり気まずそうにするゆくえ、夜々、紅葉。

-夜々「スミレってどういう字書くんですか?ひらがな?」
-椿「純粋の純に、恋愛の恋、純恋です。」
-ゆくえ「純粋な恋…」
-夜々・紅葉「え…嘘じゃん…」

チャイムがなり、「出ますよ」と玄関へ向かう夜々。訪ねてきたのは純恋。夜々、ゆくえ、紅葉を見て戸惑う純恋。驚く椿。
表れた女性が純恋と知り、手を合わせるゆくえ、夜々、紅葉。戸惑う純恋。

手を合わせられて戸惑う純恋のシーン、おかしかったですね(笑)
純愛と書いて男を作って出て行った女として描かれる、名前とキャラのギャップに絶対意図があると思っていましたが、まさか名前いじりがそのまま台詞になるとは(笑)

フラワーショップの前で「花屋の息子っぽい」と椿をいじるゆくえと夜々。一緒にいない同じ人の事を思い出す、それはもう友達。
その後の楓の言葉に紅葉を思い浮かべる二人。
うんうんもう友達だね。ありがとう(何が)

椿の本音

3-7. 「二人組」になれなかった二人

椿の自宅、テーブルで向き合う椿と純恋。
二人をすぐ後ろのソファから見つめるゆくえ、紅葉、夜々に、「上で遊んでなさい」と椿。おとなしく移動する3人。

前回椿の思ってることを聞けず、言ってもくれなかったから来たと純恋。
階段から聞き耳を立てているゆくえ、紅葉、夜々。
「怒ったり泣いたりしてほしいんだよ。椿さん物分かり良すぎて、純恋的に愛されてるような実感足りないんだよきっと。」とゆくえ。
「純恋面倒くさ…」と紅葉。

-椿「純恋のこと、好きだった。」
-純恋「私も好きだったよ。」
-椿「うん。でも…好き同士だったけど、両想いじゃなかったなって。」
-純恋「両想いは好き同士のことだよ。」
-椿「両想いは好き同士のことだけど、好き同士が両想いとは限らなくて。」
-純恋「なにそれ。」
-椿「好きっていうパッケージに満足してるだけみたいな。想えてないんだよ。それで言えば片想いですらなかった。それぞれ身勝手に好きだっただけで、むしろ好きって後付けで、結婚相手にちょうどいいから好きってことにして。」
-純恋「珍しくいっぱい喋る時って、意味わかんないことばっか言うよね。」
-椿「うん。意味わかんないことばっか考えてて、普段それを話す相手がいないから、毎回美容院変えて初対面の美容師さんに話聞いてもらったり、タバコ吸わないのに知らないおじさんと喫煙所で喋ったり、そうやって発散して、純恋には意味わかんないこと言っちゃわないように気を付けて、隠して。」
-純恋「意味わかんないな。」
-椿「純恋には嫌われない配慮をずっとしてて、好かれる努力は出来なかった。
-純恋「やっぱよくわかんないや。」
-椿「ごめん。」
-純恋「普通に怒ったり泣いたりすると思った。」
-椿「ごめん。」
-純恋「それか、戻ってきてとかそういうわかりやすいこと言われると思ってた。わかりにくいことばっかり言って。」
-椿「ごめん。」
-純恋「ごめんが口癖だよね。やめたほうがいいよ。なんも悪くないのに謝ってると、本当に自分が悪い気がしてきちゃうよ。
-椿「ごめん。楽してるだけ。自分が悪いって思う方が楽だから。

-純恋「怒ってないの?」
-椿「怒ってるよ。怒ってるし、悲しんでるし、悩んでる。それを隠してきた。」
-純恋「そっか。ならよかった。よくはないけど、でも、まだよかった。私と一緒にいたら多分、どんどん感情なくなってくでしょ。感情なくしたり、あっても隠したり、そうしてまで一緒にいることないよね。
-椿「うん。そう思ってる。純恋がいなくなって、そう思えて、だから、正直、戻ってきてほしいって思ってない。いつも、ずっと、純恋と話すのしんどいなって思ってた。純恋のことも、純恋の話も、好きだったけど、純恋は俺じゃなくてもいい人で、俺が聞かなくてもいい話ばっかりで。」
-純恋「そっか。そっかそっか。」
-椿「他の誰かと、幸せになってください。」
-純恋「わかりました。」

-椿「結婚するの?モリナガくんと。」
-純恋「しないよ。付き合ってもないよ。元々は本当に友達。でも1回そういう関係になっちゃって、そういうのあるのに、椿くんと結婚出来ないなって思って。って言ったじゃん?言ってなかったか。言ってなかったとしてもそうなの。椿くんには嘘つきたくないし、私が言っちゃだめなのわかってるけど、結果良かった。結婚しちゃわないでよかった。一生椿くんの感情奪うとこだった。
-椿「うん。よかった。」

部屋を後にする純恋と椿。「純恋、本当に、恋に純粋だったね」とゆくえ。「純粋すぎるのも人を傷つけるんだねぇ」と紅葉。

シリアスな話をする椿・純恋と、コミカルな他3人の対比が絶妙でした。

純恋の人柄についてはまだ物語の中では深く描かれていませんが、2話までの純恋の印象は、椿との結婚目前の同居のタイミングで別の男と浮気をして出て行った女という、身勝手な女のイメージでした。
モリナガくんのところに1回でもフラっと言ってしまったことは純恋の過ちですが、それはちょっと置いておくと、純恋目線でみたら、純恋も、どこかずっと窮屈だったのかもしれないですね、椿との"二人組"が。

椿はいい人で、何を言っても怒らないいい人で、いつも合わせてくれて、純恋の話を聞いてくれて、自分の話はしない人。
自分の話はしないし、自分の気持ちも話さないし、見せない。
いつも「いいよ」「ごめん」「大丈夫」。いつも優しい。一緒にいたら傷つけられるようなことはないし、穏やかな時間をくれる人。

でも、椿の本音や本心がいつもわからない。
たまに話し出したと思ってもよく理解が出来なくて、わかりたくても、それ以上深くは話してくれないし、そうやって話し合えてこなかったから、隣にいても、本当はどうなのかがよくわからない。
椿自身にもそれがどこか苦しそうだったり、何か我慢しているような雰囲気があって、それでも自分に合わせて、いつも「いいよ」「ごめん」「大丈夫」。
自分と一緒に"いたい"というよりは、一緒にいることがベストだって言い聞かせ一緒にいるような、そんな気がしてた。
(あ、すみません。今、私、勝手に純恋になってます。)

そういう寂しさや虚しさのようなものを純恋はずっと抱えていて、でも結婚しようってなって、このまま穏やかな暮らしが出来るならと思って進もうとしてみたけれど、これが幸せなのかという疑問から目を逸らせなくなってしまった。

純恋は、結構本当に椿のことが好きで、もっと話したい、もっと知りたいと思っていた。椿のことを理解できないかもしれないけれど、ちゃんと向き合って話せていないから、理解できるかどうかすらも分からなかった。
モリナガくんのことは、それは純恋がダメだったけれど、それに対して椿がどんな反応をするのか、こうなればさすがの椿も感情を出してくれるかなって、純恋的には最後の賭けというか、そんな気持ちもあったのかもしれません。

そういう前提で純恋の視点でこの二人の会話を捉えると、やっと椿が本音を話し始めたと思ったら、"結婚相手にちょうどいい" "好かれる努力はできなかった" "両想いじゃなかった" "俺じゃなくてもよかった"なんていう言葉が次々と淡々と語られて。
純恋の本音を確認する作業なんて、椿はしてこなかったのに。だから純恋の本当の気持ちなんて椿だって理解できているわけないのに、決めつけられて。ごめんごめんって、そう言って、俺が悪いみたいな顔して、向き合うことから逃げて、私はもっと椿くんを知りたかったし分かり合いたかったよ。
(すみません。まだ、私、純恋です。)

やっと本音を話せて解放されていく椿と、話してくれてほっとした反面ちくちく刺さるトゲまみれにされたような純恋。
わかってはいたけど、苦しかっただろうな、純恋も。

椿の台詞や椿の心情も、わかるんです。
1回純恋目線を想像してみましたが、放送を見た時は椿の気持ちになって泣きました(笑)

ずっと二人組になれなかった椿にとって、純恋は自分の人生にとってはこのまま二人組になれるかもしれないチャンスだったのだと思います。
純恋の事は、好きだったんだろうけど、窮屈さもずっとあって、でも自分から手を放す勇気も持てなければ、本音をさらけ出して話し合って分かり合ってまで関係性を築く体力もなかったんだろうな。
だってそうやって"二人組"を築いてきた経験がないから。
椿がもし、ゆくえ、紅葉、夜々の3人と出会えていなかったら、また違う選択をしていたかもしれない。
3人と出会って、好かれる努力や嫌われない配慮をしなくても一緒になんとなく居心地よく過ごせる場所が自分にも見つかって、一度純恋と離れた椿だから、もう純恋とは会わないから、最後に本音を言えたんですね。

椿目線で見ても苦しいし、純恋目線で受け止めても、辛い。
どちらかが一方的に悪いということではなくて、この二人は、二人組になれなかった二人。ただ、それだけ。

松下洸平さんのこのシーンのお芝居が、ずっとずっと隠してきた本音をぽろぽろとこぼし始めるところから、封印していた感情が高ぶって、声がうわずって、呼吸が荒くなって、本当に、昔子どもの頃に閉じこもったままの椿が顔を出した感じで、苦しくて、胸に迫るものがありました。
それを受け止める臼田あさ美さんのお芝居も、目線や表情、震える唇や声から、純恋はただの奔放な女ではなく、純恋なりに椿にちゃんと恋をしていたことが伝わってきました。

3-8. 友達

玄関にて、「あの人たち誰?」と純恋。少し考えて、「友達」と椿。
「なんかよかった。楽しく喋れる相手、気遣わない相手?いるみたいで。椿くんの友達の話全然聞いたことなかったもんね」と純恋。
楓が持ってきた花束を純恋に「多分明日には枯れる」と渡す椿。
「ありがとう、もらうね。今日だけ愛でる。」と純恋。
「おじゃましました」と言って出ていく純恋。

このシーン、最後に「またね」「じゃぁね」「さようなら」でもなく、「おじゃましました」と言って出ていく純恋が良かったです。
もうここは椿の家で、自分の家ではなくて、きっともう二人は会わないんだろうなという距離感が伝わってきました。
「友達」と3人のことを自信をもって言えた椿もよかったです。

椿が純恋に渡した花束ですが、売り物にならない花の寄せ集めなのできっとすぐに枯れてしまうのに、そんな花束を渡した椿。
いつもの椿だったら、そんなお花なんて悪いからきっと渡せないはず。
明日にはきっと枯れてしまうけれど、今だけ、今日だけは綺麗に咲いている花を渡せた椿と、受け取った純恋。
いろいろ分かり合えなかったけど、ここでは少し分かり合えて、笑い合えたんだね。
純恋には、モリナガくんじゃない男と幸せになってほしい!


一人じゃない

3-9. 部室

廃棄の食品を食べながらテーブルを囲んで話す椿、ゆくえ、夜々、紅葉。
純恋のことを「本当に純粋な人」「スミレの花言葉がぴったりだ」と椿。
椿と美容院で初めて会った時の花の話のことを話す夜々。
「花屋が嫌いっていうのは、そう思い込もうとしてるやつで、花が好きだからです。好きなこと仕事にするのって、覚悟が必要じゃないですか。」と椿。それを聞いてうつむく紅葉。

純恋、椿の家からの帰り道、ゴミ捨て場に捨てられた瓶に、椿から受け取った花束を生け、手を合わせ、置いたまま去っていく。

椿の家のソファで寝そべるゆくえ、紅葉、夜々。
居心地の良い椿の家を「部室」と表現し、「約束しなくても誰かしらいる安心感があって、でも一人ならそれはそれでラッキー。サボってるのにサボってない感じも出せる。教室は選べないけど、部活は選べる。」と夜々。
引っ越しを考えてはいるという椿。
「考えてるうちは、ここに住んでます。考えてる最中に引っ越すことはないです。廃部になりません。」と椿。嬉しそうに拍手する3人。
その後ソファで寝落ちした紅葉と夜々。ブランケットを掛ける椿とゆくえ。

フラワーショップはるきにて、鈴子と楓の会話。
-鈴子「花ガラ摘むのがどうしても嫌みたいで。花捨てる時、いっつも申し訳なさそうな顔をしてて、こりゃ無理やり働かせるのはやめとこうかなぁって諦めついた。」
-楓「想像出来るわーその顔。あ、どうしよう、今日あげたやつ多分明日とか明後日だよ、寿命。」
-鈴子「友達来てんならあげんじゃない?」
-楓「いや、友達にこそあげないでしょ、明日枯れる花なんか。兄ちゃんだよ。
-鈴子「そうだった。うちの子昔からいい子だった。」

何気ない会話から今度は紅葉くんの夢が少しエグられましたね。
次回4話は夜々回のようなので、その次が紅葉回かな?
絵と、前に住んでいた人、その詳細が明かされるのが楽しみです。

純恋が帰った後の椿の家。もう4人にとって、4人でこの家にいることがすっかり居心地がよくて、部室のような場所になっている。
純恋が少し不憫ですが、椿は純恋といる時とは全然違う、ナチュラルに柔らかい表情をしていて、言葉につかえたり選んだりすることなく早口で喋りたいように喋っていて、もう"4人組"の"友達"ですね。
引っ越しの匂わせがありましたが、最後にこの家を椿が出て、4人の部室がなくなるのかな?

鈴子と楓の会話から、椿が純恋に花束を渡したことの意味が感じ取れました。
枯れるから、自分がいらないから渡したのではなくて、今綺麗に咲いている花を、素直な気持ちで、純恋に渡したくなったのかな。
紅葉にとって、ゆくえちゃんがゆくえちゃんであるように、純恋は椿にとって、女友達でも元カノでもない、"純恋"として、これから会うことはなくとも特別な存在として残ってほしい。
別れたけれど、一緒にいた時間は窮屈さもあったけれど、好きだったし椿も恋していたということが、名前や花言葉にかけたスミレにまつわる話からも感じられました。


3-10. 何かしらみんな

珈琲を淹れながら、子供の頃は落ち着きがない子だったとゆくえに話す椿。
「意外がれるほどまだ何も知らないからそうなんだって感じ」とゆくえ。

-ゆくえ「でも、確かに今は、落ち着きある大人に見えますよ。」
-椿「落ち着きある大人ぶってるだけです。」
-ゆくえ「みんなそんなもんですよ。何かしらみんな、何かぶってますよ。
-椿「ゆくえさんは?」
-ゆくえ「私は、いい先生ぶってます。ほどよく親しみのある距離感で、でも勉強や進路のことはきっちりみたいな。」
-椿「いい先生って言われるんですか?」
-ゆくえ「生徒や保護者はそう言ってくれます。」
-椿「じゃあ、いい先生なんですね。」
-ゆくえ「…そっか。」
-椿「生徒さんからいい先生って言われてるなら、それはもう、いい先生ってことですよ。」
-ゆくえ「じゃぁ、落ち着きあるように見えてる椿さんは、落ち着きあるってことですね。」
-椿「そっか。そうかもしれないです。」
-ゆくえ「いい人って言われるってことは、いい人ってことですね。

仕事とか、人間関係とか。みんな少なからず、空気を読んだり、周りに合わせたり、自分を良く見せたり、強く見せたり、しますよね。
そうやって一生懸命に生きて、作り上げたよそいきの自分の仮面を、少なからずみんな顔に貼り付けて身に纏って生きている。
別にこの物語の4人だけじゃなくて、みんなきっと、少なからず。

そんな風に生きて、いざ"本当の自分"とか"本当の気持ち"とか、向き合ってややこしく考えようとしてしまうと、とても窮屈で、本当の自分や気持ちの行き場がないように思えてしまうこともあるけれど、そうやって作った自分だって自分だし、それがいつも悪いわけじゃない。
そう見せて、そう思われていることも、立派に生きているということ。
そんな風に優しく肯定された気持ちがする、穏やかなシーンでした。
周りから言われることを、変に穿った見方をせずに素直に受け止めることも、時に大切ですね。
周りを否定すると、自分を否定しているみたいになるから。
難しく考えなくてよいのにってこと、きっとたくさんある。


3-11. 一人で大丈夫

ソファで目覚めた夜々と紅葉。ベランダで"友達"と電話中のゆくえに嫉妬しつつ、ベランダのゆくえに手を振り、椿の家から帰る二人。
バス停での別れ際、送ってくれないのかと試すように紅葉に聞く夜々。
「送ってほしいと思ってないでしょ」と笑い当たり前のように帰る紅葉。

ベランダで友達のミドリと電話中のゆくえ。「今、友達の家。あれだね、大人になってもさ、友達って出来るもんだね。」と嬉しそうに話す。
電話を終えてリビングに戻ったゆくえ。

-椿「みんながいて、いなくなって、ここに一人になった時、不思議と自分はもう一人にならないって感覚になるんですよね。一人で大丈夫って思える感じ。あれにちょっと似てます、携帯電話。初めて自分の携帯を持った時の気持ち。人と繋がる手段をもらったのに、一人でなんでもできる気になる、あの感じ。一人で大丈夫って思えるのは、一人じゃないってわかった時なんだなって。」

椿とゆくえ、連絡先を交換しようとするも、手間取ってうまく出来ず。
そのタイミングで、紅葉から4人のグループLINEを作成した通知が届く。

ミドリちゃん!普通に今も仲良く電話出来る友達だったんですね。
このミドリちゃんが数少ないゆくえの友達のはず。
今後またゆくえ回でこの関係性が掘られるかな?と期待です。

紅葉と別れる際の夜々。紅葉は大貴や今までの"男友達"たちとは違うとわかっていながらも、試してみた夜々。期待通りの紅葉の態度が嬉しくて、居心地が良さそうで、微笑ましかったです。

最後の椿の台詞。
子どもの時から、「一人で大丈夫にならなきゃ」と唱えるようにして、無個性のいい人になった椿。
今は、純恋が去った広い家でポツンと一人残されても、"一人で大丈夫"と思える。
本当に一人だった時には到底思う事の出来なかったこと。
グループLINEで繋がれて、部室が出来て、嫌われない配慮も好かれる努力もせずに居心地よく過ごせる"4人"が、今はあるから。
ゆくえも、夜々も、紅葉も、きっと同じですね。

3-12. 夜々と紅葉

帰り道の夜々。夜々の家にいるという母からの着信。
笑顔で明るい声で「すぐ帰るね」と伝え、化粧室でメイクを直し、髪を整え、笑顔の練習をしてから、母がいる自宅に作り笑顔で帰る夜々。

帰り道の紅葉。「あれ、パンダじゃん?」「佐藤!」と、偶然会った昔の友人が声をかけてくる。今度飲みに行こうと話して別れる紅葉。
背中越しに、「イケメンの正しい使い方」「客寄せパンダのパンダくん」と話す友人の声。

楽しかった時間の後、最後に、夜々と紅葉に少し不穏な空気が訪れて今回は終わりました。

次回は夜々回ですが、母親に対してわだかまりがありそうな夜々。
女の子らしく可愛く明るく振舞って、嫌われない配慮をしてきた相手。
今の夜々の人格形成にも大きな影響を与えているでしょうから、どのように描かれるかが楽しみです。

紅葉は、客寄せ用のイケメンポジションとして、飲み会などにこれからも誘われてきたのでしょう。
さっきまで一緒に過ごしていた4人の"友達"と、今まで繋がってきた"友達"。
今までは、紅葉にとっての"友達"って、当たり前のように後者だったんですよね。それが、今は、違う。

みんなそれぞれ、4人で出逢えたことで、自分を縛り付ける要らないものを手放して、自分の事を否定せず、本当に欲しいもの・大切なものを抱きしめて生きていけるようになったらいいな。




4人の会話劇が楽しい作品。次回第4話も楽しみです!





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